
(左から)パーソナリティの小山薫堂、倉田浩伸さん、宇賀なつみ
◆カンボジアで胡椒栽培を始めた経緯
今回の放送テーマは、「普段はあまり考えないけど身近なもの」。その代表格ともいえる“胡椒”について、改めて見つめ直します。胡椒の原産地は古代インド。古代ローマでは「黒い金」と呼ばれ、貨幣のように取引されていたといいます。中世ヨーロッパでは富の象徴となり、大航海時代の探検や貿易競争のきっかけにもなったほどです。
日本には奈良時代に伝わり、当初は薬として貴族の間で珍重されていました。その後、江戸時代になると庶民にも広まり、私たちの食文化に深く根付いていきました。そんな胡椒を、現在カンボジアで栽培しているのが「クラタペッパー」の倉田浩伸さんです。
倉田さんがカンボジアに渡ったのは1992年。大学生だった倉田さんは、カンボジアが和平を結んだ直後にNGOの派遣隊員として現地を訪れました。学校建設などの復興支援に取り組みましたが、家庭に現金収入がなければ子どもたちが学校に通えないという現実に直面。「現金収入が増えるお手伝いをカンボジアでできないか、戦後復興の礎になる何かができないか」と、NGOを辞めて起業に踏み切ったそうです。
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◆胡椒は“乾燥させた果実”
倉田さんが生活の拠点とするカンボジアは、アンコールワットの遺跡で知られる美しい国です。国土は日本の本州の3分の2ほどの大きさで、自然災害が少なく、年間を通して暖かい気候が続きます。台風も地震もなく、「ユートピアのような国」と倉田さんは語ります。
胡椒の栽培も、そんな土地の歴史と深く関わっています。文献によると、すでに13世紀のアンコール王朝の時代には、中国の使者が「カンボジアに胡椒がある」と記しており、長い栽培の歴史がうかがえます。大航海時代には、ヨーロッパに向けてカンボジア産の胡椒が輸出されていたという記録も残っています。
胡椒はつる性植物で、クラタペッパーでは4〜5メートルほどの支柱に巻き付けて育てているそうです。実の形は山葡萄や山椒を思わせる小さな房状で、倉田さんは「胡椒は果物、つまり果実なんです。乾燥させているので、みなさんが知っている黒胡椒は“ドライフルーツ”ですね」と説明してくれました。

スタジオで胡椒を試食中の小山薫堂と宇賀なつみ
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◆熟した実で作った胡椒は甘い香りになる
スタジオには、クラタペッパーで栽培された胡椒が登場しました。オーソドックスな黒胡椒の辛みの正体は、実のなかにある種の部分で、皮には香りが宿っています。「ブラックペッパーは緑の未熟な実を干して作っているので、フレッシュな皮の香りが楽しめます。辛味成分も大粒で出来上がっているので、肉料理や臭み消しに使えますね」と解説します。
続いて紹介されたのは「完熟胡椒」です。これは、果実が赤く色づくまで熟したものを収穫し、乾燥させた黒胡椒で、「ほんのり甘い香りがする」のが特徴です。小山と宇賀が実物の香りを嗅ぐと、チョコレートやドライフルーツのような匂いがするとのコメントも。味わいも独特で、「完熟させるとうまみがあって味のある胡椒に仕上がります」と倉田さんは話します。
クラタペッパーが販売する完熟胡椒(ライプペッパー)は、実を一粒ずつ丁寧に手で摘み取る必要があり、手間もコストもかかります。また、熟す順番がまちまちのため、一斉収穫ができません。そのため、この製法を採用している生産者は他にほとんどいないといいます。
◆胡椒栽培に生涯を捧げる
胡椒は日陰を好む植物で、特にカンボジアの雨季には栽培環境の調整が欠かせません。近年は気候変動の影響で、雨季でも日差しが差す日があるため、人工的に日陰を作ったり、雨量をコントロールしたりする工夫が必要です。「空を見ながら水の量と日照時間を調整していくのがいちばん大変です」と苦労を明かします。
そんな胡椒作りを支えるのは、現地の人々との信頼関係です。「いちばん大事なのはコミュニケーション」と語る倉田さんは、今も自ら畑に立ち、日々の作業に励んでいます。
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番組では、倉田さんが番組リスナーに向けて手紙を読む場面もありました。
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<番組概要>
番組名:日本郵便 SUNDAY'S POST
放送日時:毎週日曜 15:00〜15:50
パーソナリティ:小山薫堂、宇賀なつみ
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