最新のスマートフォンやモバイル関連技術などが所狭しと並ぶ見本市「MWC Barcelona 2025」──主にハードウェアやデバイスを中心に取材した筆者が気になった、今後のスマホ業界でトレンドになりそうな3つのトピックを紹介しよう。
●2025年は三つ折りスマホ、薄型化スマホの時代が来るか
2025年のMWCで目立ったハードウェアといえば、“薄い”スマホだった。特にTranssionグループ傘下のTECNOは、「薄型化」という意味で最も印象に残ったメーカーだ。
TECNOは三つ折りのスマホのコンセプト「PHANTOM ULTLMATE 2」と、極度に薄型化したコンセプトスマホ「SPARK Slim」の2つを展示し、メディアや業界関係者から多くの注目を集めていた。
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PHANTOM ULTIMATE 2は、同じく三つ折りの「HUAWEI Mate XT Ultimate Design」(最小時で約12.1mm)よりもさらに薄い約11mmに仕上げており、現状で最も薄い三つ折りスマホになった。
SPARK Slimも折りたたみスマホの技術を生かし、厚さ約5.75mmまで薄型化している。本体重量も約146gまで軽量化している。
折りたたみスマホにおいて薄型、軽量であることは一般のスマホと同じように使う上で最も重視される部分だ。2月には、閉じた状態での厚みが約8.93mm、展開時は約4.21mm、重量は229gという、世界最薄の折りたたみスマホ「OPPO Find N5」も登場した。
OPPOは今回のMWCに出展しなかったものの、本機種はクアルコムブースに実機展示があった。Snapdragon 8 Eliteを採用した最新機種が並ぶ中、本機種が折りたたみスマホであることに気付かない参加者もいた。8mm台となれば、実際に並べられても「言われなければ気付かない」レベルの厚さであり、これには衝撃を覚えた。
薄型を特徴とする製品においては、大手のSamsung Electronicsも発売を予告している「Galaxy S25 edge」のモックアップを展示していた。Samsung Displayのブースでは、薄型化した折りたたみスマホとして一部地域で販売している「Galaxy Z Fold Special Edition」を展示し、薄型化に力を入れていることをアピールしていた。
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今後は折りたたみスマホのさらなる薄型化、その技術を利用した薄型軽量かつ大画面のスマホが再び存在感を示すのではないかと伺わせる。MWCに並んだ機種からはそのような印象を感じた。
●話題の新型機種から目を引くコンセプトモデルまで、カメラスマホはさらに進化するのか
2025年もカメラに特化したスマホは注目すべきセグメントだ。MWC2025では、会期前日の3月2日に発表されたXiaomiフラグシップ「Xiaomi 15 Ultra」をはじめ、各社がカメラ性能を強化したフラグシップスマホを多く展示していた。
今年はズーム性能に力を入れているメーカーが多く、XiaomiとHONORのフラグシップは2億画素の望遠カメラを採用するなど、従来以上に望遠性能に力を入れた構成になっている。
ミッドレンジの価格帯でもカメラ性能を強化したスマホが現れており、nubia Focus 2 UltraやTECNO CAMON40 Proといった日本円で5〜7万円クラスの機種も存在感を示している。
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その中でもTECNOの「CAMON 40 Pro 5G」は、MWC2025会期内に行われた発表会にて、カメラ性能の評価機関として著名なDXO Markのフレデリック・ギシャールCEOが登壇し、「500ドル以下の機種中では最もスコアが高く、安くてもカメラ性能が高い機種」としてアピールしていた。
これ以外にXiaomiとrealmeは、カメラに特化したスマホのコンセプトモデルも公開していた。両社ともアプローチこそ異なるものの、レンズを外付けすることで画質向上を図った製品だ。これらのコンセプトモデルは、スマホのカメラ性能強化における新しい可能性を示してくれた。
Xiaomiが展示したコンセプトは「Xiaomi Modular Optical System」というもので、スマホ本体にマグネット端子で外付けのレンズが装着できるものだ。本機種はレンズ側にカメラの基本的なハードウェアが全て備わっており、オートフォーカスや絞り制御をできる。制御は接続したスマホ側で行う。
これは別売のデジタルカメラを、別途スマホに装着したようなものと思ってもらうとイメージがつかみやすい。
realmeが展示したコンセプトは「realme Interchangeable-lens Concept」というもので、こちらはズーム性能向上を目的として、スマホに専用のマウンターを装備してレンズを交換できるものだ。
本機種は むき出しのイメージセンサーに外付けのレンズを取り付けるため、スマホとレンズ交換式カメラを組み合わせたものとなる。
Xiaomiのコンセプトは完成度も高く、特別な設定不要で使える実用性も備えている。正直、そのまま商品化できるレベルのクオリティーの製品であり、スマホのカメラ性能向上を助けるアイテムとして非常に優位な存在だと感じた。
realmeのコンセプトは実用性では劣るものの、カメラ画質を向上させる正攻法を見せてきた。筆者としてはロマンあふれるこちらの商品の方が好みだった。
これ以外にはTECNOも二軸ペリスコープ望遠カメラのコンセプトモデルを展示していた。通常のものに比べてチルト撮影も可能なことで、手ブレも抑えられるという。
カメラスマホについては今後も進化が著しいと思われるが、以前ほどの大きな伸びしろはないと思われる。そのような意味では、Xiaomiが示したコンセプトのような飛び道具的な外付けアイテムが出てくることも十分考えられる。
もっとも、前述のような薄型や軽量化がスマホのハードウェアにおけるトレンドの最先端となれば、カメラ機能は外付けのモジュールを使って強化する方針になることも十分あり得る。スマホのカメラはどのような方向に進んでいくのか、筆者もアンテナを高く伸ばして追い続けたい。
●2025年は真の意味で「AIスマホ元年」になるか
MWC2025の会場を巡ってみて感じたのは、2025年は真の意味でAIスマホ元年になるということだ。
もちろん、スマホにおけるAIを用いたサービスは今に始まった訳ではなく、テキスト生成や画像生成、文字起こしや翻訳機能といった機能はすでに多くの機種で利用できる。
これらの機能はメーカーの独自機能として動作するもので、他のアプリやサービスに連携したりすることはできなかった。あくまでスマホ内、自社サービス内で完結するAIであった。これが自社内に限らず、さまざまなアプリやサービスと連携して「あらゆるものをつなげるAIスマホ」が真の意味でのAIスマホと筆者は考える。
GoogleのAIサービスである「Gemini」が万能そうに見える場面もあるが、これもあくまでGoogleアプリ間でのみ動作するAIだ。YouTubeの内容を要約したり、Google検索を用いた膨大なデータと連携できるものの、Geminiに指示を出して直接Instagramに投稿したり、タクシーを呼んだり、飛行機を予約することはできない。
そんなAIスマホもさまざまなアプリと連携できなければ、もはや旧世代のスマホになってしまうと感じた。
特にiPhoneなどで利用できるApple Intelligenceがさまざまなアプリと連携できることをアピールするなど、この分野での進化は今後1〜2年で加速的に進むと考える。
これに先行してSamsung ElectronicsのGalaxyでは、自社アプリとGoogle Geminiを接続できるようになった。この流れにHONORやXiaomiも追従しており、自社アプリの機能をGoogleアプリと連携させて、組み合わせて使うことができるようになってきた。
そのような状況を踏まえ、驚いたのがZTEのAIアシスタントだ。ここでは音声で指示を出したのち、「bookingアプリを起動してMWC会場近くのホテルを予約する」「会場から空港までのタクシーを予約する」「「ギャラリーアプリ内に保存してある画像をSNSに投稿文とタグを付けて投稿する」といったデモを行っていた。
内容を要約して表示するだけではなく、対象となるアプリを起動し、そのアプリ内で目的地を入力する。利用者は決定ボタンを押すか否かというところまで進めてくれる。これは中国で利用できる高度なアプリ連携がグローバルでも利用できる様子を示したものだ。AIアシスタントが目指す最も進んだ形が見えてきた。
●MWC Barcelona 2025を振り返って
筆者はMWC Barcelona 2025にて主にデバイスを中心に見て回ったが、カメラスマホは新機種はもちろん、専用のコンセプトモデルが出展されるなど、ハードウェアへの関心の高さは健在だった。
今回は三つ折りスマホをはじめとした折りたたみスマホから派生した「薄型軽量化」の部分にもフォーカスが当たっていた。特にTECNOの技術力の高さは販売されていない地域のメディアや関係者も驚きの表情だったように思う。
これから薄型スマホが主流になると断言できないが、従来よりもバッテリーの高密度化によって、薄くても大容量のバッテリーを搭載できるようになったことは大きな進展要素でもある。薄型軽量でも、今ならバッテリー性能を妥協しない実用的なデバイスの開発が可能となっており、今後の製品発表にも期待したいところだ。
Xiaomiやrealmeが展示した外付けレンズで高画質化を目指すコンセプトモデルは、物理的に制約の大きい機種でもカメラ機能を強化できるアプローチの1つと考えられる。
特に薄型軽量化が進む折りたたみのスマホにおいて、カメラ性能を強化する課題は薄型化とは相反する。これを両立することは難しく、カメラ外付け化の未来も十分に理解できる。
AIスマホについては、さまざまなアプリやサービスとAIが接続できるようになることで、スマホの使い方が大きく変わってくることになる。さまざまなアプリと連携できるAI機能が利用できるか否かという点が、今後のスマートフォンを選ぶ上で重要なポイントになるはずだ。
面倒な航空機の予約、慣れない海外のカフェでのアプリ注文、初めてのUberのピックアップ、日常のSNS投稿──スマホのAIがさまざまなアプリとつながることで、誰でも簡単に利用できる時代になる。
この機能が使えるか否かで、同じ「AIスマホ」でも明確に差が生まれてしまうだろう。最も分かりやすいものはiPhoneであり、この1年でApple Intelligence対応機種を一気に増やし、廉価なiPhoneもiPhone 16eとするなど従来とは明確に差別化を図った。
これはAndroid陣営でも同じことがいえるはずだ。AIの機能を使うにはハードウェアもある程度は高い性能が求められてくる。製品を問わず“Androidで使えるAI”が浸透するには、もう少し時間がかかりそうだ。
2025年はどのようにスマホが進化していくのか、引き続き注目していきたい。
●著者プロフィール
佐藤颯
生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。
・X:https://twitter.com/Hayaponlog
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