【陸上】招集所で次々にかけられた“アリガトウ” 佐藤拳太郎が1年後の世界陸上にかける思い

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2024年09月14日 07:00  日刊スポーツ

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陸上イベント「東京2025世界陸上 1 Year To Go!」に参加した佐藤拳(撮影・藤塚大輔)

来年9月開催の陸上の世界選手権東京大会まで1年となった13日、男子400メートル日本記録保持者の佐藤拳太郎(29=富士通)が大会への熱い思いを口にした。都内で行われたイベント「東京2025世界陸上 1 Year To Go!」に出席。07年大阪大会以来、3度目の自国開催となる祭典へ「絶対に成功させたい」と決意を込めた。


 ◇   ◇   ◇


「少し長くなっても大丈夫ですか?」


壇上で切り出したのは、昨年8月の世界選手権ブダペスト大会での出来事だった。予選で32年ぶりの日本新となる44秒77をマークした佐藤は、準決勝の招集所で「アリガトウ」と日本語で話しかけられた。世界記録保持者のバンニーキルク(南アフリカ)の声だった。


「コロナ禍の中で東京五輪が開催されたのは日本だからだ。ぜひ東京の世界陸上にも参加したい」


周りの海外選手からも「俺も同じことを思っていた」と言われた。気が付けば握手を交わしていた。「アリガトウ、ニッポン。アリガトウ、トウキョウ」。感謝の言葉が絶えない。一気に場が和んだ。


「こういうつながり方があるんだな。世界大会っていいな」


胸が熱くなった。それまで「出るだけで精いっぱい」と思っていた世界最高峰の舞台は、人と人とがつながっていく場でもあった。


だからこそ、東京での世界選手権に懸ける思いは強い。「いいなで終わるだけではなく、そう思ってもらえるようにしないといけない」。無観客の東京五輪から4年。次は大歓声で迎えたいと思っている。


もちろん、競技者として自らもその舞台で高みを目指す。パリ五輪の1600メートルリレーでは20年ぶりの入賞となる6位に入ったが、メダル獲得には2秒50届かず。1人あたり0・7秒以上のタイム短縮が必要で「来年まで時間がない。できることをしていこう」と気を引き締めている。個人種目では、日本人初の43秒台とメダル獲得を見据える。


「努力は惜しまない。選手として良いパフォーマンスを表現することが大前提になる。競技人生の集大成にできれば」


昨夏の招集所での言葉を胸に、熱く駆け抜けていく。【藤塚大輔】


◆佐藤拳太郎(さとう・けんたろう) 1994年(平6)11月16日、埼玉・所沢市出まれ。豊岡高で当初は天文部へ入部も、リレー要員として陸上部と兼部するようになり、本格的に競技開始。城西大を経て、14年に富士通へ入社。16年リオデジャネイロ五輪、21年東京五輪で1600メートルリレー代表。23年世界選手権400メートルで日本新記録樹立。24年パリ五輪は400メートル、1600メートルリレーに出場。自己ベストは44秒77。趣味は天体観測。身長174センチ。血液型A。

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