【コラム】 女優は二度死ぬ「あんにょん由美香」珍騒動

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2009年07月12日 01:23  よりミク

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よりミク

■職業:女優 林由美香   「セックスも仕事のうち。だけど『それだけじゃない』と私は思ってる」   かつて林由美香という名の女優がいた。1989年、19歳でAVデビュー。大きな目、つんと尖った唇のロリータ顔と、大胆な絡みでたちまちトップ女優に。その後ピンク映画や自主映画など、ジャンルの垣根を越え活躍。主演したNHKドラマ「日曜日は終わらない」はカンヌ映画祭に出品され、独特の存在感と演技力が高い評価を受けた。34歳で急逝するまでの15年で出演した作品は、500本を超えるという。
在りし日の林由美香
在りし日の林由美香
 とは言え、由美香も生涯売れっ子だった訳ではない。しかし若さを失い人気に陰りがでると、彼女を救う「何か」が必ず現れた。才能ある監督や優れた作品との出会い。それらを引き寄せる力が、由美香という人間にはあったのだ。そして今、死してなお、彼女はある作品の「主演女優」として蘇ろうとしている。タイトルは「あんにょん由美香」。映画「童貞。をプロデュース」で脚光を浴びた松江哲明監督が放つ、奇跡のドキュメンタリーである。 ■「スキナンダロ!」きっかけは1本のビデオテープ  生前、自作に由美香を起用するが、「まだまだね」と言われてしまったことを、ずっと悔いていた松江監督。「いつかちゃんと」と心に誓うも、果たせぬまま彼女はこの世を去ってしまった。  その死から一年後、謎の韓国産エロビデオ「東京の人妻 純子」が見つかる。日韓の俳優が入り乱れる中、台詞はなぜかオール日本語。シリアスな場面なのに「タイジョブデス」「スキナンダロ!」……片言の台詞で台無しだ。しかし由美香はその「とんちんかん」な画に動じることなく、全力で「純子」を演じていた。無名役者ばかりのズッコケ映画に、彼女はなぜ出演したのか? 笑いながらも、松江監督の頭にはいくつもの疑問が浮かぶ。何が彼女と韓国を結んだのか。謎を追いかけ、いつしか「由美香を撮り直す」旅が始まった。
あんにょん由美香 ポスター
あんにょん由美香 ポスター
■死者が永遠に生きる場所 「ここにはいない由美香」を探して  本作では由美香を愛した人々が語り部となり、肉体のない由美香にカタチを与えていく。中でも欠くことのできない、二人の監督がいる。かつて由美香に恋をし、自らの作品をラブレターならぬ「ラブビデオ」として捧げたカンパニー松尾、そして由美香との不倫旅行を収めた赤裸々ドキュメンタリーで話題を呼んだ、平野勝之だ。  彼らにカメラを向け、由美香との日々を追想させる松江監督。恋に落ちた瞬間、別れ、そして死の訪れ。「由美香の不在」を前に、男たちは表情をこわばらせ、時にやり場の無い苛立ちをぶつける。彼らの心は、由美香の物語を撮り終えていない。心はまだ、さよならを告げていないのだ。「ここにいない由美香」を探して、松江監督は北へ南へと疾走する。列島を横断し、カメラが由美香に「再会」した場所とは………。映画好きなら、ラストシーンに込められた意味に涙せずにはいられないだろう。
写真左から松江哲明、林由美香、カンパニー松尾
写真左から松江哲明、林由美香、カンパニー松尾
 「あんにょん」という韓国語は「こんにちは」と「さようなら」の意味を持つ。生涯で人は多くの出会いと別れを経験する。守れなかった約束、言えなかった別れ。「由美香に取り残された」一人である松江監督は、映画にしか出来ない方法で、叶えられなかった現実を創造した。彼女に「さよなら」と、そしてもう一度「こんにちは」を言うために。  映画館の暗がりから出たら、きっとあなたは誰かに会いたくなるはず。映画とは? 人生とは? ドキュメンタリーとフィクションの壁を越え、その答えに迫った奇跡の物語をお見逃しなく。(キキ/mixiニューススタッフ) 画像提供:(C)2009『あんにょん由美香』フィルムパートナーズ あんにょん由美香  演出・構成 松江哲明 制作・配給・宣伝 SPOTTED PRODUCTIONS 唄:川本真琴ほか ポレポレ東中野にてレイトショー中 林由美香 1970年6月27日、東京に生まれる。1989よりアダルトビデオに出演。 2005年6月26日、自宅にて急逝。享年34歳。 松江哲明 1977年東京生まれ。1999年、日本映画学校の卒業制作で撮った「あんにょんキムチ」が国内外で高い評価を受ける。公開待機作に「ライブテープ」。
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