大盛況のWECハイパーカー、一方で顧客チームの出場が困難に。2025年の純プライベーターは1台のみか

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2024年09月09日 12:40  AUTOSPORT web

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プロトン・コンペティションの99号車ポルシェ963 2024年WEC第5戦サンパウロ
 ポルシェ・モータースポーツの責任者であるトーマス・ローデンバッハによると、プロトン・コンペティションは、来季2025年のWEC世界耐久選手権で『ポルシェ963』を走らせる唯一のカスタマーチームとなる見込みだ。

 今シーズン、ペンスキーが運営するファクトリーカーのペアに加えプロトンの1台、そしてハーツ・チーム・JOTAが走らせる2台と計5台の『963』をグリッド上に有するポルシェ。このドイツのメーカーは、JOTAがキャデラックとパートナーシップを締結したことにより、ハイパーカークラスでのプライベーター・エントリーをふたつ失うことになるが、それでも少なくとも1台の顧客を持ち続けることになる。

 第6戦オースティンを前にイソッタ・フラスキーニがシリーズから撤退したことで、プロトン・コンペティションの2台目のエントリーや新たなプライベートチームがポルシェのLMDhカーを走らせる可能性があると考えられているが、ローデンバッハはこの可能性を低く見ている。

 サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)で開催された『ローンスター・ル・マン』の会期中、同氏は選ばれた記者たちに対し次のように語った。「明らかに、来年はプロトンが唯一のカスタマーチームになるようだ」

「もしクリス(クリスチャン・リード/プロトンのチームオーナー)がセカンドカーを走らせたいと考えているなら、彼らは私たちに依頼するだろう」

「フェラーリのように、もっと多くのクルマにエントリーさせたいと考えているハイパーカーメーカーは他にもあるかもしれないが、それはACOフランス西部自動車クラブと一緒にやることであって、私たちと一緒にやることではない」

「もちろん、我々はクリスと親密な関係にある。しかし、彼らは予算を考えなければならない。決定を下すのは彼らだ」

「私の考えではプライベーターベースで(2台体制でフルシーズンを戦う)資金を調達するのは難しいと思う」

 この件についてさらに追求されたローデンバッハは、顧客による取り組みがプロトンのみとなることが現在のところ「もっとも可能性の高い」シナリオだと述べた。

「しかし、もし明日誰かが私たちに電話をかけてくるとしたら、もちろん彼らと話をし、それが適切なチームかどうか、資金があるかどうかなどを見て、それから決定を下すだろう」と彼は言った。

「その後、WECは(エントリーの可否について)決定を下すことになる」

「このカテゴリーにはJOTAとプロトンというふたつの顧客チームがある。JOTAは今、キャデラックにかなり近づいている。これは彼らにとって素晴らしいことだと思う」

「クリスに話を聞いてみれば、レースのために予算を確保するのがいかに難しいかを教えてくれるだろう」

「(このレベルのレースに参加できる)チームが数多くあるとは思えない。望んでいるチームは多いかもしれないが、それを一定のレベルで実行できる立場にあるチームはほとんどないんだ」

■フェラーリのようにサードカーを出せるか?

 ローデンバッハは、ファクトリーチームであるポルシェ・ペンスキー・モータースポーツが3台目の『963』をフルシーズンエントリーさせる可能性について、現在のところ計画はないと述べた。

「そのことについては話をしていない」と同氏。「もちろん、可能性はつねに考えているが、私たちは2台のクルマで非常に良い状態にあると思う」

「それに、もしクリスが(シリーズへの参戦を)続けると決めたなら、私たちは2025年のグリッドに少なくとも3台のクルマを置くことになる」

「忘れてはいけないのは、3台目のワークスカーを持つにはさらに資金が必要だということだ。3台のクルマを走らせるためには、オペレーションも現在のかたちからは大きく変える必要がある」

「(そうした面からも)現時点ではサードカーを投入する計画はない」

 一方、来年のル・マン24時間レースに目を向けると話は別だ。ローデンバッハによると、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツは現在首位に立っているIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権でのタイトル獲得を通じ、フランスの耐久クラシックでGTPクラスのチャンピオンカーを走らせることを目指しているという。

■新規参戦メーカーの登場により顧客チームの出場が一層困難に

 WECのエントリー制限と世界選手権へのメーカーの参入が増えていることで、トップクラスではプライベーターの時代が終わりつつあることをローデンバッハは認めた。

 アストンマーティンは来年、ハート・オブ・レーシングチームとともにハイパーカーの仲間入りを果たす。また、韓国のヒョンデが2026年にこれに続くものと予想されており、他のふたつの自動車メーカーも同様のプログラムを完成させる予定だ。

「2年前を振り返ってみると、私たちはおそらく違う哲学を持っていたと思う。なぜなら、『OK、私たちはカスタマーカーを提供できて嬉しい』と言っていたからだ」とローデンバッハは語った。

「しかし今では、ファクトリーカーやメーカーが支援するクルマが非常に多くなっているため、プライベーターのスペースがなくなりつつあるように見える」

「カスタマーカーが(実質的にポルシェの)1車種しかないことも秘密ではない」

「私たちはサービスやすべてを提供しているが、それは大変なことだ。しかし、私たちは絶対に顧客を失望させるようなことはしない。それは明らかだ」

「将来を考えると、現在よりさらに多くのメーカーが参入することになり、顧客にとってはますます難しくなっていくだろう。その一方でシリーズにとっては素晴らしいことだ」

「これだけ多くのメーカーがシリーズに参加するのは間違いなく素晴らしいことだが、同時にプライベーターにとっては決して楽なことではない」

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