新原泰佑、世界初ミュージカル化「梨泰院クラス」に挑む「これは1つの総合芸術」【インタビュー】

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2025年05月16日 08:10  エンタメOVO

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新原泰佑 (C)エンタメOVO

 世界中で大ヒットを記録した「梨泰院クラス」が、初めてミュージカル化される。主人公のパク・セロイを演じるのは小瀧望。日本・韓国・アメリカのクリエーターが集結し、さまざまな人種が混じり合う自由な街・梨泰院で権力格差や理不尽な出来事に立ち向かうセロイの姿を描き出す。セロイと対立するグンウォンの弟で、セロイのもとで働くグンスを演じる新原泰佑に、公演への意気込みや役作りについてなどを聞いた。




−出演が決まったときの率直な感想は?

 「梨泰院クラス」が大きな話題となっていたことを知っていたので、ミュージカル化すると聞いたときは驚きましたし、キャスティングしていただきとてもうれしかったです。改めて、ドラマを見返してみると、僕のキャラクター性がグンスという役にハマったのかなと感じています。今からどんなプランで演じようか、ワクワクしています。

−グンスという役柄には、自分でも近いところがあると感じているのですね。

 そうですね、二面性なところがあるのは似ているのかもしれません。例えば僕は陽のテンションのときと陰のテンションのときがあります。僕自身はそんな自分も好きなのですが、その二面性が結構、極端なんですよ(苦笑)。形は違えど、グンスも普段は人に見せない一面があったり、心の中にうごめいているものがあったりすると思うので、自分なりに精いっぱい向き合っていきたいと思います。

−演じる上でどんなところを意識したいですか。

 物語の途中から、みんなで組んだ枠組みを僕が一蹴りで壊して、ブーストをかけないといけない役なので、そこまでにどう積み立てていくかが大事だと思っています。みんなで組み上げるものの綿密さと、一蹴りのパワーの対比を丁寧に表現したいです。

−舞台という限られた時間の中で、この壮大な物語を作り上げていくというのは、演じる上でも大変なところがあるのでは?

 今回の舞台では原作の漫画をギュッと濃縮してお届けしなければなりません。そのお話をどうするのかは脚本家さんをはじめとしたスタッフの皆さんが作り上げてくださると思うので、われわれにできることは、そこに描かれていない時間をいかに自分の中で構築して表現するかだと思います。キャストの皆さんとそうしたことを共有して作り上げていければと思います。

−原作を読んだり、ドラマを見て、新原さんはこの物語のどんなところに魅力を感じていますか。

 僕は韓国ドラマを見たのが、この作品が初めてだったんです。なので、最初の感想は、日本のドラマとこんなにも違うんだというのが第一印象です。単純に言ってしまえば、制作にお金と時間がすごくかかっている。そして、クオリティーも熱意も高い。梨泰院という活気あふれる街を舞台に、日本とはまた違う熱さを持った若者たちが出てきて繰り広げられる物語は、韓国らしさにあふれているなと思いました。自分と同年代の若者たちの話ですが、すごく大人びているように感じましたし、共感したというよりは感心したという気持ちが強かったです。緻密に計算された伏線の回収の仕方もすばらしく、舞台上で自分はどう演じればいいのか、とても悩んでいるところです。

 ただ、僕は原作のある作品に出演するのが好きなんですよ。ドラマでも漫画原作の作品に出演させていただいていますが、原作を踏襲したいという気持ちが強いのでとても楽しく演じています。今回も舞台を見て原作を初めて知る方も、ドラマを好きな方も、ドラマを見ていない方も、全員に受け入れてもらえるようなものにしたいです。自分でもそれがすごく欲張りなことだと思っていますが、でも、それを出したい。今回も、演出の小山ゆうなさんがきっと僕が持っているものを一度バラバラにして、再構築してくれるのではないかと楽しみにしています。

−ドラマ化が大ヒットを記録したこの作品をミュージカル化することにはどのような思いがありますか。

 この作品をミュージカルにするのは、すごくハードルが高いのではないかと思ったので、驚きました。ストレートプレーで上演した方が、もっとダイレクトに言葉を伝えられると思っていました。ですが、楽曲を聞いてみると、これは1つの総合芸術として成り立っているものなんだと。アートで演劇的。ミュージカルでしか見せられないものになるのではないかと思います。

−主人公のセロイを演じる小瀧さんの印象は?

 小瀧さんは読売演劇大賞の杉村春子賞を数年前に受賞されていて、僕の先輩です。先輩にたくさんのことを学ばせていただきたいです。すごく熱意のある方なので、パク・セロイとして引っ張っていただきつつ、少しでも僕も支えられるように頑張りたいなって思っています。

−今、お話がありましたが、新原さんも第32回読売演劇大賞の杉村春子賞を受賞されました。受賞したお気持ちを聞かせてください。

 「インヘリタンス-継承-」と「球体の球体」の2作で受賞させていただきましたが、この2作は、自分の人生を大きく変えた作品だったので、その結果として賞をいただけたことがすごくうれしいです。自分の芝居の世界観や芝居へのアプローチの仕方、役との向き合い方を改めて教えていただきました。向き合い方の可能性もまた与えていただいた2作だったので、すごくうれしかったです。

−そうした2作を通して、舞台に出演することの面白さや舞台でのお芝居の楽しさに変化はありましたか。

 これまではせりふを口にして、その感情になって、放出することで精いっぱいでしたが、役を演じながらも、全く違うことを考えている瞬間が生まれるようになりました。例えば「お腹が空いたな」というような他愛もないことも考えます。でも、それこそが役を生きることの正解に近いのではないかと思います。演劇は、突出した感情をつまみ上げてピックアップしたものを羅列しているので、いろいろな感情を持っているように見えます。でも、そうではない感情だってあるんです。どうでもいい思考が生まれるくらい余裕を持って生きられるようになったからこそ、芝居をすることがより楽しく思えるようになったと思います。きっと緊張感は持ちつつ必死さがなくなったのだと思います。「インヘリタンス」のような長い演劇だと、公演中にどこかしら、誰かしら何かが起きるんです。せりふを飛ばしてしまったり、アクシデントが絶対に起きるので、そうしたときにも対応できるような余裕を持てるようになってきました。

−ずっと気を張り続けることはできないですよね。

 難しいですね。それに、気を張り続けていてもいいことがない。僕は、気が張っていると、自分のペースを乱されることにフラストレーションを覚えてしまうタイプなので。余裕を持つようにしています。

−舞台だけでなく、ドラマなどの映像作品でも活躍されていますが、今、俳優としては目標や夢は?

 映像も舞台もどちらもやりたい。それはいつも考えています。やっぱり映像と舞台はアプローチの仕方がまったく違うので、両方から学んだことを両方で生かしていけたらと思います。どちらか片方のアプローチしか持っていないのは嫌なんです。僕は欲張りなので、どちらも食べていきたい。ずっとどちらもつまみ食いしながら生きていきたいので、それをしながら、可能性をどんどん広げていきたいと思っています。

−公演に向けての意気込みと読者へのメッセージを。

 世界的に有名な作品の世界初ミュージカル化、そして日本のみならずさまざまな国のクリエーターの皆さんが携わっているこの作品に出演できることをとても光栄に思っています。原作を見た方も、ドラマを見た方も、そうでない方も、皆さんがこのミュージカル「梨泰院クラス」を思う存分楽しんでいただけるように稽古を重ね、劇場でお待ちしております。見ないと損をすると思います。そうした作品をお届けできるよう頑張ります。

(取材・文・写真/嶋田真己)

 ミュージカル「梨泰院クラス」は、6月9日〜30日に都内・東京建物 Brillia HALLほか、大阪、愛知で上演。


ミュージカル「梨泰院クラス」

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