14番手から、ピット作戦を的中させて一気に逆転したストフェル・バンドーン(マセラティMSGレーシング)
5月17日、東京・有明の東京ビッグサイト周辺で行われた2024/25年フォーミュラE第8戦東京E-Prixで、優勝したストフェル・バンドーン(マセラティMSGレーシング)と、2位オリバー・ローランド(ニッサン・フォーミュラEチーム)、3位テイラー・バーナード(ネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム)の3人がレース後に記者会見に出席し、それぞれがレースを振り返った。
また、会見のあとには全選手が出席する囲み会見も実施され、autosport webではニッサン・フォーミュラEチームのノルマン・ナトに取材。3番グリッドからのスタートだったものの、ペースに苦しんで順位を下げた理由を尋ねた。
■優勝 ストフェル・バンドーン(マセラティMSGレーシング)
シーズン8モナコE-Prix以来の優勝を飾ったバンドーン。FP2のリザルトによって14番手から決勝をスタートしたが、序盤でただひとりピットブーストを行う戦略を敢行し、その後のレース展開も味方につけて見事逆転勝利を掴んだ。
「本当に久しぶりの勝利で、とても良い気持ちだ。実は、早めのピットブーストは最初から計画していたものなんだ。ある意味のギャンブル的な要素はあったが、エネルギーを早々に消費して確実に実行することができた」
「その後はラッキーな部分もあって、赤旗が出たことで良いポジションを得ることができたね」
これで、マセラティは2024年の東京大会に続く2連勝を飾った。バンドーンは今回の勝利を「報われるべき勝利」と評し、チームの働きを讃えた。
「まだチーム全員とは会っていないが、とても興奮しているはずだ。レース中は作戦の面でエンジニアとも多くのコミュニケーションを取っていたし、本当にみんなエキサイティングなメンバーだよ」
「フォーミュラEで戦っていれば、ラッキーな日もあるしアンラッキーな日もある。今日はとてもラッキーな日であって、チームの皆も報われるべき勝利だ。東京では昨年も良い成績を収めることができたし、明日もまた良い成績で終えられたらと思うよ」
■2位 オリバー・ローランド(ニッサン・フォーミュラEチーム)
2連覇のマセラティと対照的に、2年連続2位表彰台獲得となったローランド。その悔しさは表情に現れていたものの、言葉の上ではチャンピオンシップのリードを広げる大量ポイント獲得を喜ぶにとどめた。
「第8戦は、良いプランを確実に実行できたと思っている。FP2のタイムでグリッドが決まったことも読んでいたこともうまくいったし、その狙いが自分たちのチームだけだったようなので、運の良さもあったと言えるよ」
「レース前半は、後続にギャップを作る良いペースで走れたので、さらに良い結果求めることもできたと感じたし、今日はポイントの面でとても良い成績を収めることができたので、『2位でも構わない』といった気分だよ」
これでローランドは、ドライバーズ選手権2位のアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム)に対し、60ポイントのリードを築くことに成功。シーズン半ばとしては驚異的な差を築いた。
「シーズン半ばでこれだけのポイントリードを持っているというのは、本当に夢のようだ。速いクルマを持っていて、良い作戦を確実に実行できているからこその結果だと思う。これを継続して、今後3〜4レースでも続けることができれば、残りのレースはリラックスして挑めるのかもしれないね」
その後、ニッサン・フォーミュラEチームでは、東京E-Prixで勝てば神戸ビーフのご褒美があるとの話も飛び出した。「2位表彰台では食べられないの?」との問いに、ローランドは「これじゃまだ駄目だね」とひと言返した。
■3位 テイラー・バーナード(ネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム)
すでに表彰台を複数回獲得するなど、ルーキーながらも驚異的な速さを度々見せているバーナード。第8戦も4番手スタートから、東京E-Prixを得意とするエドアルド・モルタラ(マヒンドラ・レーシング)や、好調ニッサン・フォーミュラEチームのノルマン・ナトをパスし、3位表彰台を獲得した。
「またポディウムに戻ってこれたことは、とても嬉しい。そして、15ポイントを得ることができたのは、本当に満足だ。昨日起こったこと(FP1でクラッシュ)を含めると、FP2でペースを取り戻すことができたのも良かった。予選がキャンセルになったことや4番手スタートであったことも含めて、多くのことが噛み合ったと思うよ」
GEN3 EVOも含めてフォーミュラEの経験が少ないバーナードにとって、雨のレースはどうだった? との問いには、「ただマシンをコース上にとどめることに努めたよ」とコメントし、次のように続けた。
「高いペースを維持すること自体が非常に困難だった。マシンはまるでナイフエッジの上を走っているようだった。そしてもちろん、濡れた路面でもう一度ピットストップを行うのも難しい。これらの課題をすべてを問題なくこなせたことは、素晴らしいことだね」
終盤には、ローランドと僅差の2番手争いを繰り広げたが、オーバーテイクには至らなかった。バーナードにとってローランドは、幼いころのカートキャリアから面倒を見てもらっていた恩人でもあるが、攻め切れなかったのは、ローランドがメンターだったからか、と質問が飛んだ。
「いや、絶対に違う(笑)。ローランドを抜くために、あらゆる手を尽くしたよ。このコースは追い越すのがそもそも難しいんだ。とくにレース序盤、ポジションが上位ならばなおさらだ。雨が降っていたことも踏まえて、リスクを計算しながら走るうえで、オーバーテイクができなかったんだ。もっと早く彼に近づけていたら、間違いなく仕掛けただろうね」
■番外編:15位 ノルマン・ナト(ニッサン・フォーミュラEチーム)
予選3番手からスタートしたノルマン・ナト(ニッサン・フォーミュラEチーム)だったが、スタート直後に順位を下げると、そのままペースが上げられず、徐々に順位を下げていく展開で、結果的に15位に終わってしまった。
「何が起こったのか、まだ理解し切れていない。今朝はウエットコンディションで本当に速かったし、FPで3番手タイムを出していたのに、午後のレース腕はラップごとにコンマ4秒近くロスした」
「ひとつだけ小さなミスがあったのだが、それは今は言えない。もしかしたら、ペースに苦しんだ理由ではないかもしれないからね。だから、今日の苦戦は何とも言えない。週末の初めから良いポジションにつけてきたのに、それが報われなかったのは本当に残念だ」
「ただ、明日の第9戦はかなり暑くなるはずだ。ドライコンディションのFP1でも我々は速かった。他の誰よりもコンマ2秒近く速かった。明日こそは、状況を好転させるべく挑戦するよ」
[オートスポーツweb 2025年05月17日]