キケ・ヘルナンデス ©産経新聞 FIFAワールドカップのアジア最終予選を戦っているサッカー日本代表は、史上最速で本大会出場を決めるかもしれない。3月20日(19:35キックオフ)にバーレーン代表と、3月25日(19:35キックオフ)にサウジアラビア代表との試合がいずれもホームで開催予定となっている。
今回の2試合を含めて最終予選は残り4試合なのだが、あと勝ち点3で出場権を得られる状況で、バーレーンかサウジアラビアに勝利すれば史上最速でのワールドカップ出場を決められる。
しかし、現在のスポーツニュースはMLBの東京シリーズ一色。サッカーの日本代表戦が行われることさえ知らない人も多いのかもしれない。ワールドカップ行きを決めて、野球に続いてサッカーでも盛り上がることを切に願っている。
◆大盛り上がりのMLB開幕戦と比べてしまうと…
サッカー日本代表に関して、盛況ぶりに欠けていることは否めない。前日、前々日には世界最高の選手である大谷翔平をはじめ、山本由伸や佐々木朗希が所属する世界最強の野球チームとなったドジャースが来日し、今永昇太と鈴木誠也が所属するカブスとMLBの開幕戦を戦った。スポーツニュースのみならず、ワイドショーでも連日にわたって彼らの動向を報道。日本国内はMLBに染められた週となった。
大谷翔平ほどではないにしても、サッカーも海外のトップリーグで活躍する選手らが最終予選を戦うために帰国している。しかし、その機会は年に複数回あるためか、今回のMLB開幕戦に比べると、報道される量は微々たるものとなっている。
◆競うのではなく、ともに盛り上げる姿勢が望ましい
昨年のMLB開幕戦は韓国で開催されたが、その個人視聴率は15.6%でスポーツ番組のなかで3位だった。一方のサッカーはAFCアジアカップ準々決勝のイラン戦が最も見られており、MLBの開幕戦と同じで15.6%で同率の3位だった。これを踏まえると、サッカーも同等に盛り上がってもよさそうではあるが、報道量だけを比較すると、今回は野球に軍配が上がることは濃厚だろう。ちなみに2024年の視聴率1位と2位は、箱根駅伝の復路と往路だった。
視聴率で勝敗をつけるかたちになったが、そもそも試合日程も重なっておらず、競合するものではないと個人的には考えている。むしろ、協力し合いながらスポーツ界全体が盛り上がっていくのが望ましい。
ドジャースのキケ・ヘルナンデスがアディダス社からサッカー日本代表のユニフォームをもらい、それを着て練習や会見に出てサッカーのプロモーションに一役買って出てくれた。こういったプロモーションは競技の垣根を越えて、今後も積極的に行っていってほしい。
◆競技の垣根を越えた交流には大きなメリットが
プロモーションにかぎらずチームや選手間でも積極的に交流を行い情報交換をすれば、互いの向上につながるはずだ。たとえば野球とサッカーでいえば、データの活用術は圧倒的に野球のほうがうまく活用している。もちろん、そっくりそのまま横展開はできないが、少なからずヒントは得られるはずだ。それに今となっては導入しているチームや選手も多いが、走り方を陸上選手からコーチしてもらうという取り組みも行われている。また、他競技選手の対談企画を何度か行ったことがあるが、ほとんどの選手が勉強になったという感想を持つ。
このような交流が広まればどの競技も向上へとつながり、日本スポーツ界全体をもう一段上へとレベルアップさせてくれるはずだ。
◆サッカー人気が低迷しているわけではない
これまでサッカー人気が低迷しているような話をしたが、日本代表戦においてはまだまだ野球や他競技に負けず劣らずのキラーコンテンツであることは間違いない。ワールドカップの本大会ともなれば、視聴率はワールド・ベースボール・クラシック(WBC)と同等クラスを見込める。さらに、バーレーン戦のチケットは完売している。それは6万人超を集客できる巨大なコンテンツという証なのだ。
今回予選突破すれば8大会連続での出場となり、もはや当たり前と思われがちでレア度には欠けるかもしれない。それでも今回は4年に1度しかない歓喜の瞬間を共に味わえる試合で、それはもう始まろうとしている。
大谷翔平をはじめとするメジャーリーガーもすごいが、イングランドのプレミアリーグで活躍する三笘薫や遠藤航らもすごい。ぜひ彼らが歓喜する瞬間をお見逃しないよう。
<TEXT/川原宏樹>
【川原宏樹】
スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる