サッカー日本代表のバーレーン戦大勝もスペインの名指導者は「緩慢」と指摘 久保建英へ苦言も

0

2024年09月13日 10:30  webスポルティーバ

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

webスポルティーバ

写真

「すばらしい勝利だ。しかし、前半に関して言えば、実りのあるプレーは少なかった」

 スペインの慧眼、ミケル・エチャリはそう言って、2026年W杯アジア最終予選、日本がアウェーでバーレーンを5−0で下した試合を振り返っている。

「3−4−3(3−4−2−1)の新システムは、成熟しつつある。ただ、前半はプレーの判断がやや遅れていたことで、スローな印象を与えた。それが緩慢な試合展開の理由だろう。その点は中国戦と変わらず、修正点と言える。W杯ベスト8のような強豪と対戦した場合、その出遅れは必ず突かれるし、その時の守備のストレスは巨大で(バーレーンの比ではなく)、攻撃の精度も下がるはずだ」

 レアル・ソシエダで約20年に渡って、強化部長や育成部長など様々な役職を務めてきたエチャリは、あえて苦言を呈した。大勝のなかにこそ、看過できない「次の敗因」が潜んでいるからだ。

「完勝」

 そう見える試合が危ない。

 エチャリは日本代表について、過去にも暗示的な指摘をしてきた。2010年南アフリカW杯では守備の弱さを見抜き、アンカー起用を提唱。2014年ブラジルW杯では自信過剰で前がかりになった攻撃バランスに警鐘を鳴らしていた。

 大勝のバーレーン戦をどう分析したのか?

「日本は、立ち上がりから優位に立っている。3−4−3を着実にものにしつつある。もともと日本は機動力に優れた選手が多く、攻撃を分厚くする戦いは理にかなっている。

 遠藤航、守田英正のふたりのMFは、このチームの土台と言えるだろう。ふたりはどんなシステムにも適応できるはずで、バランス感覚は秀逸。前後左右のポジションの取り方が極まりつつある。ふたりがいいポジションを取ることで、システムも成立している。

 前半30分をすぎた頃、バックラインから南野拓実にボールが入って、これを守田に落とす。守田はすかさずダイレクトで裏に送った。これはカットされたが、再び遠藤が拾って、右サイドを抜け出した鎌田大地にパス。このクロスがスライティングに入った相手選手のハンドでPKの判定になった。

 この先制点だけでも、守田、遠藤が戦術的にどれほど重要かわかるだろう」

【攻撃陣がスピードを高められなかった前半】

「37分、PKを決めた上田綺世のキックはすばらしかった。強く、果断。レーザー照射を受けていたが、少しも動じていなかった

 ただし、冒頭に記したように、前半を総括した場合、単発の攻撃が多かった。攻撃陣がスピードを高められなかったことが最大の理由だろう。たとえば、堂安律はすばらしい能力の持ち主だが、やや油断が見えた。チーム全体、慢心ではないが、強度が足りず、その象徴だった。

 個人的には、なぜ中国戦のメンバーから久保建英だけを外し、鎌田を同じポジションで起用したのか、腑に落ちない。久保は攻撃にスピードを加えられる。鎌田は少し下がってプレーを作る能力に優れるだけに、ボランチに近いポジションのほうが生きるし、PKを取ったシーンはよかったが、前半はこのシーン以外、埋もれていた」

 エチャリはそう前半を振り返った。

「後半、立ち上がりに上田が2点目を記録している。敵陣で南野、三笘薫がふたりでボールを奪い返したショートカウンターだった。交代出場の伊東純也からのパスを決めたものだったが、厳しい言い方をすれば、この攻撃を前半から見せるべきだった。

 率直に言って、バーレーンは弱い。選手の実力差は明らかだ。そういう相手と低調な戦いにつき合うべきではない。力の劣る相手であっても、ペースに巻き込まれることがあるからだ。

 その点で、守田が上田とのコンビネーションから決めた3点目はすばらしかった。その直後にも、守田は左からのクロスに革新的に走って、ファーで合わせていた。バーレーン戦では、守田の判断や動きは模範的だった。

 得点こそなかったが、南野も中国戦に続いて、優れた連係力を見せていた。2点目のボール奪取もそうだが、ポジショニングや判断に優れているからこそ、守備でも貢献できる。彼がいることによって、周りはプレーの選択肢を与えられているだろう」

 エチャリはあらためて遠藤、守田、南野の3人を高く評価しつつ、最後は今後の森保ジャパンにエールを送っている。

「久保は途中出場で、いくつか際立ったプレーもあったが、しっかり仲間と勝利を分かち合ったのだろうか? レアル・ソシエダでは今シーズン、途中出場でゴールを決め、祝福に来た仲間を振り払うような姿があった。はっきりと言うが、あれはあってはならない。真意はわからないが、それは集団スポーツである"サッカーの掟"のようなものに反するからだ。

 日本が強くなっているのは間違いない。ただ、大勝の時にこそ、戦いのディテールにこだわるべきだろう。さらなる成長、進化を遂げることを信じている」

    ランキングスポーツ

    前日のランキングへ

    ニュース設定