女児向け“推し活本”なぜ話題に?  著者・劇団雌猫に聞く、大人が知らない“子どもの推し活”のガイド本

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2025年06月13日 13:00  リアルサウンド

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女児向け“推し活本”なぜ話題に? 

  女児を読者対象とした『毎日がもっとキラキラする! はじめての推し活』(高橋書店)がSNS等でじわじわと話題となっている。いまや社会現象となった「推し活」を小学生女児に向けて解説する本書は 「推し活」する際のSNS活用法や推し活友達の作り方から、お金の使い方や二次創作の注意点まで細やかに書かれている。


 「類書初にして決定版」と謳う本書が企画された意図や意識した点等を著者であるオタクユニット・劇団雌猫のユッケさんともぐもぐさんに聞いた。


■大人が知らない世界で「推し」を見つける小中学生

――初めて“推し”が出来た小中学生の子たちに向けて書かれた『毎日がもっとキラキラする! はじめての推し活』は、子どもだけでなく、推しがいるすべての人に読んでほしい1冊ですね。どのようなきっかけで作られたのでしょうか。


ユッケ:最初は編集さんから「子ども向けの推し活本を作りたい」という企画を劇団雌猫宛てに頂いたことから始まりました。私たちは20代のころから一緒に活動をしているのですが、当時は子どもがいるメンバーがいなかったんです。さらに全員が働いていたので、わりと自由に自分のためにお金が使えたんですよね。


  けれど、年齢を重ね、周りに子どもがいる人たちが増えたり、もぐもぐさんも出産を経験したりして、子どもの推し活が身近になってきたんです。さらに今は、小中学生がVTuberや歌い手さんなど、大人があまり知らない世界で推しを見つけています。そのなかで、子どもに対して、推し活の基本的な知識を教える本が必要になってくるのではと思い、制作を始めました。


もぐもぐ:“推し活”という言葉が当たり前に使われるようになってからますます、デジタルネイティブ世代の小中学生は、ほしいグッズを見つけたり、「ライブに行ったら楽しそうだな」と思ったりと、親のわからないところから情報を得て、煽られることも少なくないはず。


  でも、経済力も行動範囲も限られている子どもが無理をしても持続的に推し活は出来ないですし、変な方向に“頑張って”しまってもそれは幸福なのかなと……。早い段階で「好き」の見つめ方、情報や気持ちとの向き合い方を自分で考えるのはすごく大事なことだと思ったんです。そうすることで、長期的に推し活ができるようになりますし、生活とやりたいことのバランスがとりやすくなったらいいなと思ったんですよね。


■「危険だから」と否定するより建設的な会話を

――さらにこの本には、お金のことから推し活をする友達とのコミュニケーションのことまで、推し活をする上で大事なことが書かれています。どのようにトピックを詰めていったのでしょうか。


もぐもぐ;推し活をする子どもを持つまわりのお母さんたちにお話を聞いていくうちに、子どもと推し活の話をする際に、お金と時間の話を伝えることは絶対的に大事だと感じました。やっぱり保護者の皆さんが一番心配なのはそこですよね。


  とはいえ、「危険だからやめよう」と言い切るのも違和感がありました。私たちのように、推し活をするなかで友達が出来たり、自分の世界が広がることもあるからこそ、「推しがいる人生は楽しいよね」という気持ちをベースにしつつ、「ここからはおうちの人と相談してね」「このあたりからは危険だよ」と読者に提案するスタンスで進めていきました。


  親が子どもの推しを頭ごなしに否定するのではなく、「コンサートは年に1回、選んでいこうね」とか、「CDやグッズは何円までにしようね」など、建設的な会話を親子でできるきっかけになったらいいなと思ったんです。


ユッケ:推し活をしていると、推しのことを語りたくなったり、誰かとライブに行きたくなったりと、人との接点も増えていく場合が多いはず。この本は、主人公の女の子が、ある日突然推しと出会い、どんどん成長していくという構成になっているんですが、そこで推し活友達の作り方や、現場に行くときに気を付けることなどを順を追ってわかりやすく伝えるようにしました。さらに、推しに対しての考え方の相違で起きる対人トラブルなどについても、しっかりと書いていきました。


もぐもぐ:これって子どもだけの話ではなくて、推し活を始めた大人にも当てはまるものばかりですよね。はじめて推しができた! という大人の方にも読んでもらえたら嬉しいです。


■「光と闇」両方の側面を入れたかった

――おふたりがこの本に絶対に入れたかった点はありますか?


もぐもぐ:自分たちも大人になった今振り返ると、親に直接言われて煙たがっていたことも、第三者のオタクのお姉さんたちから言われたら、少し冷静に受け入れられることもあっただろうなと思うんです。「計画的に貯金しなさい」とか「ずっとゲームばっかしてないで」とか、正論だけど素直に聞きたくなかったですもん(笑)。とはいえ、説教くさくはならないように、推しがブログを更新したら“推し貯金”など、気が進まないこともポジティブにできるようなアイディアも考えていきました。


  あとは、親になかなか推しを理解してもらえないお子さんも多いのかなと思うので、いきなりわかってもらおうとせずに、話を小出しにして、少しずつ布教していこう、など、ちょっとした戦略なども入れていきました。


ユッケ:私は推し活の光と闇をどちらも入れたいなと思っていました。グッズをたくさん集めたり、毎回コンサートに行く人ほど偉いとされがちですが、決してそうではなくて、メンバーカラーを身に着けたり、推し概念グッズを作ったり、生活のなかに推しがいることで毎日がちょっとでも楽しくなるという情報が光の面。


  闇の面で言うと、推し活をする上で「公式に問い合わせたら駄目だと言われるけれど、公式もそのコンテンツの盛り上げのために目を瞑ってくれている」というような、グレーとされている部分が本当にたくさんあります。そういう具体的な事例を取り上げつつ、一緒に考えようという話を入れていきました。もちろん、私たちだけでは判断ができないので、弁護士さんに監修してもらいました。


■他人の推しを肯定することの重要性

――推し活をするなかで、友人関係が壊れてしまう話も聞きます。劇団雌猫の4人は環境や推しが違うなか、仲が良いですよね。その秘訣を教えてください。


もぐもぐ:全員が違うものが好きなので、基本的に他の人の推しを肯定することを大事にしています。それぞれ違うものが好きでも、気持ちやスタンスが同じなので、話しているとすごく面白いんですよね。誰かの推しがスキャンダルで落ち込んでいると、「私の界隈ではこんなことがあってね…」とみんなで助け合って、支え合っているのかもしれないです(笑)。


ユッケ:共通の趣味で集まった友達ではないからこそ、続いているのはあると思います。劇団雌猫と同じ時期に「推しが同じだから」という理由で仲良くなった友達は、推し変をしたことをきっかけに疎遠になってしまうこともありました。でも、雌猫のメンバーはもともと違うものが好きなので、疎遠になりようがないというか。こういう友達の作り方があるんだなと教えてもらいました。


――ちなみに、いまのおふたりの推しを教えてください!


もぐもぐ:私はtimeleszです。もともとSexy Zoneが好きで、オーディション番組の“タイプロ”もめちゃくちゃ楽しみにしていたんです。結果的にいま、ものすごく人気を集めているので、この祭りの炎を絶やさないようにしていきたいですね!


ユッケ:私はミュージカル『テニスの王子様』シリーズにあらためてハマっています。あとは、昨年『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』というオーディション番組にハマり、応援していたメンバーが無事にME:Iとしてデビューすることになったので、今後ME:Iの先輩になる人たちについても詳しくなろうとYouTubeでコンテンツを見始めたところ、INIにどっぷりハマってしまいました! 


■推し活は無理せずが大事

――つねに推しが増えていくみなさん、とても素敵です(笑)。では最後にメッセージをお願いします。


もぐもぐ:人生は長いので、推し活は楽しく続けられることが一番だと思うんです。私も子どもが小さいので、なかなかコンサートに行けない時期もありました。金銭的、時間的な事情はさまざまですから、周りと比べて焦ったり劣等感を感じたりする気持ちもわかります。大人でもそうですから子どもも同じですよね。でも、結局のところ趣味だから楽しくないと悲しいじゃないですか! 


  推しは応援したいときに応援すればいいし、自分のテンションに合わせて応援するのが一番。なによりも、推し活は健康に続けることが大事なので、無理をせず、あくまで「自分の人生をもっと楽しくするために推し活がある」というスタンスでいるのがいいのかなと思っています。


ユッケ:私たちが子どものころって、大人になったら漫画やアニメ、アイドルなどの好きなことは卒業しなくちゃいけないという固定観念があったと思うんです。でもいまは性別や年齢、立場を問わず、多くの人に推しがいる時代。だからこそ、誰でも堂々と好きの気持ちを大切にしていいと思います。自分が知らないだけで、おもしろいものはたくさんあるので、私自身も、さらに新たな世界に飛び込んでいきたいなと思っています!



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