「セックスレス」と「妻の不倫」、離婚の原因で多いのは…「家庭内別居」の38歳男性会社員の実体験

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2024年09月12日 16:21  日刊SPA!

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突然ですが、「妻の不倫」で別れたい夫は離婚全体の何割だと思いますか?
法務省の司法統計(2020年)によると離婚の原因(離婚申し立ての動機別割合)が異性関係のケースは13.7%(夫の場合、全体が15,500件、異性関係が2,132件)なので10人に1人の割合です。一方、性的不調和を挙げたのは11.2%(1,749件)。このなかにはセックスレスも含まれるでしょう。

一方、妻が離婚の原因として性的不調和を挙げたケースは6.4%(全体が43,469件、性的不調和が2,808件)。つまり、妻とのセックスレスで離婚したい夫は、夫のセックスレスで離婚したい妻の2倍もいる計算です。もちろん、裁判所へ申立てをせずに離婚する人もいるので、この数字がすべてではありませんが、一つの目安にはなるでしょう。

◆反響大の「レス不倫」ドラマ

「レス不倫」を描いた漫画がドラマ化されるたび、大きな反響がある印象です。レス不倫とはセックスレスの夫婦のどちらか、もしくは両方が不倫をすることです。例えば、2024年の「1122 いいふうふ」、2023年の「あなたがしてくれなくても(以下、あなして)」、そして少し前ですが、2017年の「あなたことはそれほど(以下、あなそれ)」などです。

いずれも主人公は女性(人妻)で夫とはセックスレス。そして夫以外の男性に惹かれるのですが、これらに共通するのは彼女たちが不倫の落とし前をつけていないこと。責任の取り方としては謝罪、離婚、そして慰謝料の支払いなどがあります。

まず「1122」の場合、不倫は「公認」という約束事だったので、一子(演:高畑充希)は女性用風俗に行ったことを「必要だった」と言い、夫に対して謝罪しません。最終的に夫婦は離婚に至ったものの、その理由はあくまで性格の不一致です。

次に「あなして」の場合、ミチ(演:奈緒)はそもそも夫に不倫のことを知られておらず、やはり性格の不一致で離婚しています。

そして「あなそれ」の場合、美都(演:波瑠)は「夫は二番目に好な人」「一番好きなのは彼(不倫相手)」と開き直り、夫のストーカー癖から逃れるために離婚しました。

◆「3年間セックスレス」の38歳男性会社員のケース

法律上、不倫はどのような扱いなのかというと、離婚の原因として認められており(民法770条)、夫に与えた精神的苦痛の対価として慰謝料を支払わなければなりません(民法709条)。しかし、いずれのドラマも妻が慰謝料を支払った形跡はありません。不倫という罪に罰が科せられないと、不倫が美化されることが懸念されます。

夫婦がセックスレスなら夫も相応に悪いから、妻は慰謝料を払わなくてもいいのでしょうか。筆者は行政書士、ファイナンシャルプランナーとして日夜夫婦の悩み相談にのっていますが、今回の相談者・光輝さん(仮名・38歳・会社員)は結婚7年目で子どもはいません。しかし、妻(32歳・会社員)と3年間、セックスレスの状態でした。さらにスキンシップだけでなくコミュニケーションも少なくなってしまい、妻との関係に悩んでいました。現実の世界は漫画やドラマの世界と同じなのかーー順番に解説しましょう。

なお、本人が特定されないように実例から大幅に変更しています。また夫婦の年齢やセックスレスの原因、不倫の証拠や離婚の経緯などは各々のケースで異なるのであくまで参考程度に考えてください。

◆伸ばした足が妻の腰にあたり、激怒される

まず光輝さんは「最初のうち、結婚したら(セックスを)するのは当然って思っていました。夫婦なんだから」と語ります。しかし、「疲れているから」「そんな気分じゃない」「生理だから」という理由で妻に断られる回数が次第に増えていきました。妻が眠っているにもかかわらず、起こして行為に及ぼうとしたことで機嫌を損ねたこともあったそう。

そんななか決定的な出来事が起こります。妻と一緒にダブルのベッドにいるとき、布団をかけていたので見えなかったのでしょうか。光輝さんの伸ばした足が妻の腰に当たってしまい……妻は「レイプするつもりなの? 信じられない!」と激怒。

筆者は「セックスを強要されたと思ったのでは?」と指摘。光輝さんはうなずきますが、妻はベッドから一目散に逃げていったそう。その日以降、夫婦の営みは完全になくなり、完全にセックスレスの状態に陥りましたが、それだけではありません。それ以外のコミュニケーションも日に日に減っていたようです。

◆徐々に話しかけるのが怖くなってしまう

光輝さんは「それから彼女の様子が少しずつ変わっていきました。目つきや顔付きが以前よりキツくなったし、近寄りがたいオーラを醸し出して…」と声を震わせます。妻は慢性鼻炎で活舌が悪いそうなのですが、光輝さんが妻の言葉を聞き取れず、「何?」と聞き返すことがありました。以前は光輝さんのことを睨みつつも、同じことを二度、話してくれたのですが、現在はため息をつくだけで無視されるように。光輝さんは「僕の方から話しかけるのが怖くなりました」と振り返ります。

そこで光輝さんは「最近、あまり話してないよね。反省会をしよう!外でご飯でも食べながら」と誘いました。筆者は「どうでしたか?」と尋ねると、光輝さんは首を横に振り、「返事はありませんでした」と言います。そんな矢先、妻が驚きの行動に出ます。

「あの日から光ちゃんのことがずっと怖かった。また求められたらどうしよう……嫌悪感が消えることはなかったから。もう無理。我慢の限界。別れてください」と切り出した上で離婚届を差し出したのです。前もって前もって役所で用紙を入手するなんて……筆者は「奥さんは一時の感情で行っているのではなく相当な覚悟なのでしょう」とアドバイスしました。

しかし、光輝さんは「夫婦なんてそんなもんだろう。うちの親だってそうだし、そっちの親だって同じじゃないかな。ずっと(セックスを)するなんてドラマや映画のなかだけだろう? うちだけが特別じゃない、他の家だってそうだ」と言い、離婚届へ記入するのを拒んだそうです。

ただ、妻が離婚の二文字を口にしたことで、光輝さん夫婦は家庭内別居の状態に。二人は一つ屋根の下にいるのに、なるべく顔を会わせないよう、おっかなびっくり暮らす…そんな緊張の糸がはりめぐらされた生活に突入したのです。

◆「506だから」という謎のLINEが…

2020年の離婚件数は193,253件ですが、統計上(厚生労働省の「離婚に関する統計の概況」)夫婦が同居したまま、離婚に至るのは全体の29%(54,324件)。一方、離婚する前に別居するのは71%(138,929件)。妻は同居したまま、離婚を切り出したので少数派です。

そんな最中、光輝さんに「506だから」というLINEが届いたのです。送り主は妻ですが、前述の通り、夫婦間の会話はほぼゼロ。三桁の数字は仮にホテルの部屋番号だったとしても、ホテルの一室で待ち合わせをする予定はありません。

筆者は「特に意味はないかもしれませんが、もし別の男性と会うつもりだとしたら一大事ですよ」と助言しました。そこで光輝さんは「どこのホテルだっけ?」と送信。そうすると妻はやり取りの相手がまだ光輝さんだと気付かず、「××だよ。台東区××××」と返してきたのです。妻はまだ何も気付いていない様子です。

光輝さんはいても立ってもいられず、そのホテルに急行。部屋のインターフォンを鳴らしたのですが、「はい」と答えたのはあろうことか妻でした。光輝さんの疑いは灰色から黒色に変わった瞬間でした。妻は無視することもできたのに、平気な顔で応じたので光輝さんは動揺を隠せませんでした。

◆悪びれる様子がない妻は実家に帰ってしまう

そこで光輝さんは「お前、ここで何やっているんだ!」と怒鳴ると、妻は「何でもいいでしょ? 光ちゃんには関係ない」と逆ギレ。「気分転換でデイユースを利用した」と言い訳することも可能といえば可能ですが、妻は暗に不倫を認めた上で「私たち、もう終わっているでしょ? 離婚の話もしたし……何をしようが自由なのよ!」と突き放したのです。

このように妻が悪びれる様子はなく、完全に開き直っており、今回のことを隠すつもりがないようです。これ以上、廊下で騒ぎ立てて、ホテルのスタッフが駆けつけると困ります。妻が「とにかく帰って!」と言うので、光輝さんは妻の言う通り、その場から退散したのです。

そして妻はその日、自宅に戻ると荷物をまとめ、実家に帰ってしまったのです。光輝さんが筆者の事務所へ相談しに来たのは、夫婦が別居に至ったタイミングでした。筆者は一通りの話を聞いた上で「奥さんの不倫が事実なら有責配偶者(離婚原因を作った側)になること」「有責配偶者からの離婚請求は裁判所では、そう簡単に認められないので、奥さんが離婚したいなら光輝さんの説得が必要だということ」そして「不倫で受けた精神的苦痛の対価は慰謝料の対象になること」と伝えました。

さて、一般社団法人・日本家族計画協会家族計画研究センターが2020年に調査した結果によると既婚女性のうち、30代は57.7%、40代は48.1%が「不倫をしたことがある」と答えています。

◆「悪いことをしたつもりはない」と頑なに主張

このように光輝さんは妻の脇の甘さがきっかけで、思わぬ形で「妻の不倫」を知ることになったのですが、「あの後、約束していた男がやってきたのか」「いつから付き合っているんだ」「僕の求めに応じないで別の男と!」ーー光輝さんは何十回も同じ自問自答を繰り返して頭がおかしくなりそうでした。どうしても真相を確かめたいのですが、妻が会ってくれる保証はないので、「離婚届を渡すよ」と伝えました。そしてルノアールの個室を予約し、そこに呼び出したのです。

そして妻は席に着くなり、「前にも言ったけれど、私たち、夫婦として終わっているから。光ちゃんが何て言おうとやり直すつもりはないから、早く離婚届をください」と畳みかけてきました。そのため、光輝さんはテーブルに置いた離婚届をいったん引っ込めた上で「いつからなんだ。離婚の話をする前からなのか?」と尋ねました。

そうすると妻は「まさか!」と首を振りながら、「私は悪いことをしたつもりはないし、光輝に後ろめたいと思っていないよ」と言い切ったとのこと。そして「言っておくけれど、彼とは浮気じゃない、私、本気だから!」と続けました。

妻が口にするのは自分の気持ちばかり。「妻の裏切り」を知ってしまい、ショックを受けている光輝さんを気遣う言葉はありませんでした。

◆「破綻する前」に交際を始めた場合は…

そこで光輝さんは「話は分かった。でも、ちょっと身勝手すぎないか。離婚してから付き合うのがルールだろ?」と切り返しました。しかし、妻は「いつまでも光ちゃんとのことを引きずりたくないの。離婚してから探すんじゃ、一人の時間が寂しいでしょ?(離婚)届けを出したら、すぐに彼と一緒になるつもりだから。」と圧力を強めてきたので、光輝さんはつい強い言葉で言い返してしまいました。「僕はお前のやっていることは不倫だって言いたいの!今さら別れろなんて言わないよ。でもルールを破ったなら、それなりの報いが必要だろ……慰謝料とか!」と。

しかし、妻は光輝さんの言葉を一笑に付す感じで「はいはい、そうきましたか…言っておくけれど、彼とは浮気じゃない、本気だから!」と言い返してきたそうです。

妻の言う通り、不倫をしたのが婚姻関係の破綻した後なら慰謝料の対象になりません。しかし、離婚を切り出すと同時に破綻するのでしょうか? 裁判所の見解では破綻の有無に影響を与えるのは別居期間です。具体的には少なくとも6年は必要です。(東京高裁・平成14年6月26日判決)もちろん、破綻を認定するのに必要な要件は別居期間だけではありませんが、妻が相手の男性と付き合い始めたとき、光輝さんと妻はまだ別居していなかったので、当時、婚姻関係は破綻していませんでした。破綻する前に交際を始めたのだから、それは不倫です。そして慰謝料の対象になります。

◆結局、慰謝料を払わせることに成功したが…

妻は「レスなんだから、しょうがないでしょ? 光ちゃんも外で遊んできても良かったのに」と軽口を叩いたそうです。夫婦がセックスレスだという理由で不貞の慰謝料を減額することを認めた判例を筆者は知りません。筆者の経験上、夫婦がレスではないのに不倫の相談に来るケースはほとんどありません。つまり、大半はレスです。

もしレスを理由に慰謝料が軽くなるのなら、慰謝料の相場が下がってしまうからだと考えます。そもそも光輝さんに拒まれたので寂しくて他の男性になびいてしまったのならともかく、拒んだのは妻の方です。

そこで光輝さんは「レスの原因を僕に押し付けるのは筋違いだろ?!」とやり返したのです。そうすると妻は「光ちゃんのことを早く忘れたいの。彼にも待ってもらっているし……払えば離婚してくれるんでしょうね」と確認しつつ、「30万なら」と言い添えました。光輝さんは「わかった、それでいい」と答えると、慰謝料を払うことを約束する見返りに、記入済の離婚届を手渡したのです。

◆共働きが増えたことで不倫も増えた?

ところで男性は離婚後、すぐに再婚することが可能です。一方、女性は離婚後、一定期間は再婚することが禁じられていました。具体的には2016年より前は6ヵ月、先は100日ですが、2024年から妊娠していないことを証明すれば、男性と同じく、離婚後、すぐに再婚できるようになりました。もし、妻が妊娠していないのなら、役所へ婚姻届に加え、医師が発行した証明書を提出すれば良いのです。

レゾンデートル株式会社(2023年10月に20代〜50代の既婚者男女4,000人にセックスレスに関する実態調査)よると夫婦のうち、51.9%がセックスレス。子どもがいる場合(71.4%)は子どもがいない場合(61.2%)よりセックスレスの傾向が強いようです。

不倫をする確率は異性と出会う確率と比例します。現在はすでに「男は外で働き、妻は家を守る」時代ではありません。なぜなら、専業主婦(458世帯)は共働き(1,177世帯)の半分しかいないからです。

しかも働く女性は10年間で10%以上(340万人)も増加し、現役世代(25〜44歳)の就業率はほぼ同数(女性78% 男性83%)です。(令和4年、男女共同参画白書)つまり、不倫をする確率は男女とも同じです。ジェンダーレスとは男女間の「性差」がなくなる現象ですが、性についても同じ。「妻に限って」と色眼鏡で見るのは危険です。

<TEXT/露木幸彦>

【露木幸彦】
1980年生まれ。国学院大学卒。行政書士・FP。男の離婚に特化し開業。6年目で相談7千件、「離婚サポートnet」会員は6千人を突破。「ノンストップ」(フジテレビ)、「ホンマでっかTV」(フジテレビ)、「市民のミカタ」などに出演。著書は「男のための最強離婚術」(7刷)「男の離婚」(4刷)など11冊。

公式サイト
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ブログ:法律でメシを食う若造のブログ
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