【W杯まであと1年】サッカー日本代表と“世界の強豪”、現段階での“戦力差”はどれほどなのか。「有力クラブ所属選手数」を比較して分かったこと

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2025年06月14日 09:01  日刊SPA!

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10番を背負い、キャプテンの責務も果たした久保
 3月に行われた試合で、すでにFIFAワールドカップ26の出場権を獲得していたサッカー日本代表。消化試合となったアジア最終予選のオーストラリア代表戦とインドネシア代表戦で多くの新戦力を試した。日本代表を率いる森保一監督は、招集したメンバーについて「こんなにできるんだ」と一定の評価をしながらも、「この代表で選び続けるには、力をつけてもらわなければならない」と、及第点には至らなかったことを示唆した。
◆本番まで「あと1年」選手として大化けするには

 今回の2試合に臨むメンバーを発表した際に指揮官は、「勝利を目指すということにこだわりながら、選手一人ひとりの成長を促す」と語っていた。2戦目のホームで行われたインドネシア戦では6−0で快勝したが、アウェイのオーストラリア戦では惜敗している。勝ちにこだわることよりも、新戦力として期待した初招集、再招集組の成長を優先させていたのは明らかだった。すでにワールドカップ出場という直近の目標を達成しているので勝敗は大きな問題にはならないが、それよりも優先させた新戦力の発掘や選手の成長といった部分でも先述したコメントから大きな成果を得られなかったことがうかがえる。

 とはいえ、今回の初招集、再招集組は伸び代の大きい若い選手が多い。ワールドカップ本大会まで1年となったが、今回の経験をきっかけに選手として大化けする可能性はある。

 選手として成長するためには、よりレベルの高いチームでレギュラー争いをしつつ、常にレベルの高い相手と対戦して実戦経験を積むことが最も近道になるといえる。そうなると移籍が不可欠で、ヨーロッパのオフシーズンで移籍期間でもあるこの3カ月間が命運を握っている。

◆環境を変えることには“大きなリスク”もつきもの

 三笘薫や久保建英にはキャリアアップとなりそうな移籍のうわさがあり、UEFAチャンピオンズリーグで優勝を狙えるようなトップクラスのクラブに移籍することで、さらに大きく成長して本大会に臨める可能性がある。しかし、移籍先でうまく馴染めずに出場機会を得られなかった場合は成長どころか、調子を崩した状態で本大会に挑まなければならないというリスクも十分に考えられる。

 選手にとってワールドカップがすべてではないが、自身のキャリアの中でも重要視する選手は多い。活躍すればその後のキャリア形成を大きく飛躍させるからという理由もあるが、今では自身の夢や誇りのためと強い思いで挑むほうが多くなったように感じる。一昔前のワールドカップは選手の品評会という側面もあったが、情報技術が急速に発達したこともあり各クラブのスカウトらがワールドカップで新たな選手を見つけるということは少なくなったという事実も影響している。そういった背景もあり、以前はワールドカップ後の移籍市場ではビッグディールがよくあったが、現在では少なくなっている。

 また、ヨーロッパのビッグクラブを中心とした最近の傾向では、30歳以上の新たな選手を獲得することが稀になっている。ゆえに、短い選手寿命の中でキャリアアップするため、リスクがあるとわかっていても移籍を決断する場合もあるだろう。

◆“最高峰のクラブ”に所属するのは3人のみ

 日本代表だけのことを思えば、三笘も久保も移籍せずに来年のワールドカップに臨んでほしい。だが、三笘は28歳で久保は24歳。先に言ったように、30歳以上でキャリアアップできる移籍のチャンスは極端に少なくなる傾向が顕著なため、ビッグクラブからいい話があるようなら移籍を決断してほしいと個人的には望んでいる。もちろん出場機会が激減するリスクはあるが、彼らなら乗り越えてさらに成長した姿で本大会に挑めるはずだから。

 三笘と久保に限らず、アジア最終予選を勝ち抜いたいわゆるコアメンバーといわれる選手らについては、同様に移籍を悩んでいることと思われる。一方で、日本代表の新戦力として期待される初招集、再招集組も移籍を悩んでいるだろうが、こちらに関しては出場機会が激減するリスクが大きくても自身の成長のために移籍を決断してほしい。もちろんオファーありきにはなるが、よりレベルの高いところで戦い成長しなければ本大会への道は開かれないからだ。

 どのクラブへ移籍するとキャリアアップにつながるのか。それはUEFAチャンピオンズリーグで優勝できるようなビッグクラブが最高峰になるが、現在の日本代表でそういったクラブに所属しているのはリバプールの遠藤航、アーセナルの冨安健洋、バイエルンの伊藤洋輝の3人だけである。

◆2022年から状況はさほど変わっていない?

 初招集、再招集組の選手はビッグクラブへの移籍は叶わないかもしれないが、少なくとも5大リーグといわれるイングランド、スペイン、ドイツ、フランス、イタリアの1部リーグに属するチームへの移籍できることが望ましい。しかも、UEFAチャンピオンズリーグなどより強豪ら戦える機会の多いチームのほうが成長する可能性は高い。

 クラブチームの強さを示すもののひとつとして、UEFAクラブランキングというものがある。2024-25シーズンの1位はスペインのレアル・マドリードで、次にイングランドのマンチェスター・シティ、ドイツのバイエルン・ミュンヘン、イングランドのリバプール、フランスのパリ・サンジェルマンと続く。

 代表チームのポテンシャルを測るのに、招集メンバーが所属するチームのランキングがどのくらいなのかを調べてみた。日本代表でいえば、3月に招集されたメンバーでそのランキング圏内に入っているチームに所属していたメンバーは11人で、その平均順位は44位だった。また、今回のメンバーでは5人で75位だった。ちなみに2022年のカタール大会のメンバーと当時のランキングを照らし合わせたところ、11人で69位だった。このことから個々の才能を発揮して活躍する突出した選手はいるが、決して増えてはいないといえるのではないだろうか。

◆日本代表と“世界の強豪”を比べてみると…

 日本代表は次のワールドカップで優勝を目指すと公言し、「最高の景色を」を合言葉として掲げている。実際のところはベスト8進出でも及第点だろう。

 前回大会のベスト8に入ったチームの上記データがどうなっているかも調べた。UEFAクラブランキングは前回大会開催シーズン時を参考にしており、それぞれ以下のとおりとなった。もちろんこのデータがすべてではないとはいえ、実力を測る指標にはなりえそうだ。※フランスは負傷離脱者がいたためチーム全員が26人ではなく25人

アルゼンチン:圏内クラブ所属人数=22人:平均順位=20位
フランス:圏内クラブ所属人数=25人:平均順位=24位
クロアチア:圏内クラブ所属人数=19人:平均順位=45位
モロッコ:圏内クラブ所属人数=10人:平均順位=43位
オランダ:圏内クラブ所属人数=25人:平均順位=26位
ブラジル:圏内クラブ所属人数=21人:平均順位=11位
イングランド:圏内クラブ所属人数=23人:平均順位=20位
ポルトガル:圏内クラブ所属人数=25人:平均順位=26位

日本(2022):圏内クラブ所属人数=11人:平均順位=69位
日本(3月):圏内クラブ所属人数=11人:平均順位=44位

 現在の日本代表は前回大会のモロッコの戦力と同等クラスといえ、ベスト4の可能性もあるだけのメンツが整っているといえる。ヨーロッパの国が多く自国リーグに圏内クラブに入るチームが多いという事情もあるが、26人中20人前後が圏内クラブに所属する選手で平均順位が20位程度になる戦力がそろえば、ベスト8が盤石になりそうだ。

 また、ベスト8に進出するようなチームにはトップ20に入る強豪クラブに所属するメンバーが多い。先述したとおり、現在の日本代表メンバーでは3人だけである。この人数も増えると、さらに可能性は高まるといえるだろう。

 1年後のワールドカップ本大会前に、20人20位に近づく可能性があるうわさを耳にしている現状だ。

 とはいえ、結局は環境に合う合わないは個々によって異なるし、国内のJリーグでも大きく成長できる選手はいる。まずは個人として成長できる最良の選択をして、1年後に代表チームの一員として還元してほしいと強く望む。

<TEXT/川原宏樹 撮影/Norio Rokukawa>

【川原宏樹】
スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる

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