多重事故やVSCの波乱を経てポルシェとフェラーリが僅差の首位攻防。トヨタ4番手【WEC富士前半レポート】

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2024年09月15日 14:40  AUTOSPORT web

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3時間経過時点でレースをリードしている50号車フェラーリ499P
 無事、秋晴れのもとスタートを迎えたWEC世界耐久選手権第7戦『6 HOURS OF FUJI 2024』の決勝もスタートから3時間が経過。アクシデント多発のオープニングを経て、序盤を牽引した6号車ポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)に代わり、前に出た50号車フェラーリ499P(フェラーリAFコルセ)のアントニオ・フォコ/ミゲル・モリーナ/ニクラス・ニールセン組の2台が激しい首位攻防戦を展開。

 トップ3圏内を行く15号車BMW MハイブリッドV8(BMW MチームWRT)の背後から、TOYOTA GAZOO Racingの7号車トヨタGR010ハイブリッド(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ニック・デ・フリース組)と、8号車セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮組が追走する展開となっている。

 走行初日の金曜、そして予選日の土曜と、ここまでドライの走行機会に恵まれてきた富士のレースウイークだが、今季よりハイパーカークラスに本格参戦を開始したアルピーヌやBMW、ランボルギーニらも混じえ、各車とも性能調整の効果もあってか10数台が秒差圏内にひしめく接近戦の様相が続いてきた。

 そんななか、地元の日本ラウンドで連覇を期すTGR陣営は、2戦連続のパワーダウンと重量増加措置の厳しい足枷を課せられながらもポールポジション争いを展開。最速の座こそ2号車キャデラックVシリーズ.Rに奪われたものの、8号車が初の予選アタッカーを務めた平川の奮闘でフロントロウ2番手、代表の可夢偉がドライブした7号車が2列目4番手と、決勝に向け期待の持てるグリッド位置を確保した。

 ここまでサーキット上空に厚い雲が垂れ込めながらも、セッション中の雨を堪えていた富士だが、前日土曜の夜半から御殿場や沼津市街を中心にまとまった雨量を観測し、路面に塗り込められたラバーも洗い流され"グリーン"な状況に。これがファーストスティントのグリップやタイヤウェア(摩耗)にどう影響を及ぼすか。引き続きTGR陣営の直接的ライバルであるポルシェ・ペンスキー・モータースポーツやフェラーリAFコルセを含め、未知数のトラックコンディションのなかスタートを迎えた。

 リアルタイムで計時されるタイミングモニター上の気温は、決勝開始の午前11時を前に28℃、路面温度も37℃を超えてくる。定刻の10時55分から2周のフォーメーションラップを経て6時間の勝負が幕を開けると、アウトサイドから真っ直ぐターン1に向かったTGR艦隊に対し、インサイドから伸びた3番手スタートの15号車BMW MハイブリッドV8(BMW MチームWRT)のマルコ・ウィットマンが2番手に浮上。コカ・コーラを経て100Rでもサイド・バイ・サイドを演じた7号車GR010のマイク・コンウェイは、ヘアピンを前にコースのアウト側へ押しやられる。

 さらにトラック全域で横並びのバトルを続ける18台のハイパーカーは、集団後方で最終コーナーからコンタクトを伴いながらホームストレートを駆け抜け、2周目のTGR(ターン1)へ突入。このブレーキング勝負で4台が絡む玉突きが発生し、51号車フェラーリ499Pのアントニオ・ジョビナッツィが35号車アルピーヌA424、フェルディナンド・ハプスブルクのリヤにヒット。さらに後方から83号車フェラーリ499Pのロバート・クビサが5号車ポルシェ963のフレデリック・マコウィッキに"衝突"し、これでポルシェ963のリヤカウルが大破し、ここで早々のセーフティカー(SC)が導入される。

 このピリオド中にマシン修復へ向かったマコウィッキは最後尾へ下がり、まだSCが隊列を率いる6周目には51号車、83号車もピットレーンへとステアリングを切り、ダメージへの対応を強いられる。

 全車ミディアムを装着してスタートしたハイパーカーは、8周目到達でリスタートを迎えると、3番手を争う選手権首位の6号車ポルシェ963のローレンス・ファントールが仕掛け、ターン1から下りのターン2に掛けてクロスラインで8号車セバスチャン・ブエミと並走し前へ。出力ダウンの影響で加速で苦しいGR010ハイブリッドは、ここで4番手に後退する。

 首位を行く2号車キャデラックのアール・バンバーは10周目に1分31秒058のファステストを記録し、背後の15号車BMWと6号車ポルシェを引き離しに掛かる。一方でターン1のアクシデントで83号車のクビサには30秒ストップのペナルティが宣告される。

 トップ10圏内では63号車ランボルギーニSC63のエドアルド・モルタラと、36号車アルピーヌのミック・シューマッハーがテール・トゥ・ノーズの勝負を展開し、その前方では好調プロトン・コンペティションの99号車ポルシェ963に対し、94号車プジョー9X8で奮闘するロイック・デュバルが一閃。23周目のターン1でニール・ジャニを仕留め7番手に進出する。

 先の勝負は28周目にミックに軍配が上がり、これでアルピーヌがポイント圏内へ。さらに32周目には93号車プジョーのジャン-エリック・ベルニュも捉え、A424のストレートスピードを誇示する。

 ここでスタートから1時間が経過し、最初のルーティン作業が始まろうかというタイミングで、GT3のパックを避けるべく5号車ポルシェが先行。左のみ2輪交換でミディアムを装着し、その3周後にはペースの落ちていた63号車ランボルギーニも続いていく。

 ここから20号車BMW、12号車ハーツ・チーム・JOTAを挟んで、1時間10分を経過した43周目突入時点で、6号車ポルシェと7号車トヨタを除く上位勢が一斉にピット作業へ傾れ込む。続く44周目にはその2台もルーティンに向かい、ここで6号車が左2輪をミディアムに交換、トラックポジションをゲインして暫定首位浮上に成功。ポール獲得の立役者、アレックス・リンにスイッチした2号車キャデラックが追う展開へと変わる。

 ここで事前から「コース上にデブリ」とされていたレースコントロールの情報を受け、1時間22分経過時点でVSC(ヴァーチャル・セーフティカー)が発動。上位2台を除き、3番手にいた15号車BMW以下もふたたびピットで給油作業をし、トヨタの背後6番手にいた50号車フェラーリ499Pは、ここで4輪ミディアムを履き直す。

 その6分後にはヘアピン立ち上がりターン7での回収が長引くとの判断か、セーフティカー(SC)に切り替わりピットレーンがクローズ。首位の6号車ポルシェと2号車キャデラックは、リスタート以降背後の"数周フレッシュ"なライバルたちの追撃を覚悟する展開となる。

 56周目突入からリスタートを迎えると、やはり4輪を履き替えた効果か。58周目のターン1で8号車ブエミを刺した50号車のニクラス・ニールセンは、そのまま最終セクターまでに前方の7号車コンウェイに迫ると、続くストレートエンドで再現ビデオのようなオーバーテイクを決めて一気にTGR陣営を撃破。これで4番手へと進出して行く。

 ここから62周目に1分31秒694の自己ベストを刻んだニールセンは、同じくVSC中に右2輪のみわずかにユーズドながら4輪を交換していた15号車BMWに追いつき、2号車キャデラックを先頭とした2番手争いの輪に加わる。

■BMWとの接触でキャデラックが無念の後退

 やはりVSCの影響もあり2回目のルーティンは2時間30分経過まで伸び、この87周突入時点で首位の6号車ポルシェと2号車キャデラックがともにピットへ。ここでアンドレ・ロッテラーと再登場のバンバーにスイッチし、ともに4本交換でトラックへ復帰する。

 このタイミングで8号車ブエミが前へ出たTGR陣営は、続くラップで7号車からピットへ向かい、同じく4本とも履き替えてニック・デ・フリースがピットアウト。91周突入で入った15号車BMWは左2本のみで作業を終える。さらに2周後には同じく2本交換で済ませた50号車フェラーリに対し、同じタイミングで入ったトヨタの8号車は4輪を交換。ブレンドン・ハートレーにミドルスティントを託す。

 ここで作業時間短縮の効果で6号車の背後に迫った50号車は、94周目のターン1でロッテラーをパスし、ここで暫定首位へ。作業が一巡した段階で、上位4台の攻防と化すなか、98周目のターン1でキャデラックのインに飛び込んだ15号車BMWが接触。アウト側に弾き出され縁石をまたいで復帰したバンバーだったが、これで右フロントがバーストし、無念の緊急ピットを強いられる。

 これで後半3時間は首位50号車フェラーリ、2番手6号車ポルシェ、そして3番手BMWのトップ3に対し、TGR艦隊が実質4番手から約20秒近いギャップをどう縮めて行くかが焦点に。

 一方、LMGT3クラスでは首位を行く59号車マクラーレン720S LMGT3エボ(ユナイテッド・オートスポーツ)に対し、81号車シボレー・コルベットZ06 LMGT3.R(TFスポーツ)とアイアン・デイムスの85号車ランボルギーニ・ウラカンLMGT3エボ2が追い掛ける構図に。

 小泉洋史の82号車コルベットは序盤でトラブルを抱え、粘りのドライブを見せる木村武史の87号車レクサスRC F LMGT3(アコーディスASPチーム)は暫定7番手につけている。

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