「旧モデルとの違いを過小評価していた」大改良でリヤウイング装備も苦戦したプジョーの2024年シーズン

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2024年12月12日 18:40  AUTOSPORT web

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WECのハイパーカークラスに投入されているプジョー9X8(プジョー・トタルエナジーズ)
 プジョー・スポールのテクニカルディレクターであるオリビエ・ジャンソニは、今季2024年のWEC世界耐久選手権において、シーズン中に大幅に改良された『プジョー9X8』のスピードアップに必要な時間を過小評価していたことを認めた。

 開幕戦カタールを最後にオリジナルの9X8の特長であった“ウイングレス・コンセプト”を廃止したプジョーは、第2戦イモラから投入した改良型の9X8でも苦戦を強いられ、とくにル・マン24時間はトップ10に入ることができない苦しいレースとなった。それでもシーズン後半には進歩を見せ、第7戦富士と最終戦バーレーンで2度のトップ4入賞を果たして2024年シーズンを終えている。

 この結果、プジョーはハイパーカーのメーカー選手権で新規参入のアルピーヌとBMWに次ぐランキング6位となったが、キャデラックを上回ることには成功した。

 ジャンソニはシーズンを振り返り、プジョーが新しい9X8のポテンシャルを引き出すのに予想以上に時間がかかったことを認めた。これは床下のダウンフォースに大きく依存しタイヤの寸法が異なっていた前モデルと比べ、現行車の技術的特徴が大きく異なるためだ。

「(アップデート前後の)2台のマシンの違いと、この新しいマシンで学びなおさなければならないことを過小評価していたようで、性能を引き出すのに時間が掛かってしまった」とジャンソニはバーレーンで記者団に語った。

「我々はようやく、このクルマで抱えていた問題の解決策を見つけることができた。正直なところ、予想以上に時間が掛かった。以前のモデルからもっと多くのことを引き継げると思っていたが、実際はかなり異なっていたんだ」

「長所も短所も前のマシンとは正反対で、それをベースに開発を進めなければならなかった。最終的には、我々はこの点については少しずつ改善されてきている」

■追加のエボ・ジョーカー投入は?

 ジャンソニは以前、プジョーが2025年シーズン開幕に向けて“エボ・ジョーカー”を追加する可能性を示唆しており、10月にバルセロナで行われたテストでも、プジョーはアップデートの可能性があるパーツを評価したとみられている。

 しかし同氏は、最終的な決定は下されていないことを繰り返し、現在の状態のクルマでもプジョーの競争力を向上させる余地はまだあると考えている。

 問題を複雑にしているのは、2025年からシーズン途中にエボ・ジョーカーを投入することができなくなる可能性があることだ。つまり、2025年に改良パーツを入れたければ2月の開幕戦までにアップデートを済ませておく必要ある。

「このマシンをさまざまなサーキットで走らせることで、弱点がどこにあるのかが見えてきた」とジャンソニは語る。

「バルセロナで試したパーツもあるし、年末までトライし続けるつもりだ。パフォーマンスという面では面白いだろう。しかし、こういったことでは間違ったことも起きやすく、解決策を見つけたと思いがちだが、結局は見つかっていないこともある」

「自分が信じ、そして100パーセント確実にパフォーマンスをもたらしてくれる実質的な何かが必要なんだ。それがパフォーマンスをもたらすと確信できなければ意味がない」

 現在の9X8の最大の弱点を問われたジャンソニは次のように答えている。

「レースを通して、もっと安定したマシンが必要だ。路面コンディションやタイヤの摩耗によってクルマのバランスとパフォーマンスが変わりすぎる。今のクルマはセットアップが非常にピーキーなんだ」

「複雑なのは、これらの問題を解決する方法を理解し解決策を開発すること、そして解決策が適切に機能することを確認することだ。我々は今このプロセスの中にいる」

■2度目のトップ3フィニッシュを達成

 2024年シーズン最後のイベントとなったバーレーン8時間では、2位でフィニッシュした51号車フェラーリ499P(フェラーリAFコルセ)がレース後に降格ペナルティを受け、ミケル・イェンセン/ニコ・ミューラー/ジャン-エリック・ベルニュ組がドライブする93号車の9X8が繰り上がって3位を獲得し、2024年型の9X8での初表彰台をプジョーにもたらした。

 同トリオの93号車プジョーは前戦の富士でも表彰台にあと一歩の4位入賞を果たしており、その力強さを示している。

 ジャンソニは、バーレーンのレースはプジョーにとって改良型のマシンが投入されて以来、最高のパフォーマンスだったと考えている。

「予選ではもっとうまくやれたはずだが、決勝ではタイヤマネジメントがすべてだとわかっていた」と同氏。

「レース序盤は目標を定め、基本的に(ペース的に)ついていけないマシンにはついていかないようにしなければならなかった」

「そうすることでまだ接戦を保つことができた。レースのどの時点でも周回遅れになる危険はなく、つねにコントロールされていた。序盤は他のマシンよりもタイヤの使用量が少なかったし、ドライバーたちにもタイヤに気を配るように指示していた」

「もちろんセーフティカーのようなことを含めた運だって必要だ。だが、最初に我々がしたことをしなければ、そうしたセーフティカーの恩恵を受けることだってできなかったんだ」

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