「COPD」治療の最前線 正しい知識を持ち適切に医療機関受診を

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2025年06月10日 14:10  QLife(キューライフ)

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COPD患者の身体的・精神的負担は大きい

 「ちょっと動いただけですぐに息が切れる」「風邪をひいていないのに咳が長く続く」。そんな症状を年齢のせいと思っていませんか? その症状、主にタバコの煙などの有害物質を長期的に吸い込むことで起こる「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」のサインかもしれません。

 製薬会社のサノフィ株式会社が2025年2月に行った調査では、COPD患者の多くが深刻な悩みを抱えている実態が浮き彫りになりました。日常生活で息切れや呼吸困難など身体的な苦しさを感じている患者さんは中等症以上では9割以上に上ります。さらに、「過去の喫煙への自責の念」や「いつ呼吸困難になるかという不安」など、精神的な負担も大きいことが明らかになりました。


室繁郎先生(サノフィ提供)

 しかし、身体的・精神的負担は大きいにもかかわらず、治療を受けていない患者さんが少なくないのが現状です。5月29日に同社が開催したメディアセミナーで講演を行った室繁郎先生(奈良県立医科大学呼吸器内科学講座教授)は、「日本におけるCOPDの推定患者数は530万人との報告があるが1)、そのうち治療を受けているのは36.2万人にとどまっており2)、受診率が1割にも満たない。症状が重くなってから初めて受診し診断を受けるケースが多く、これは社会的問題と言える」と警鐘を鳴らしました。

標準治療で症状が改善しない患者に新しい選択肢

 COPDの治療は、LAMA(長時間作用性抗コリン薬)やLABA(長時間作用性β2刺激薬)など気管支を広げる吸入薬により今ある肺の機能を最大限に引き出すことが基本的な方針です。2000年代の初めにこれらの薬剤が登場、その後、ICS(吸入ステロイド薬)との配合剤などが開発され治療が発達したものの、10年以上新薬は登場していませんでした。

 さらに室先生は、「標準治療である3剤併用療法においても効果不十分な患者さんが存在する3)。ある調査では、3剤併用療法にもかかわらず症状が持続し増悪する割合は51%に上った4)」と指摘します。

 そうしたなか、2025年3月に気管支喘息などの治療薬であるデュピルマブが、COPDの治療薬として承認されました。COPDはタバコによる炎症が主な原因ですが、喘息のようにアレルギー反応が関与する「2型炎症」を有する患者さんが一定数いることが分かっています。デュピルマブは2型炎症において中心的な働きをするタンパク質である IL-4および IL-13の作用を阻害する効果を有しています。室先生は「既存治療で効果が不十分なCOPDの治療薬として承認された世界で初めての生物学的製剤。臨床試験でも、3剤併用療法をしてもコントロール不良の患者さんに対して、デュピルマブが有効であるという結果が出ている。今回の承認がこれまで苦しんできた患者さんにとって新しい選択肢となる」と期待を寄せました。

 COPDは正しい知識を持ち、適切なタイミングで治療を受けることが大切です。気になる症状がある方は医療機関を受診し、ご自身の症状をしっかりと伝えてくださいね。(QLife編集部)

1)Fukuchi Y. et al.: Respirology. 9(4): 458-465, 2004 2)厚生労働省:令和2 年(2020 年)患者調査(2025年6月6日閲覧) [https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450022&tstat=000001031167&cycle=7&tclass1=000001166809&tclass2 =000001166811&tclass3=000001166812&tclass4=000001166814&stat_infid=000032212144&tclass5val=0] 3)Bhatt SP et al. N Engl J Med 2023; 389: 205-214 4)Halpin DMG et al. Eur Respir J. 2020; 55: 1901921

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