F1コラム:マグヌッセンとハースの稀有な歴史(2)歴代チームメイト3人との比較。ヒュルケンベルグがもたらした影響

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2024年08月23日 14:50  AUTOSPORT web

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2017年F1スペインGP ケビン・マグヌッセンとロマン・グロージャン(ハース)
 ベテランモータースポーツジャーナリスト、ピーター・ナイガード氏が、F1で起こるさまざまな出来事、サーキットで目にしたエピソード等について、幅広い知見を反映させて記す連載コラム。今回は、2024年末で長年のパートナーシップに終止符を打つことを決めた、ケビン・マグヌッセンとハースの歴史を振り返る(全3回)。

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■マグヌッセンとグロージャン

 ハースでの7シーズンの間に、マグヌッセンは3人のチームメイトと過ごした。ロマン・グロージャン(2017〜2020年)、ミック・シューマッハー(2022年)、ニコ・ヒュルケンベルグ(2023〜2024年)だ。レギュラードライバー以外では、2020年終盤2戦、グロージャンの代役を務めたピエトロ・フィッティパルディもいる。

 グロージャンは、2016年にジーン・ハースとギュンター・シュタイナーの新しいF1チームにコミットした最初のドライバーだった。以前所属したルノーで、グロージャン担当エンジニアを小松礼雄が務め、その後、小松はハースでチーフエンジニアに就任した。

 2017年にマグヌッセンがハースに加入するころにはグロージャンはチーム内でのポジションを確立していた。そのため、最初のシーズンにグロージャンがマグヌッセンを圧倒したのは驚くことではない。

 当時、グロージャンはシングルラップでは最速のドライバーのひとりとみなされており、予選でしばしば驚異的な結果を出していた。マグヌッセンは「グロージャンは僕のチームメイトのなかで最も速いドライバーだった」と振り返っている。それでも、4シーズンにわたってチームメイトを務めるなかで、マグヌッセンはグロージャンに次第に追いついていき、時には勝つようになってきた。

 しかし、マグヌッセンは、グロージャンとの予選対決で勝ったことに対して、十分な評価を与えられていない。2017年から2020年までの77回のグランプリにおける予選で、マグヌッセンは39勝38敗でグロージャンに勝っているのだが。

 このように、最終的には予選では接戦だった一方で、決勝に関しては、マグヌッセンの方がグロージャンより優れたレーサーだったことに疑いの余地はない。4シーズンの合計ポイントは、マグヌッセンが96ポイント、グロージャンが75ポイントだった。

■マグヌッセンとミック・シューマッハー

 マグヌッセンは復帰した2022年シーズンに素晴らしい成績を収めた。1年間F1から離れた後にハースで復帰、その際のチームメイトはミック・シューマッハーだったが、初日からマグヌッセンの方が優れていた。シーズンを通してマグヌッセンの方が圧倒的に速く、アクシデントの回数も少なかった。

 予選対決は、マグヌッセン対シューマッハーは16対6、ポイントでは25点対12点という結果だった。2022年は多くの点でマグヌッセンにとって成功した復帰シーズンだったといえるだろう。しかし振り返ってみると、当時の印象ほど素晴らしいパフォーマンスとはいいきれない。ミック・シューマッハーが基準であれば、輝くのは比較的容易だったかもしれないからだ。

 実際どう評価すべきかについては、決して答えは出ないし、今となってはさほど重要なことではない。ただ、興味深い仮定がある。もしもギュンター・シュタイナーが2022年にマグヌッセンの代わりに、同じく獲得可能だったニコ・ヒュルケンベルグを選んでいたら、チームはどうなっていただろう……? 2022年から2024年にかけての3人のリザルトを見ると、若いシュマッハーは大惨事に陥っていたものと予想される。

■マグヌッセンとヒュルケンベルグ

 2023〜2024年、シューマッハーに代わってヒュルケンベルグが加入した。マグヌッセンにとって悲惨とまではいかないものの、ふたりのリザルトを見ると、マグヌッセンの将来を壊滅的に見ざるを得なくなる。特に予選は問題で、ヒュルケンベルグがここまでのところ圧勝している。

 レースでは、マグヌッセンは通常、ラップタイムとオーバーテイクにおいて、ヒュルケンベルグと同等かそれ以上の速さを見せている。しかしヒュルケンベルグはトップ10内からしばしばスタートするのに対して、マグヌッセンはグリッド後方に沈むことが多い。そしてオーバーテイクは、最初から上位にいるよりも、後方からスタートした方がやりやすい。さらに、グリッドポジションが悪いことで、マグヌッセンはなかなかポイントに届かない。この1年半の間で、ヒュルケンベルグは31ポイントを獲得したのに対し、マグヌッセンは8ポイントにとどまっている。

 ヒュルケンベルグをチームメイトに迎えたシーズン、マグヌッセンに新たな考え方がもたらされたように見える。チームメイトがグロージャンだったころには、予選で0.05秒でも遅いだけで、マグヌッセンは動揺していた。しかし2023年と2024年には、ヒュルケンベルグよりしばしば0.3秒以上も遅い。大差をつけられることが多くなるにつれて、マグヌッセンには、かつてのような気分の揺れが見られなくなった。

 ヒュルケンベルグの素晴らしい予選パフォーマンスにはかなわないと、完全に諦めてしまったわけではないだろう。ただ、チームメイトとの比較、そしておそらくF1全体における比較というものに、マグヌッセンは、以前ほど強くはこだわらなくなったように見える。

(第3回に続く)

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