主戦場はクラウドから「手元のAgent AI」へ COMPUTEXでNVIDIAとIntelが描いた次世代PCの姿

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2026年06月15日 12:11  ITmedia PC USER

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NVIDIA「RTX Spark」のチップ。会場では搭載PCのモックも展示されていた

 「AI Together」をテーマに掲げ、6月2日から5日まで台北で開かれた「COMPUTEX TAIPEI 2026」は、来場者11万人超、3会場で33カ国/地域から1500社/6000ブースと過去最大規模で閉幕した。


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 会場を歩いて感じたのは、2026年の主役がNVIDIAであり、その狙いがAgent AI(エージェント型AI)をクラウドではなく手元で動かす点にあったことだ。


●主役は13年ぶりのWindows向けSoC「RTX Spark」


 2026年のCOMPUTEX最大の注目は、開幕前夜の「GTC Taipei 2026」で発表された「RTX Spark」だろう。


 RTX Sparkは、Arm CPUとBlackwell世代のGPUを1つのパッケージに収めたSoCだ。CPUの設計はMediaTekが担い、Cortex-X925とA725を合わせて20コアを搭載する。GPU側はGeForce RTX 5070と同じ6144基のCUDAコアを積み、両者をNVLink C2Cの高速リンクで結んでいる。


 それでいてパッケージ全体の消費電力は140W前後と低い。これまでデータセンターで実施されていたCPU/GPU/大容量メモリの一体設計を、そっくりWindows PCへ持ち込んだチップでもある。


 NVIDIAがWindows PC向けSoCを出すのは、2013年のWindows RTタブレット「Surface 2」に載った「Tegra 4」以来、実に13年ぶりだ。そのTegra 4もArmコアで、Arm版Windowsの先駆けとなるSurfaceと共にWindows RTの不発で姿を消したが、改めて市場に挑戦する形となる。


 同社のジェンソン・フアンCEOいわく「Windows誕生から40年、MicrosoftとNVIDIAでPCを再発明する」とのことで、搭載PCはASUSTek Computer、Dell Technologies、HP、Lenovo、Microsoft、MSIなどから今秋以降に出てくる見込みだ。


 COMPUTEXの会場では動く実機はほぼ展示されず、会期中にクローズドな場でホットモックがお披露目されたようだ。会場内で画面がついていたのはMicrosoftのSurface開発機くらいで、価格感も非公開だった。もっとも、筆者がMSIブースで聞いた感触では、Spark搭載ノートPCはハイエンド仕様のMacに張り合える価格に収めたい意向らしい。


●RTX SparkでローカルでLLMもエージェントも動く


 RTX Sparkの肝は、CPUとGPUがメモリを共有するユニファイドメモリ構造だ。ユニファイドメモリは最大128GB搭載可能であり、数十億〜100億パラメータ級のローカルLLMを手元で走らせることができる。


 そんなRTX Sparkは、「DGX Spark」とほぼ同一のものとみられる。DGX Sparkは、NVIDIAがRTX Sparkに先んじて投入していた小型のAI開発機だ。


 独自のLinuxを積んだ開発者/エンタープライズ向けのミニPCで、最大2000億パラメータ級のモデルまで手元で走らせられる卓上のスーパーコンピューターをうたう。RTX Sparkは、要するにこの中身をWindowsに載せ替えたものと考えてよいだろう。


 NVIDIAの会場では、DGX Sparkを使ったエージェント型AI「OpenClaw」がクラウドにつながず手元で動くデモが示されていた。各ブースの主役も、データを外部に出さず、機密データを抱えたまま自律的にファイルを開き、コードを実行し、結果まで検証する「ローカルAIエージェント」だった。


 RTX Sparkでは、こういったユースケースをWindowsのノートやミニデスクトップで実現し、一般のユーザーに届けることができるようになると予測できる。


●オーケストレーションという、もう1つの主戦場


 Agent AIにおいては、GPUによる推論だけでなく計画立案/ループ管理/ツール呼び出し/結果統合といったオーケストレーションが必要になる。これらの高度な判断が必要なところはCPUの領分であり、CPUとGPU、そしてメモリを束ねるユニファイド構造が求められる。


 この統合型コンピューティングを実現しようとしているのは、NVIDIAだけでない。COMPUTEXにおけるもう1つの象徴はIntelだ。


 半導体大手のIntelは、「Arc G3シリーズ」というSoCをもって自社CPUとGPUを協調させる構想を発表した。会場ではArc Pro GPUを大量に積んだサーバも見られ、ゲーミング領域だけでなくAI、とりわけローカル・エッジ推論を見据えた動きを見せていた。


 リップブー・タンCEOの基調講演も、クライアントからエッジ、データセンターまでの全バリューチェーン獲得を掲げていた。


 Qualcommはクリスティアーノ・アモンCEOが開幕基調講演に立ち、Snapdragon C搭載Windowsノートのリファレンス機を提示した。MediaTekは車載SoCを並べつつ、RTX SparkのCPU(Cortex-X925×10+A725×10の20コア)の設計を担当したことをPR。一昔前までは通信に注力していた企業もコンピューティングへ軸足を移す動きを見せており、かつてGoogleがChromebookで進めた「処理はクラウドへ」とは正反対の流れとなっている。


●データセンター向けソリューションは高度化しつつある


 一方で、会場では将来的なエッジAI構想に対してデータセンター向けのソリューションも数多く見られた。特に、台湾のサプライチェーンを支える各社が並べたのはAIの大規模集中、すなわちデータセンターを支える電力/冷却技術にある。


 その中で際立っていたのが台達電(Delta Electronics)だ。構築期間を6割削るプレハブ型AIデータセンターを世界初公開し、産業向け展示の焦点の1つになっていた。800VDCの高圧直流給電と3MW級液冷を一体化し、Grid-to-Chipでチップ直上の液冷まで通しで提案する。電力密度が従来の48V構成ではさばけず、空冷では熱が追いつかないという現状課題へのアンサーの1つである。


 他にもLITE-ON Technologyは110kW級の電力シェルフを、Wiwynnは両面冷却プレートや液体金属の熱伝導材を打ち出していた。


 このように、データセンターの進化は計算能力の競争だけでなく電力と冷却という周辺領域へ広がりをみせはじめている。となると、もしAgent AIを手元で回す世界が来るならノートPCやモバイル用途も遠からず同じ問いに突き当たるだろう。小さなボディーでどう電力を供給し、どう熱を逃がすかといった課題はデータセンターからノートPCへ、そして最終的にはモバイル領域までもを巻き込む1つの大きな壁となると予測できる。


●コモディティー化への壁、その先の未来


 サーバ中心だったAIは、今やノートPCへ降り始め、いずれモバイルへと裾野を広げていくだろう。COMPUTEXの直後に開かれた「WWDC26」でAppleが見せたオンデバイス志向、つまり「軽い処理は手元、重い処理はクラウドへ」という考えも、大きくは同じ方向を向いている。


 むしろAppleは、モデルの最前線そのものより、OSへの統合とUX、ユーザーとAIをつなぐ最後のラストワンマイルに価値を移しつつあるように見える。Agent AIが手元で動くことが当たり前になれば、価値はどうユーザー体験を向上させるかへ移っていき、Appleはお得意のUXでここを取りにいこうとしているのだろう。


 もっとも、Agent AIがコモディティー化するのにはまだまだ時間がかかるだろう。我々がローカルデバイスにAIを持つようになるまでの壁はチップの量産性とコスト、そして電力と冷却であり、特に後者の2つは大きな課題だ。


 デスクトップPCなら電源に挿しっぱなしでエージェントを夜通し働かせられるが、ノートPCはバッテリー容量に制限がある。Agent AIは常時稼働することに価値があるが、ともすると電気を消費し熱を持つようになる。いかに熱効率がいいチップを作るか、いかに安定して電気を供給し効率よく冷却するかというデータセンター向けソリューションのモバイル版が求められるようになるだろう。


 そういった壁を乗り越えた先には、仕事机の上、そしていずれは手のひらでAgent AIを回す未来があるのかもしれない。2026年のCOMPUTEXは、その入口を見せた展示会だった。



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