
突然だが、こちらの画像をご覧いただきたい。

小山園茶舗X公式アカウント(@koyamaen)の投稿より
グリーンの迷彩服を身に着けた4人の兵士が描かれている。今まさに、作戦を実行中のようで、緊張感に満ちている。
こういうの、おもちゃ屋さんで見たことがあるという人もいるだろう。
もっと詳しく言えば、プラモデルコーナーで。タミヤの「1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ」の歩兵セットのような......。
|
|
しかし、一番右の兵士が手に持つのは、昔懐かしのアルマイトやかんのように見える。
真ん中で駆け出そうとしている兵士がかかえているのは......急須みたい。手前でしゃがんでいるベレー帽の指揮官が持っているのは、湯呑みのようだ。
そうなると、左の兵士が投げようとしているのは、手榴弾ではなく、茶筒? いったい彼らの任務は何なのか?
左上には、「GREEN TEA-TEEM」と記されている。「緑茶野郎Tチーム」「静岡茶ティーバッグ10個入り」という日本語も読める。どうやらこれは、静岡茶の商品パッケージらしい。
この画像の投稿者は、静岡県静岡市葵区にある小山園茶舗のX公式アカウント(@koyamaen)。老舗のお茶屋さんらしからぬ画像が添えられたポストには、3500件を超える「いいね」のほか、こんな声が寄せられている。
|
|
「急須持ってる人の躍動感あふれるポーズ良すぎる」
「茶筒、投げんなw」
「ほ..ほしいです」
「めっ茶欲しい」
「なぜこんなに? と思ってるけど、静岡県といえば、タミヤ本社があるからねw」
「これは長年タミヤのボックスアートを手掛けられた島村さんの絵!」
「とても静岡っぽくていいですね」
この「緑茶野郎Tチーム」のイラストを描いたのはXユーザーの指摘どおり、模型メーカーの「タミヤ」のパッケージを手掛けたイラストレーターなのか? いったいなぜこのユニークな企画が生まれたのか?
模型の聖地・静岡の、おいしいものを、くわざあ!
古くからの茶処として知られている静岡。小山園茶舗は創業慶応元年というから、150年以上の歴史を持つ老舗だ。
同社の成岡敬悟専務に「緑茶野郎Tチーム」について尋ねると、「合同会社ウージンアーズレコーズ」代表の村田貴紀さんを紹介してくれた。
ウージンアーズレコーズは、「静岡クワザー」という静岡のおみやげシリーズを販売している企業だ。
|
|
「静岡クワザー」は、地元の食とプラモデルの箱絵のコラボさせたユニークな企画だ。
静岡県は、タミヤのほか、アオシマ(青島文化教材社)やハセガワといった模型メーカーが複数存在し、国内唯一のガンプラ製造拠点である「バンダイホビーセンター」もあるなど、模型の聖地ともいえる場所。
そして「クワザー」とは、「食べましょう」を意味する県中部の方言「食わざあ」に由来する。静岡らしさを詰め込んだ企画なのだ。
2024年秋、まず静岡おでんの「煮物合体シズオカオデン」や、深海生物を具材にした「駿河湾オオグソクムシカレー」が発売。
それに続く第3弾商品が、この「緑茶野郎Tチーム」である。
「2024年秋、『静岡クワザー』シリーズ発売開始後、次回作を見据えて、静岡を代表する特産品である"緑茶"をテーマにした商品を構想いたしました。
中身もこれまで同様に高品質なものにしたかったため、長い伝統と優れた品質・評判を誇る小山園様にお声がけさせていただき、今回のプロジェクトが始動いたしました」(村田貴紀さん)
面白い企画だからこそ"お遊び"で終わらせない
「緑茶野郎Tチーム」のパッケージデザインは、ミリタリーなモチーフに絞り込んだ。国や実在の軍隊を特定しない設定とし、兵士には武器ではなく茶器を持たせることで、「なぜお茶なのか」というメッセージ性を持たせたという
。作画を担当したのは、Xユーザーたちの言っていた通り、島村英二氏。かつてタミヤに在籍し、現在はフリーランスのイラストレーターだ。
島村氏に依頼するにあたって、描かれる4人の隊員それぞれに、明確な役割とキャラクター性を設けたと村田さんは説明する。
具体的には、こんな風だ。
SHOGUN(大佐):
リーダー。湯呑みを持ち、責任感が強く、冷静沈着な戦略家。最年少で叙勲された英雄であり、眼帯と緑のベレー帽がトレードマークです。
ハンサム(中尉):
茶葉の調達係。茶缶を持ち、情報や茶葉の確保に長けた交渉担当。女性に人気がある一面も。
狂犬(大尉):
給茶担当。急須を持ち、陽気で楽観的なムードメーカー。給茶技術は天才的で、奇行も多いが信頼できる存在です。
モホーク(軍曹):
湯沸かし担当。バーナーとやかんを装備し、筋骨隆々で力仕事を一手に引き受けます。短気だが情に厚く、格闘にも長けています。
「島村先生からいただいたラフに、こちらの意図や世界観の細部をすり合わせながら、長年にわたる先生の豊富な経験と優れた表現力によって、最終的に現在の形に仕上がっております」と、村田貴紀さん。
「島村先生は、『静岡に住む画家として、いつか"お茶"をテーマに描いてみたかった』とお話しくださり、今回の『緑茶野郎Tチーム』がその念願の機会になったとのことです。
また、『戦闘シーンではなく、茶器を持った兵士という発想が新鮮で面白かった』と感じられたそうです。
『面白い企画だからこそ"お遊び"で終わらせず、これまで描いてきたプラスチック模型の箱絵と同様に、自分の絵としてしっかり完成度を高めました』と語ってくださいました」(村田貴紀さん)

画像提供:合同会社ウージンアーズレコーズ
購入者からは、「お土産としてこれまでにない発想で面白い」「自分のコレクション用に購入した」といった声や、箱の手触りや質感がプラスチック模型のパッケージに似ているせいか、「実際に模型かと思った」「このキットを本当に組み立てたい」といったコメントが寄せられているという。
また、「全力でふざけているのに、ちゃんとしたものが入っていて、静岡の産業を盛り上げたいという熱量が素晴らしい」という声もあった。「遊び心と本気度の絶妙なバランスに共感を寄せていただくことが多く、大変励みになっております」と村田さん。
「静岡クワザー」はシリーズ第4弾、第5弾もすでに構想中。もう試作段階に入っているとのこと。
「静岡を訪れた方々に『模型を手にしたときのワクワク感』と同じ気持ちで、静岡の特産品を手に取っていただける体験を提供したいと考えています」
そう語る村田さんが、次はどんなものを出してくるのか? 今から楽しみである。