G7サミット会場で、歓迎セレモニーを終えた石破茂首相(右)。左は佳子夫人=16日、カナダ・カナナスキス(代表撮影・時事) 【カナナスキス時事】石破茂首相は16日(日本時間17日)、トランプ米大統領とカナダ西部カナナスキスで会談したが、米国の関税措置を巡る溝は埋められなかった。日本側は今回のトップ会談での合意も視野に入れていたが、「肩透かし」に終わった。夏の参院選が近づく中、交渉の長期化も覚悟している。
「認識が一致していない点が残っている。パッケージ全体としての合意には至っていない」。首相は会談後、交渉が決着しなかったことをあっさりと認めた。政府関係者からは「なかなか厳しい」「決裂はしていないが、うまくいかなかった」と落胆の声が相次いだ。
米政権による相互関税や自動車などへの追加関税の発動を受け、日本は4月から対米交渉に乗り出した。赤沢亮正経済再生担当相を米国に送り込み、ベセント財務長官らと膝詰め協議を計6回重ねた。
日本は一連の関税措置の撤廃を要求。液化天然ガス(LNG)の輸入拡大や造船・レアアース(希土類)調達を巡る協力などを「パッケージ」として提案したが、米側の譲歩を引き出せず、こう着状態が続いた。
今月13日の閣僚協議では、日本の公表文書から「一連の関税措置見直し」を求めるとした従来の表現が消えた。水面下での交渉進展をうかがわせ、首相周辺も「最後はトランプ氏次第」と指摘。今回の首脳会談での大枠合意に期待が高まった。
首相は16日のトランプ氏との会談に「自信」(首相周辺)を持って臨んだ。日本側の用意した「パッケージ」で説得できると踏んだためだが、「トランプ氏には響かなかった」(外務省関係者)。米側は自動車の対日貿易赤字の解消を重視し、日本が提案する非関税障壁見直し策などとの溝は明らかだった。
7月9日には米側による相互関税の上乗せ分の発動猶予の期限が迫る。実際に発動されれば疲弊する国内経済に追い打ちをかけるのは確実だ。7月3日には参院選が公示される見通しで、石破政権への逆風が強まりかねず、首相周辺は「次の攻防はそこ(上乗せ分の扱い)になる」と見ている。
首相は今月24、25両日にオランダのハーグで開かれる北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席する予定で、同地での日米首脳会談も想定される。閣僚協議を集中的に行うため、政府高官は「赤沢氏はずっと米国にいた方がいい」と語った。