今季初優勝を飾ったVANTELIN TEAM TOM’Sの坪井翔:中央、野尻智紀(TEAM MUGEN):左、山下健太(KONDO RACING):右/2025スーパーフォーミュラ第5戦オートポリス 5月18日、大分県のオートポリスで、2025年の全日本スーパーフォーミュラ選手権第5戦が行われ、VANTELIN TEAM TOM’Sの坪井翔が今季初優勝を飾った。2位表彰台にはポールポジションからスタートした野尻智紀(TEAM MUGEN)、3位には同じく予選でフロントローを獲得した山下健太(KONDO RACING)が入り、両者は今季初表彰台を獲得した。3名は決勝後に行われた記者会見に臨んだ。この会見には優勝チームの監督である舘信秀チーム監督も出席し、それぞれが決勝レースを振り返った。
■坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)予選:5番手 決勝:優勝
「スタートが決まったことが今日のハイライトかなと。過去に記憶にないくらいの良いスタートを切れました。1コーナーでロックしかけたのでぶつかると思ったのですが、ヤマケン(山下)もロックしていたので、幸いぶつからずに済んで2番手に上がれたのは大きかったかなと思います」
「でも、MUGENの2台に対しての速さはありませんでした。野尻選手にはジリジリ離されていくし、岩佐(歩夢)選手(TEAM MUGEN)はマネジメントしているのかなと感じていました。今日のレースは良くて2位か3位かなという状況だったので、岩佐選手のアクシデントには正直助けられた部分もあります」
「ピットインのタイミングは、精査する必要があると感じています。とはいえ、レースを戦い切って、若干ペースがないなかでも優勝できたということは、シーズンを考えると大事なことですしとてもいいレースができたと思います」
──ピットのタイミングが野尻選手と同じでした。
「野尻選手に合わせたというより、岩佐選手をカバーしにいったタイミングが一緒でした」
「どちらかというと岩佐選手を見ていて、(チームが)その前に出れるタイミングを探っていたと思います。僕が抑え切れなかった部分はもう少し頑張れたのかなと思いつつも、(岩佐を)カバーしに行って、それができなかったというのは自分自身もチームも悔しさとして残っています」
──トヨタのエースとして、ディフェンディングチャンピオンとしての今季初優勝の感想は?
「トヨタ陣営としては、やられっぱなしだったので、(優勝できて)ホッとしてます。早めに勝たないとシーズン途中で選手権を戦う権利が無くなってしまうような勢いがダンディライアンにありました。とはいえ、ここで流れが変わったのかなとも」
「次の富士ラウンドは、前のように上手くいくかは分かりませんけど昨シーズンの優勝はポジティブな要素ですし、ここから巻き返していけるようにチームと一緒に頑張りたいです」
──20代最後のスーパーフォーミュラのレースで優勝し、これから30代に突入していきますが、その意気込みを聞かせてください。
「(30代になることは)全然嬉しくない(笑)。でも、20代最後のレースでしっかり優勝で締めくくれました。20代前半のころは、30歳をまあまあベテランの域だと見ていましたが、自分がその立ち位置になると若干嬉しくないですし、もっと頑張らければ生き残れないと日々感じています。しっかりこの場に残れるよう、若手に負けないよう頑張っていきたいと思います」
──各カテゴリーでタイトルを獲得した、ご自身の20代をどのように総括しますか?
「完璧ですね(笑)。本当に順調でした。ドライバーである以上、これまでいろいろなことがありました。ずっと良かった訳ではないですし、苦しい時間の方が長かった気がしますが、結果を見てみれば良かったことがたくさんあって、非常に良い20代を過ごせたと思います。30代も舘さんに面倒見てもらいたいなと思います」(※この発言の直前に舘氏に電話がかかってきて一時離席してしまい、場内爆笑)
■野尻智紀(TEAM MUGEN)予選:ポールポジション 決勝:2位
「率直にすごく悔しいです。勝てる可能性が高いレースを落としたということが大きいです」
「予選でフロントウイングを壊したため、決勝では違うウイングを使いました。ウイングなどは個体差によって空力の出方も変わりますし、20分間のウォームアップをその合わせ込みに費やしたことで、実績のあるセットアップで行かざるを得ませんでした」
「自分から後手に回り、悪い流れを作ってしまったことは、反省しなければいけません」
「ただ、個体差による違いがあるなかでも上手く合わせ込みをしてくれたのでエンジニアさんに感謝ですね。自分が蒔いた種でもありますし、それが無ければもう少しいいペースも目指せた可能性もあるだけに大きな悔しさがあります」
「レースもカムバックできないままでした。勝てるレースを勝っていかないと選手権というものは見えてきません。自分自身でも反省していますし、ピットインもより良いタイミングがあったと感じています。ドライバーとしてもチームとしても総合的に強くなれるチャンスはあると思うので、次のレースを頑張らないといけません」
──決勝では本来違うセットアップにしたかったのでしょうか?
「そうですね。思いの外、エアロバランスが変わっていたので、それに対して今までのセットアップの方が合うのではと。端的にいうとすごく固いセットアップだったこともあり、アウトラップも自信がありませんでした。柔らかい方向に振りたかったのですが、それが出来ずにアウトラップも苦労した感じがあります」
「前回のもてぎラウンドでは苦戦を強いられていましたが、表彰台に戻ってこれました。次戦までに富士テストも挟みます。その先のレースに向けてポジティブな結果を残して、なんとかテストまで耐え凌げたなと思います」
──チェッカー後の無線では「いいものが見つかった」とチーム側と話されてました。
「ずっと15号車と16号車の間にトラクションなどの異なる部分がありました。順位こそ似ていることが多いですけども、特にレースでは違う動きをしていて、セットアップ以外が原因で起きている印象でしたし、乗り比べた時も結構違うなという印象がありました」
「セットアップというのは多岐に渡りますが、エンジニアだけでなくメカニックも含めてどう仕立てるかなど、一歩進んだのかもしれないなと感じています。その答え合わせは富士テストでやろうと思っています」
■山下健太(KONDO RACING)予選:2番手 決勝:3位
「3位で良かったという気持ちの方が強いです。スーパーフォーミュラのトップは近いようでとても遠いのはとても分かっているつもりなので、3位で良かったと思いました」
「スタートの動き出しは悪くなかったのですが、坪井選手にイン側へ入られそうになって頑張った結果、フロントがロックしてしまい、1コーナーではみ出そうになったところからレースが始まりました」
「フロントのウォームアップがとても悪く、前の3台には逃げられて、自分を起点に渋滞が起きてしまいました。KCMGの2台に強引な感じ(で抑えること)になってしまったところは少し申し訳ないです」
「(タイヤが)温まってからのペースは良くもなく悪くもなく。いつピットインするかを迷い、ペースがあまりないと気付いた時には最適なタイミングを逃していて、引っ張るしかありませんでした。結果的に運良くSCが入ってくれたので、5番手で復帰できました」
「序盤にピットインした牧野(任祐)選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)は、タイヤが苦しそうですぐに抜くことができました。でもトップ3台に追いつけず、大きな違いを感じました」
──週末を通しての流れなど振り返ってみて、いかがでしたか?
「多くの部分で運が良かったと思っています。全然レースと関係ありませんが、ホテルの暗証番号が自分の誕生日(8月3日)と同じだったんですね。予選タイムの下3桁も803で、『今週イケてる?』って思ったんです(笑)。ちょっと下らないけれど、実際にレースでも運が巡ってきましたし、あまり不思議な力を信じないタイプですが、そういうことがあるのかなと思いました」
──トップチームを追いかける立場として、後半戦に向けての展望は?
「同じ場に居ますが、前2台とはものすごい大きな差を感じていますし、簡単には追いつけないと思います。富士テストでは方向性を見るためにいろいろなテストを予定していますが、優勝にはまだ程遠いですね」
■舘信秀チーム監督(VANTELIN TEAM TOM’S)
「(今シーズンは、)ここまで勝つことができず、昨年のチャンピオンということで私自身もプレッシャーがありました。早く勝てばいいなと思いましたけども、一度勝つと(この先も)いいんじゃないかと思っていたので、今日の優勝は大変いい勝ち方だと思いますね」
──土曜日は悪天候で走行キャンセルとなり、フリー走行がないまま予選と決勝を迎えましたが、レースペースなどの手応えがありましたか?
「初めから割と調子が良かったと思います。レースはスタートで決めてくれたのが勝因じゃないかなと」
──富士テストを経て、得意としている夏の富士の連戦が待っています。TOM’Sの逆襲が始まるのでは、との期待が持たれてますが、いかがでしょうか?
「昨年もそんな感じで、富士で優勝してからの調子が良かったので、(今年も)それを期待しています」
[オートスポーツweb 2025年05月18日]