日本原子力研究開発機構が試作したウラン蓄電池。負極側にウラン、正極側に鉄を含む電解液を使い、発光ダイオード(LED)が点灯した(同機構提供) 日本原子力研究開発機構は13日、ウランの化学的な性質を利用した蓄電池を世界で初めて開発し、充放電の性能を確認したと発表した。試作品は手のひらに載る大きさで、起電力(電圧)は市販の乾電池に近い1.3ボルト。将来は原発での発電に使えない劣化ウランを利用して大容量化し、原発や太陽光・風力発電の余剰電力をためることを目指している。
この蓄電池は負極側に天然ウランを含む電解液、正極側に鉄を含む電解液を使用。充電時は鉄イオンが2価から3価に変わって電子が放出され、ウランイオンが電子を得て4価から3価に変わる。放電時は逆の反応となり、発光ダイオード(LED)を点灯できた。
原発はウラン235の核分裂現象を熱に変え、蒸気タービンを介して発電するが、天然ウランには0.7%しか含まれない。残りは核分裂しにくいウラン238で、劣化ウランと呼ばれ、国内に約1万6000トンも貯蔵されている。
原子力機構は、タンクにためた電解液をポンプで循環させる大容量蓄電池「レドックスフロー電池」に注目。バナジウムの電解液を使う方式が普及し始めており、劣化ウランを用いる方式を新たに開発することにした。
原子力機構NXR開発センターの大内和希・研究副主幹は「来年度は電解液を循環させる形にし、起電力を引き上げたい」と話している。

原発に使えない劣化ウランを利用する大容量蓄電池「ウランレドックスフロー電池」のイメージ図(日本原子力研究開発機構提供)

ウラン蓄電池(手の上は試作用の実験装置)を開発した日本原子力研究開発機構NXR開発センターの大内和希・研究副主幹=13日午後、文部科学省