「お葬式の代わりにショーを」桂由美 生前の意向を叶えた追悼ショーを開催、冨永愛や秋川雅史が登場

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2024年08月09日 13:21  Fashionsnap.com

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ファーストルックで登場した冨永愛

Image by: FASHIONSNAP
 「ユミ カツラ(Yumi Katsura)」が、4月26日に94歳で逝去したクリエイティブディレクター 桂由美の追悼ファッションショー「Yumi -celebration of life-」を8月9日の今日、帝国ホテル 東京「孔雀の間」で開催した。日本人初のブライダルファッションデザイナーであり、「ブライダルの伝道師」とも称された桂の59年間にわたる活動とその軌跡を、厳選した100着のアーカイヴ作品とともに1時間半に及ぶショーで振り返った。

 今回の追悼ショーは、桂が生前「お葬式なんていらないから、その代わりにショーをしてほしい」と話したことから、故人の希望を叶えるべく実現。桂が仕事に対する思いを語る姿を収めた映像とともにスタートしたショーのオープニングでは、クラシック歌手の秋川雅史がステージに登場し、桂が生前「私の想いがカタチになったこの曲を聞かせて欲しい」と語ったという「千の風になって」を披露。その豊かで力強い歌声を背景に、桂のコレクションへの出演経験もある冨永愛が「花嫁の体に負担がかからないような軽いドレスを作りたい」という桂の思いを実現した“フェアリーフェザー”素材の白いウェディングドレスを纏い、軽やかに踊るような足取りでランウェイを歩きショーは幕を開けた。

 その後、ショーは桂が手掛けてきた作品をテーマごとに表現した10のシーンで構成。「1枚の白い布から花嫁は誕生するのです」の印象的な言葉で始まる、同氏が25周年や50周年のショーでも披露した思い入れの深い演出である「花嫁誕生」のシーンを再演したほか、欧米式の結婚式スタイルを1979年にいち早く日本に提案した功績を紹介するパート「ウェディングパーティー」では、追悼ショーのメインカラーでもある「パープル」でコーディネートした男女4組のウェディングパーティールックが登場した。
 続く「ユミラインパレード」では、1981年に初のニューヨークでのショーで発表し大きな賞賛を得た、大振袖のお引きずりスタイルをヒントにデザインした“ユミライン”ドレスの数々を、「クチュールウェディングヒストリー」では、2012年に製作しギネスブックに登録された「世界で一番アコヤ真珠を施したウェディングドレス」をはじめとした、世界中から集めた最高級素材やオリジナル柄の編地と刺繍を用い、一切の妥協を許さないこだわりのテクニックで仕立てたオートクチュールコレクションドレスの数々を披露した。

 桂が最後まで力を入れて普及に取り組んでいたという「アニバーサリー・ウェディング」をフィーチャーしたパートでは、4年目の「花婚式」や15年目の「水晶婚式」、25年目の「銀婚式」、30年目の「真珠婚式」、50年目の「金婚式」と、夫婦の歩みの歴史を祝福し彩るスタイルを紹介。また、「ラグジュアリークチュール」と題して、花や絵画、海の色などから着想を得て製作された、色もデザインも多様なイヴニングドレスを披露した。
 ショー後半では、「伝統と革新」や「和と洋の融合」を常に掲げていた桂の思いを体現するようなルックが登場。1980年代後半以降の結婚式での和装離れを危惧した桂が、日本の文化や伝統を守るべく古典的な和装スタイルを現代の花嫁に合うようアレンジし提案した「新和装スタイル」からは、白塗りではなくナチュラルメイク、鬘ではなく洋髪に簪スタイルで纏う「ドレス素材のオーガンジー打掛」や、1995年に発表した男性用の打掛に合う袴「ゆみ肩衣」などを披露。また、手描きの友禅染めによる「桜花に富士」や、歌川広重とゴッホやミュシャの作品を融合させたドレスなど、和と洋の魅力が融合した多様なウェディングスタイルを振り返った。

 そのほか、桂の既成概念に縛られない独創的なクリエイションを代表する作品として、無形文化遺産に認定された和紙とのコラボレーションにより生まれたドレスコレクション「WASHI-MODE」や、7色の光を放つLEDライト繊維を用い大輪のバラを表現した2015年製作のビッグラインドレスなども紹介。最後は、ユミ カツラを象徴する白バラ「ローズ・ユミ」をテーマに白いバラのモチーフをさまざまなデザインに落とし込んだドレスの数々が登場し、300枚の花びらで装飾し大輪のバラを表現したドレスがラストルックを飾った。

 ショーのフィナーレには、ドレスを纏った総勢37人のモデルとともにユミ カツラの新生クリエイティブチームの藤原綾子、森永幸徳、飯野恵子の3人のデザイナーが登壇。そして、サプライズで3D映像の桂由美を映し、会場を驚かせた。

 そのほか、会場内に設けた展示ブースでは、歴代のショーのバックステージなどを捉えた写真や、桂が残した言葉をフィーチャーしたパネル展示のほか、桂由美が好んで着用していたというワードローブを披露。色とりどりのジャケットやブラウス、ドレスに加え、同氏のトレードマークである「ターバン」など私物の数々を初公開した。また会場装花は、同ブランドの45周年イベントや50周年記念ショーでも協業するなど親交の深い、華道家の假屋崎省吾が手掛けた。

 ショー冒頭の演出について飯野は、「まずは追悼の気持ちを表現するため、桂が生前から望んでいた秋川さんの歌を桂の言葉の映像から繋げて始めたかった。そして、“世界一軽いドレス”をトップにもってくることは3人のデザイナーの意見がぴったりと一致。後から冨永さんが出演してくださることになり、これしかないと運命的なものを感じました」と説明。

 アクセサリーデザイナーを務める藤原は、「ドレスだけでなくターバンやアクセサリーなど『桂ならどうするか』を考えながらコーディネートしたのはもちろん、最後に桂を登場させることで観る方を驚かせたかった。笑ったり泣いたり感動したり、いろいろな気持ちになりながら見ていただきたいと思って作ったショーでした」と話した。
 また、森永は今回のショーについて「今回こだわったのは『100点にする」ということ。きっと桂もそう言ったであろうという思いを念頭に置きながら作り上げていきました」と言及。「桂はアーティストは好きなものを作ればいいけれども、デザイナーはお客様がそれを買ってくれて初めて意味がある。常にお客様のことを第一に考えてデザインするということを、デザイナー3人ともに今後も大事にしながらやっていきたい」と今後の新体制始動に向けた思いを語った。
 公私共に親交があったという假屋崎は、「桂さんとは30年以上の付き合い。今回は先生への恩返しをテーマに、真心を込めて徹夜で仕上げました」と会場装花について説明。「今日のショーを拝見して思ったのは、先生がまだ生きていらっしゃるような気がしてならないということ。そして、これから3人体制になるユミカツラには『未来があるな』と感じ、期待感で胸がいっぱいになりました」とコメントした。
 現在、ユミ カツラは来年に控えるブランド60周年に向けた計画を練っている段階だといい、形式は未定であるもののイベントの開催を予定。また、今後も年1回はブランドとして新作コレクションの発表を行っていくとしている。

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  • 故人の意向として披露された秋川雅史さん「千の風になって」の熱唱をバックに踊る冨永愛さんのランウェイをニュースで見ましたが、ちょっと違和感を感じたのは吾輩だけでは無いはず
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