【コラム】 俺は誰の奴隷だ? 今もっともリアルな青春映画「遭難フリーター」

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2009年04月21日 17:03  よりミク

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よりミク

 岩淵弘樹:23歳、職業:派遣社員。東北の大学を卒業後、憧れの東京に近づきたい一心で、埼玉にあるキヤノンの工場で働き始める。「頭の良いオランウータンでも出来る」単純労働の繰り返しで、月給は十数万円。家賃・光熱費がひかれ、借金を支払うと、残る金はわずか。週に三日は具なしソーメンで食いつなぐ。週末は、東京で日雇い派遣。働けど働けど貧乏なまま、疲労だけが溜まる。労働デモに参加しても、得られるのは昂揚感だけ。どんなに叫んでも、生活は変わらない……世間は俺を負け組と言う。でも俺は、一体誰に負けた?
寝起きで納豆ご飯をかっ込む
寝起きで納豆ご飯をかっ込む
 非正規雇用、派遣切り、格差社会、ワーキングプア。  2004年、小泉政権による派遣法改正で、製造業への派遣が可能に。人件費を削りたい企業と、「自由」を求めるフリーターのニーズが合致し、派遣労働者は爆発的に増加しました。しかし2007年になると、不透明な給料天引きや賃金不払いなど、問題が噴出。2008年には世界不況が訪れ、大規模な「派遣切り」が始まります。職を無くし、家を失った人を救うため「年越し派遣村」が設置され、マスコミはその惨状に群がりました。身を切るような寒さの中、身を寄せ合う労働者たち。ネットや、世論は、その姿に同情する一方で、不安定雇用を承知で派遣を選択した彼らを糾弾します。自らが、破滅を招いたのだと。
都内で行われたデモ
都内で行われたデモ
 映画「遭難フリーター」は、2006年、当時23歳だった岩淵監督が、派遣労働者としての日常を記録したセルフ・ドキュメンタリーです。監督は、「犠牲者としての派遣」とカテゴライズされることを嫌い、安易な社会批判を拒みます。派遣を選んだ自らの責任を問い、生きる意味を求めてもがく日々。派遣問題をテーマに含みながらも、声高に何かを主張することなく、カメラは現代に生きる一人の若者の姿を淡々と綴ります。しかし、その映像は、等身大であるがゆえに、見る者の心に生々しく迫るのです。
マクドナルドでハンバーガー、ひとときの贅沢だ
マクドナルドでハンバーガー、ひとときの贅沢だ
 寒さを逃れてマクドナルド。なけなしの金で飲むコーヒー。眼前にはマンガ喫茶のネオンサイン。金がなければ、寝場所すら得られない。行く当てもなく、東京の街で「遭難」する岩淵監督。止まない雨の中、疲れた体を引きずって、歩き出します。「夜明け」を目指し、ただひたすらに。果たして自らを「救出」できるのか――――    ラスト・シーンは賛否両論。「ぬるい!」という説教から「共感した!」という感激の声まで、観客の反応はさまざまです。「今一番リアルな青春映画」に、見出すのは希望なのか、それとも……?(キキ/mixiニューススタッフ) ■映画 遭難フリーター ユーロスペースにてロードショー(4月24日・金まで)、ほか全国順次公開 ※【大阪】シネマート心斎橋、【札幌】シアターキノ【横浜】シネマジャック&ベティ【京都】京都みなみ会館【佐賀】シアターシエマ【名古屋】シネマテークなど ■画像提供: (c)2007.W-TV OFFICE ■書籍 遭難フリーター(太田出版) 岩淵監督による書籍版「遭難フリーター」。工場で働くオッサンたちとの哀愁漂うエピソードが満載。貧乏がゆえに、2000円でこじれる友情関係。場末のスナックで得る人生の教訓……。映画とは全く違った角度から描かれた、青春デイズ。1000円。
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