介護費用の自己負担を減らす「介護保険負担限度額認定制度」と「世帯分離」とは?専門家が解説

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2025年05月15日 11:10  web女性自身

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「今年4月から認知症の母が入所する特養(特別養護老人ホーム)の食費が1日あたり280円値上がりしました。



年間だと10万円以上の負担増。先の見えない介護で金銭面の不安が大きいです」



そう語るのは、東京都杉並区在住の主婦A子さん(56)。



今や値上げのニュースには驚かないが、介護施設の食費の値上げは聞き捨てならない。



淑徳大学の結城康博教授(社会福祉学部)がこう解説する。



「介護保険サービスには、医療における自己負担額の上限がある高額療養費制度と同様に、特養などの介護保険施設を利用した際に、1カ月間に支払った負担額が上限額を超えると、その上限額を超えた分が払い戻される『高額介護サービス費制度』があります。



その費用は、入浴や排せつなどの介護サービスを受けるためのもの。



居住費や食費は保険が適用されず、全額自己負担になります。



その一方で、居住費や食費について、所得や預貯金などの資産が少ない人を対象に一部を補助(補足給付)するのが『介護保険負担限度額認定制度』です」



A子さんの母が入所する特養での食費の値上げ分は全額自己負担のようだ。





■物価高が続くなか介護保険負担限度認定証制度の申請を考えよう



そもそも介護保険負担限度額認定制度とは、どのような制度なのだろうか?



「原則、住民税非課税の人が対象です。たとえば単身で年金などによる年収が80万〜120万円、預貯金が550万円以下だと、食費は1日650円、ユニット型の個室の居住費は1日1,370円が負担額の上限に。



厚生労働省が示す基準自己負担額(第4段階)である、食費1日1,445円、居住費1日2,066円(ユニット型個室)と比べても割安になります」(結城先生)



この介護保険負担限度額認定制度を利用するためには、自治体の介護保険担当窓口に申請書や預貯金通帳の写しなどを提出。



収入状況や預貯金額によって認定証が交付される。5段階に分けられるそれぞれの条件は表を確認してみて。



結城先生がこう続ける。



「この物価高で介護保険施設は危機的な状況が続いています。



というのも、ほとんどの施設は給食を委託しており、食材費や人件費が値上がりするなか委託料も高騰しているからです。



低所得者の食費の負担限度額を上げるわけにはいかず、一定の所得や資産がある第4段階の人の食費を値上げせざるをえないのです。



この物価高が続くなか、まだ認定証の手続きをしていない人は、申請を考えてみたらどうでしょう」



物価の高騰とともに膨れあがる介護費用。



そこで自己防衛術として注目されているのが世帯分離だ。



「お金と福祉の勉強会」代表の太田哲二さんが語る。



「世帯分離は、住民票に登録されている一つの世帯を2つに分けること。



ひとつの屋根の下に住んでいてもできます。



とくに低所得の親が、ある程度年収がある子の扶養に入って、一つの世帯になっている場合には、世帯分離が大きな威力を発揮します」



たとえば、父親が亡くなり、母親と子夫婦が一緒に住んでいるケースで世帯分離の仕組みを見てみよう。



母親の収入が年金だけで80万円未満の場合、世帯分離をして、母親一人世帯にするだけで、母親は住民税非課税世帯に。



介護保険料の支払い額が年65,280円から、年21,960円と大きく減る。



太田さんがこう続ける。



「さらには高額介護サービス費の上限額は、所得に応じて分かれていますが、利用者本人だけでなく同居の家族の収入も含めた世帯全体の所得。



世帯を分けることで、親の収入は年金だけなので、上限は44,400円から15,000円に抑えられます。



かりに月35万円分の介護サービスを受けたら、自己負担額は35,000円から15,000円に下がるのです。



また介護保険負担限度額認定制度においても、世帯分離を行うことで、母親は第4段階から第2段階になります。



介護保険施設での食費の負担限度額が1日1,445円から390円、居住費が2,066円から880円になり、月約7万円も自己負担額が軽くなるのです」





■世帯分離のメリットとデメリットを見極めるのも重要



ちなみに世帯分離の申請は居住地の自治体窓口で「世帯分離をしたい」と相談し、届け出の書類「世帯変更届」「住民異動届」などを提出するだけでOKだ。



実は、冒頭のA子さんは、母親と同一世帯。A子さんの夫の収入により、母親は介護保険負担限度額認定制度では第4段階になっていたのだ。



「親が介護福祉施設に入所すれば当然世帯が分かれるので世帯分離になるはずですが、誰にも教えられないまま同一世帯でいて、高い介護サービス料を支払っている人も少なくありません。



“親を見捨てられない”“家族の縁は切れない”と考えて世帯分離をしない人もいますが、世帯分離は生計を異にしていれば世帯は別ということ。



親子の縁を切るわけではありません」(太田さん)



もちろん、世帯を同一にして親を子どもの扶養に入れることで、医療費控除や扶養控除が受けられたり、勤務先から支給される家族手当が受け取れたりするなどのメリットがあることも忘れないでほしい。



「低収入の人同士の世帯分離をする際には注意が必要。収入は世帯で合算するので、世帯分離前は1人あたりの収入が少なく住民税非課税世帯だったのに、世帯を分けたことにより片方が課税世帯になってしまい、介護保険料や医療費の負担が増える可能性もあります」(太田さん)



世帯分離のメリットとデメリットを見極め、介護保険負担限度額認定制度を効果的に活用しよう。

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