MOMONA/photo:You Ishii11人組ガールズグループ、「ME:I」がオーディション番組を経て結成されたのは一昨年12月のこと。以来、快進撃を繰り広げてきた「ME:I」を、リーダーとして牽引するのがMOMONAだ。
そんなMOMONAが実写版『リロ&スティッチ』で声優初挑戦。日本では2003年に公開されたアニメーション版『リロ&スティッチ』は彼女が幼少期に初めて買ってもらったDVDで、何度も繰り返し観ていたという。声優オーディションの話が舞い込んだときも、喜びよりプレッシャーが勝った。
だが、勝負強さは先のオーディション番組でも証明済み。幼い妹リロを育てながら、夢と家族愛の狭間でもがくティーンエイジャー、ナニ役を見事手にし、作品の大切な一部となった。
自身も三姉妹の長女
「ナニの気持ちがよく分かる」
――ナニというキャラクターに対して、どんな印象を持っていますか?
まだ19歳ですけど、自立心があり、エネルギッシュでパワフル。色々なものを背負っていますが、年相応の不器用さや可愛らしさがあり、その狭間で葛藤するナニに自分を重ねたりもしました。私自身、三姉妹の長女で、グループのリーダーでもあるので、常に何かを守ろうとするナニの気持ちがよく分かりましたね。
――演じる上で気をつけたことは?
人間って誰しも一面だけじゃないですよね。ナニの中にも色んなナニがいて、リロのお姉ちゃんでいたいナニと、亡き両親に代わり、大人としてリロと向き合わなきゃいけないナニがいる。本当は同じ年頃の子たちみたいに、何も考えずにサーフィンを楽しんだりしていたいのに。そんなナニのすべてを尊重する気持ちでなりきりました。
――MOMONAさんは笑顔の印象が強いですが、ナニはわりと喜怒哀楽が激しいですよね。
私自身は日頃から喜怒哀楽を主張するタイプではないですし、おっしゃる通りニコニコ笑顔のイメージを持ってくださる方も多くて。ただ、家ではナニみたいなお姉ちゃんです。もしかしたら、ナニより激しいかもしれないです(笑)。「ちょっと!」と叱って言うことを聞かせてきた姉貴なので、妹たちが小さかった頃を思い返しながらお芝居をしました。たぶん、妹たちが映画を観たら肝が冷えると思います(笑)。
――将来について思い悩むナニの気持ちにも共感しましたか?
悩んで考え込んでしまったり、悲観的になったりする気持ちはすごく分かります。ただ、これは自分に向けた言葉でもあるのですが、「あなたのことが好きで力になってくれる人は、あなたが思っている以上にたくさんいるよ」と言ってあげたいです。そういった人たちが、ナニにとっての“オハナ(=家族)”だと思いますし。
――MOMONAさん自身、“オハナ”の愛情を感じているからこその言葉ですね。
自分1人ではできないことばかりですし、多くの方々の支えがあっての自分なので。
――どんなときにそれを実感しますか?
私はステージで歌って踊ることが何よりも大好きなんです。衣装を着てステージに立つと、客席の皆さんのペンライトが光っていて、舞台の袖から見守ってくれるマネージャーさんがいて、照明さんも音響さんもいる。少し大げさに聞こえるかもしれませんが、それぞれに人生があるんですよね。だからこそ、ステージに立てることの意味を常に噛みしめていますし。もちろん、一緒にステージに立っているメンバーも私の大事な“オハナ”です。
――MOMONAさんはME:Iの“お父さん”でもあるとか。
自分でも父親だなと思います(笑)。ME:Iって本当にタイプがバラバラで、家族みたいなんですよね。たまに「パパ〜」と呼ばれますし。常に一緒になってはしゃぐタイプではないけど、みんなを連れて、支えるのが私の役割かなと思っています。その中で、感情も、目の前の出来事も全部共有し合えるのが私にとってのME:Iなので。
声優経験で「表現の幅が広がる」
――声優初挑戦を経て、お芝居に対して芽生えた想いはありますか?
演じることの楽しさが体の底から分かりました。普段は発しないエネルギーを発したり、喜怒哀楽を表現したりするのが本当に楽しくて。終わった後はどっと疲れもしましたが、ものすごい解放感を覚えましたね。自分が歩んでいない人生を自分の体を通して表現するって、不思議なことだけど楽しいです。
――普段はどんな映画をご覧になりますか?
最新作を追うよりは、気になったときにジャンル問わず観るタイプです。好きな作品を1本挙げるとしたら、『溺れるナイフ』。映画から入り、好きすぎて原作漫画も読破しました。日常のささやかさがありながら、その中に閃光みたいな激情が入り混じっていてたまらなく好き。小松菜奈さんのお芝居がすごく好きで、息を吐くように感情を出す姿に自然と感情移入させられました。
――MOMONAさんの声のお芝居にも自然と感情移入させられました。
嬉しいです! ありがとうございます!
――ちなみに、ご自分の声は好きですか?
実を言うと、歌声も話し声もずっと好きになれなかったんです。特に10代の頃はそうでした。でも、「好き」と言ってくださるファンの方々がいて、だから頑張ろうという気持ちでいるうちに慣れていって。色んな楽曲を通してちょっとずつ受け入れられるようになりましたね。それでもやっぱり話し声はいまだに違和感があったんですが、声優のお仕事を経験して自信が出ましたし、すごく好きになりました。自分の声を聞いて「いいじゃん」と思える日が来るとは思っていなかったですね。
――テンポがよくて聞き取りやすい話し声ですし、滑舌もいいですよね?
いやいやいやいや(笑)。実はめちゃめちゃ悪いです。それがずっと悩みで。アフレコ前にも、ディレクターさんに「MOMONAさんはサ行とラ行とマ行が苦手です。寝る前に練習してください」と言われました。確かに「ハキハキしゃべるよね」と言ってくださる方も多いんですけど、今までは声量でごまかしてきましたね。今回、心のどこかでは自覚していた問題にぶち当たって、すごく頑張りました。
――ある意味、自分のコンプレックスと向き合う期間でもあったのでしょうか?
その通りだと思います。お芝居をしてみたいけど、滑舌が悪いし…と思う自分もいました。今回「やるしかない!」という状況をいただいて、頑張れて、本当によかったです。
――今回の経験はME:Iとしての表現にも影響しそうですか?
そうですね。お芝居と音楽って、似ているなと思いました。映画にメッセージがあるように、楽曲にも色んなメッセージが込められていて。ME:Iの曲は等身大の私たちのアイデンティティーを表現するものが多いんですが、曲の世界観を自分の中で作り込み、主人公になって表現するのはある意味演じること。なので、今回の経験をパフォーマンスに取り入れたら、また表現の幅が広がるんじゃないかなと思いました。
(text:Hikaru Watanabe/photo:You Ishii)