画像提供:マイナビニュースNTT東日本は、神奈川県三浦半島に位置する横須賀市、鎌倉市、逗子市、三浦市、葉山町(以下「三浦半島4市1町」)と、半島地域特有の災害リスクに対応し、半島全体で災害に強い地域づくりを推進することを目的とした防災連携協定「三浦半島4市1町における災害に強い地域づくりに関する協定」を2025年5月21日(水)に締結した。
本協定は、三浦半島4市1町が掲げる「三浦半島に暮らす市民・町民の皆さんの安心な生活の実現」をめざし、災害時の孤立リスクなど半島地域特有の課題に官民連携で取り組む協定。JCTや先端技術を活用して三浦半島4市1町の地域防災の高度化を図るとともに、人流データや道路の被災情報などを活用した避難行動・物流の最適化などの研究を進め、持続的な地域の防災力向上を目指すものとなっている。
なお、本協定は、三浦半島4市1町が民間企業と締結する初の防災連携協定であり、2025年4月にNTT東日本が設置した「防災研究所」が自治体と締結する初の防災連携協定。また、これまでの協定は支店レベルで行われていたが、NTT東日本・本社が締結するのも今回が初の事例となっている。
防災連携協定の締結に至った経緯について、「令和6年1月1日に発生した能登半島地震がきっかけ」と話す、横須賀市長の上地克明氏。道路やインフラが寸断され、孤立化した状況、復旧や救援活動の長期化を見て、「半島という同じ地勢にある自分たちのまちをどのように守っていけばよいか」を考えたところからスタートしていると振り返る。
そして、昨年12月には、三浦半島の4市1町が、防災をはじめとする共通の課題について、相互に助け合い、連携して取り組んでいくことを合意。さらに、4月28日には、三浦半島首長連合会議(MU)が立ち上げられた。
こうした経緯の中で、地域活性化の連携関係にあり、防災についての経験や知見を持つNTT東日本からの提案を受けて防災連携協定を締結。心強いパートナーと手を取り合うことができたことについて、「半島全体の防災力強化、そして三浦半島に住む皆様の安心安全な暮らしに繋がる」と期待を寄せた。
コロナ禍以降、海外からの来訪者を含めた観光客が増加している状況において、「鎌倉に居住している方だけではなく、鎌倉を訪れる方にとっても、安全で、安心できるまちづくりを進めていくことは重要な課題」という、鎌倉市長の松尾崇氏。しかし、実際に大災害が起きた場合、「本市のみでこの課題解決に繋げていくのは大変難しい」との考えから、今回の防災連携協定は、データを活用した防災に関する研究など、大変有用なものになるとの見解を示す。
そして、今回の協定締結を契機に、「三浦半島地域4市1町との連携を深めて、より一層の防災対策を進め、安全で安心できる三浦半島地域となるような取り組みを進めてまいりたい」との意気込みを明かした。
災害が起こった場合、「今の時代は何よりも通信が途絶えてしまうことが最大の不安要素の増長に繋がる」と話す逗子市長の桐ケ谷覚氏。「通信をしっかりとカバーできることで、市民の安心に繋げていくことが大変重要」との考えを示し、特にその点においては、NTT東日本との連携は心強いと評価する。
そして、もし発災した場合は、「市民に不安を与えない体制づくりが行政側に求められている」とし、「4市1町で連携して、不足するものを補い合いながら安全を確保していくことを、NTT東日本とともに進めていきたい」との思いを明かした。
これまで4市1町では、防災に関して相互協定に基づいて様々な連携が行われてきた。しかし、能登半島と同様、三浦半島には半島特有の孤立するリスクがあることを踏まえ、三浦市長の吉田英男氏は、今回の防災連携協定は「これまでの取り組みを大きく前進させるもの」との期待を寄せる。
そして、NTT東日本の知見と、最先端の技術によって、三浦半島全体の防災対策に取り組み、ともに連携していくことで、「誰もが安心して暮らすことのできるまちづくりをともに目指したい」との考えを示した。
今回の防災連携協定において、DXや防災関連の人材育成だけでなく、NTT東日本による行政のアセスメントに期待を寄せる葉山町長の山梨崇仁氏。これまで4市1町において、情報交換などは行われていたが、それがどれだけ有用であり、どこに不備があるかを客観的に判断する指標がなかったため、「戦々恐々」でありつつも、「本当に興味深い」と続ける。
そして、自分たちは、お互いの市境、町境にこだわることはなく、「70万の三浦半島民をどう支えるか、どう助け合うか」が重要という山梨町長。「お互いにお互いを助け合う、今や忘れられてしまっている“お互いさま”の心で、政治の垣根を飛び越えて、一緒になってやっていく」との覚悟を示した。
「地球温暖化が進み、災害は甚大化、長期化の傾向にある」と話すNTT東日本 代表取締役社長の澁谷直樹氏は、今回の防災連携協定の狙い、そして具体的な取り組みについてを説明する。
増え続ける大規模災害に対して、三浦半島のような地域防災は目指すべき方向性、災害に強い地域の未来像として、ハード面では「最先端技術を活用した防災力の強化」を挙げる。「災害発生時には、自治体や企業の業務がどこまでリモート環境で継続できるかがカギ」であり、「それを平時から使い慣れていくことが重要」であるとし、ソフト面の「自治体と地域住民の防災対応力の強化」についても、「日頃から様々な訓練を積んでいくことが重要」との見解を示した。
そして、交通手段などが寸断されることによって孤立集落が発生しやすいという、半島固有の課題を挙げた。これまで通信インフラを守るという防災協定を結んでいる自治体はあったが、「今回はそれをさらに進化させて、通信以外も含めたトータルでの取り組みに広げていく」という澁谷社長。「地元の企業や地域の住民の方をも一緒に巻き込んだ形での防災モデルを目指していく」ことが大きなテーマになるとの考えを明かした。
そして、NTT東日本の強みは、映像の活用やドローンなどのデジタル技術に加えて、地域に密着した現場力であるとし、「安心安全な社会を作るというパッション、熱いフィールドの実践力で、三浦半島全体の防災力強化に一緒に取り組ませていただければ」との意気込みを示す。また、4市1町では、自然環境や交通事情が異なっていることから、リスクアセスメント調査を通じて、防災力を可視化。その可視化状況に基づいて、自治体と一緒になって、防災プランを策定し、最終的には地域の住民や企業も巻き込んだ、実践型の防災を目指していくという。
三浦半島の防災力強化に向けては、「三浦半島に暮らす皆さんの安心な生活や幸せの実現」を目指し。3つのテーマを掲げる。
1つ目の「通信の応急対応力の強化」については、通信復旧に向けた三浦半島4市1町との広域体制を構築することで、災害発生直後のより迅速で最適な応急対応の実現を目指すというもの。市町横断での連絡体制の構築、優先して復旧すべき組織や避難所の判断など、これまで個別自治体では対応しきれなかった課題を三浦半島全体に広げることによって、「より高度な防災力が実現できていくのではないか」との考えを明かす。
2つ目の「防災力の強化」については、平常時のフェーズから災害時のフェーズヘシームレスに移行する「フェーズフリー化」の重要性を指摘。災害を想定した備えや業務運営が平常時から行われていることが重要であり、平常時から災害時にも活用できるICT環境や訓練体制を整備する必要性を訴える。なお、NTT東日本では、すでに144以上の自治体における防災力を分析し、可視化したデータを保有しており、それらのデータやノウハウを活用することで、三浦半島の防災力強化に貢献していくとした。
3つ目は「次世代防災DX先進エリアの創出」。先端技術や地域の様々な情報を活かし、災害対策本部運営や避難行動・物資調達を半島全体で最適化するなど、次世代の防災DXを進めることによって、地域防災の高度化を目指す。また、NTT東日本が4月に設立した、中立かつ長期的視点で地域の防災力に貢献する「防災研究所」の活用も視野に入れた取り組みとなっている。
NTT東日本では、本協定を通じて得られた知見や成果をもとに、将来的に全国の類似地域にも応用できる「新たな地域防災の在り方」を提言していくことによって、三浦半島に限らず災害に強い地域社会の実現への貢献を目指すという。(糸井一臣)