来季2025年より100パーセント持続可能な燃料を導入するとアナウンスしているBTCCイギリス・ツーリングカー選手権だが、クリスマス休暇を前にストーブリーグにも動きがあった。
近年はチームBMWとしてFR駆動のNGTC規定モデルを走らせる名門ウエスト・サリー・レーシングは、19歳のイギリス系フィリピン人ドライバーであるダリル・デレオンとの契約をアナウンス。新王者ジェイク・ヒル(レーザー・ツール・レーシング・ウィズ・MBモータースポーツ/BMW 330e Mスポーツ)に次ぐふたり目のレギュラー発表となった。
第9戦シルバーストン、最終戦ブランズハッチと、シリーズが進める100%持続可能燃料のトライアルとして、そのサンプルカーに指定されたアンリミテッド・モータースポーツのクプラ・レオンBTCCをドライブしていた19歳は、2007年のトム-オンスロー・コール以来の最年少ドライバーとして、来季はドライバーズとメーカーの両方のタイトルを獲得したチームで『BMW 330e Mスポーツ』のステアリングを握る。
「ツーリングカーで1年間だけフルシーズンを過ごしたあと、こうしてWSRに加入してBTCC最高のチームに所属できるのは夢の実現だ。まだ信じられないよ!」と、古豪として名を馳せるトップチーム移籍の喜びを語ったデレオン。
「BTCC以前の僕のバックグラウンドは後輪駆動モデルだったから、それにふたたび乗れることに興奮している。BMWは明らかに“メガ”マシンで、2024年にドライバーズチャンピオンシップとメーカーズチャンピオンシップを制覇したことからも、それが証明されているね」
レーシングカートを皮切りにラディカルやGT3など、年齢を考慮すれば豊富な実績を積み重ねているティーンエイジャーだが、2023年中盤にチームHARDに加入して以降は、一貫して前輪駆動のレオンBTCCをドライブしてきた。
「最初の目標は表彰台を獲得することだ。また、シーズンを通してジャック・シアーズ・トロフィー(ルーキー・オブ・ザ・イヤーに相当)を獲得することを目指したい。どちらも現実的な目標だと思うし、WSRのようなチームに必要なパフォーマンスレベルまで引き上げるために、チームとともに一生懸命に取り組んでいくつもりさ」
その若手有望株を迎え入れたWSR代表のディック・ベネットも「2025年シーズンにダリルをWSRに迎えることができてとてもうれしく思う」と期待を込める。
「彼は年間を通して厳しい状況でも進化を成し遂げたことで、我々を感動させてくれた。彼は、我々のクルマやそれ以外の分野で素晴らしい成果を上げてきた多くの若いドライバーに見られるような、生来の潜在能力と決意を兼ね備えている」と続けたベネット代表。
「彼は後輪駆動車でレースをしてきた経歴があるので、すでにBTCCで勝利を収めたBMWに慣れるのに苦労することはないはずだ。彼が成長し、グリッドの先頭に立つのを手助けできるときを楽しみにしている」
■通算11勝のベテランはFF車に回帰「非常にワクワクする」
一方、今季2024年まで新王者ヒルやシリーズ4冠のコリン・ターキントンらと肩を並べてBMWをドライブしてきたアダム・モーガンは、新たにエクセラーエイト・モータースポーツへの移籍を発表。36歳のベテランは前輪駆動にスイッチし、トム・イングラム、トム・チルトンのペアとともに新生チーム・ヴェルツの『ヒョンデi30ファストバック Nパフォーマンス』をドライブする。
2013年のBTCCデビュー以降、通算11勝と42回の表彰台を獲得しているモーガンは、家族経営のシシリー・モータースポーツを経て2023年にWSRへ移籍加入。この2年間はFR駆動のNGTC規定トップモデルのステアリングを握ってきた。
「BTCCでの時間を終える前に、前輪駆動車に戻りたいとつねに感じていた。シリーズでの成功のほとんどは、メルセデスの前輪駆動車(3代目Aクラス)に乗っていたときに得たものだからね」と語ったモーガン。
「チーム・ヴェルツとヒョンデでそれを達成できることは、ドライバーの僕にとって非常にワクワクすること。なぜなら、グリッド上で間違いなく最高の前輪駆動車を持つチャンピオンシップ優勝チームに加わり、ふたりのトムという素晴らしいチームメイトと一緒にいられるからね」
エース格として君臨する2022年王者のイングラムは、今季もタイトル候補の一角として最終戦に挑み、惜しくもBMWに破れ去る結果となっていた。
「最初から競争力を発揮できるすべての要素が揃っている。パッケージ開発に取り組んでいる新しいチームに入るということではないんだ。チームとクルマの双方がどれほど強力であるかは誰もが知っているからね」と続けたモーガン。
「2025年の僕にとってもっとも重要なことは、レースに出て勝利を目指し、集団の先頭で戦うことだ」
「僕は人数を補うためにここにいるわけではないが、同時にレースを心の底から楽しみたいとも思っている。それができない理由は見当たらないよ」