首相官邸に入る石破茂首相=25日午前、東京・永田町 2024年度末まで1週間を切り大詰めを迎えた25年度予算案の審議に、立憲民主党が淡々と応じている。石破茂首相の商品券配布問題の発覚直後は政局流動化の観測も流れたが、立民は早々に「日程闘争」を封印。内閣支持率が低迷する首相の続投を望む心理に加え、夏の参院選に向けて政権担当能力をアピールしたい思惑が透ける。
自民の石井準一参院国対委員長は25日夕、立民の斎藤嘉隆参院国対委員長と国会内で会談し、28日の集中審議開催を提案した。斎藤氏はこの後、「28日に採決する気持ちがあるのかもしれない」と自民の狙いを記者団に解説。立民の対応を問われると「仮定の話だ」と言葉を濁した。
首相にとって31日までの予算案成立は譲れない一線だ。25年度に1日でも食い込めば、与党内での求心力低下につながりかねない。一方、今月中旬に発覚した自民若手議員への商品券配布は、過去の政権でも行われていたことが判明。旧安倍派幹部の参考人招致も実現しておらず、野党にとっての追及材料は山積している。
今国会では高額療養費制度見直しの凍結を踏まえ、与党は予算案を再修正する方針。予算案を参院可決後に衆院に戻す異例の手続きを踏む必要がある。予算案が憲法の規定で自然成立するのは4月2日。野党がそれまでの間に「見せ場」をつくろうとしてもおかしくはない。
しかし、実際は予算委が大きく荒れることはなく、審議が淡々と続く。政府関係者は「奇妙な静けさだ」と語った。
背景には「石破首相で参院選を戦いたい」との願望に加え、仮に「退陣要求カード」を切るにしても時期尚早との計算があるようだ。与党内には年度末に合わせた内閣不信任決議案の提出を危惧する声もあるが、立民関係者は「出すわけがない」と言明。党幹部は「今は模様眺めだ」と語る。
「責任政党」を印象付けたい思惑もある。予算案成立が年度をまたげば暫定予算の編成が必要との指摘もあるが、野田佳彦代表は首相在任中に暫定予算編成を余儀なくされた経験を「トラウマだ」と漏らす。党関係者は「時間稼ぎと見られれば批判を食らいかねない」と懸念を示した。
もっとも、こうした姿勢は党の支持率アップにつながらず、立民は国民民主党などの勢いに押され気味だ。このため、立民内には「戦う姿勢を示すべきだ」との不満がくすぶっている。小沢一郎衆院議員は25日、「(自民の)エラーを眺めているだけでは政権は遠のく」と苦言を呈した。
25日には首相が公明の斉藤鉄夫代表との会談で「強力な物価高対策」を打ち出す意向を表明し、立民は「予算案の内容が不十分だと自ら露呈した」(大串博志代表代行)と批判を強めている。最終局面で飛び出した思わぬ波乱材料に、自民幹部は「予算成立前にばかなことを」と顔をしかめた。