写真 2010年にTBSに入社し、『朝ズバッ!』『報道特集』などを担当したのち、2016年に退社したアンヌ遙香さん(39歳・以前は小林悠として活動)。
TBS退社から8年経った今年、紆余曲折を経て20年生活した東京を後にして活動拠点を故郷北海道に戻したアンヌさん。アラフォーにして再スタートを切った「出戻り先」でのシングルライフの様子や心境をつづる連載です。
第39回となる本記事では、東京ヤクルトスワローズのマスコットキャラクター「つば九郎」への想いをつづります(以下、アンヌさんの寄稿)。
◆エスコンにやってきた「つば九郎神社」
日本生命セ・パ交流戦2025。いよいよ大詰めですね。
北海道在住。いちファイターズファンとして、日々ファイターズ戦についてスレッズでつぶやくのが今の最大の楽しみと言っても過言ではない私も、先日エスコンフィールドへ対ヤクルト戦観戦に行って参りました。
実はその日仕事の都合で場合によっては何回に到着するかわからないところもあったのですが、たとえ試合終了後にエスコンに到着する事態になろうとも、必ず駆けつけたいという願望が私の中にありました。
というのも、今回のヤクルト戦、期間限定でつば九郎神社なるものがエスコンフィールド内に設営されると聞いていたから。私はどうしてもつば九郎にお参りしたかったのです。
つば九郎と言えばヤクルトスワローズの唯一無二のマスコットキャラクター。可愛らしい外見とは裏腹に、手にするスケッチブックには少し癖のある可愛らしい文字で絶妙なギャグを披露したり、とんでもない野球知識の深さを見せたり、中日のドアラとの漫才のようなやりとりも絶妙でした。
そのつば九郎担当だった球団職員の方が、急なご病気で亡くなったというニュース、大変なショックを受けた方、たくさん、たくさんいらしたでしょう。
◆野球に明るくない私を救ってくれた
今でこそファイターズファンの私ですが、かつてTBSでアナウンサーをしていたときは、正直、野球に明るいとは言えませんでした。
スポーツニュースなどを読ませていただく機会は多くありましたが、推しの球団があり、プライベートで球場に行って……という文化が残念ながら当時の自分にはありませんでした。
私は当時『早ズバッ!ナマたまご』という、『みのもんたの朝ズバッ!』の姉妹番組担当も務めていましたが、オープニングでは、その日のスポーツ新聞を全紙紹介するのが決まりでした。
正直、野球のニュース紹介にはとても苦労した経験があります。知識が無さすぎました。反省しかありません。
しかし、そんな中でも、時折入ってくるつば九郎の契約更改交渉の話題や、ホームランを打った選手の横につば九郎が写っている姿が一面にあるだけで、私はどれだけ救われたか。
野球に詳しいとは言えなかった私であっても、つば九郎の話題が出てくるだけでとても嬉しく、幸せで、そして野球を身近なものとして感じることができたのでした。
とにかくつば九郎の存在は大きかったのです。
あまりにもつば九郎が好きすぎて、つば九郎のトークイベントなるものにも行ったのは良い思い出。もちろんスケッチブックにひらがなでの会話ですよ。
◆エスコンで聴く東京音頭にグッときた
そんなつば九郎にお参りできるつば九郎神社がエスコンに来るならば、絶対にお邪魔したいと考えていました。
6月10日のヤクルト戦は結果から言えば、ファイターズが北海道に移転してから1500勝目を果たしたというおめでたいものになりました。
もちろんその勝負の行方を見守ることができたのも最高でしたが、名物であるファイターズガールによるきつねダンスを、妹のつばみちゃんが一生懸命踊ってくれている姿、なんだかとても泣けました。
7回にはヤクルトの応援歌である東京音頭が流れ、あのつば九郎の可愛らしいお顔がついた小さい傘をヤクルトファンの皆さんが上下する姿にもぐっとくるものがありました。
エスコンで聴く東京音頭も、一応20年都民だった私としても懐かしさがあったりしてね。つば九郎への想いと、東京音頭があいまり、終始うるうるしちゃっていました。
故郷北海道に帰ってきて、現在の私の日々の潤い、生きがいはファイターズ、野球観戦だと言っても過言ではありません。
◆つば九郎が教えてくれていたこと
日々野球を観ていると、野球は人生そのものだなと感じることがよくあります。
どうあがいてもヒットが全然出ないときもある。
しかしその前に、むしろ打席に立つチャンスをまず掴まなくてはならない。
一球のために血が滲むような努力が求められる。
上手くなりたいという気持ちをずっと持ち続けなければならない。
人生の縮図がそこにはあると、私は気付かされました。
つば九郎は、昔の私のような野球に明るくない人たちにも「野球って面白いんだよ、野球ってすごいんだよ」ということを、全身全霊で教えてくれていたと感じます。
さて、念願のつば九郎神社。こちらはそもそも、神宮球場のお膝元である信濃町駅アトレのイベントで置かれたものだったそう。
スケッチブックを手にするつば九郎の等身大パネルには、
「あとれ〜ぼくね〜 おとうさんみたいな りきしになるの」との文字が。
これって……少年時代の貴乃花さんのものまね……。あのねぇとアトレをかけてるんですよね……。またまた絶妙なギャグセンス。いつまでも私たちを楽しませてくれるつば九郎の魂にほろり。
つば九郎さん、ありがとう。
<文/アンヌ遙香>
【アンヌ遙香】
元TBSアナウンサー(小林悠名義)1985年、北海道札幌出身、在住。現在はフリーアナウンサーとしてSTV「どさんこWEEKEND」メインMCや、情報番組コメンテーターして活動中。北海道大学大学院博士後期課程在籍中。文筆家。ポッドキャスト『アンヌ遙香の喫茶ナタリー』を配信中。Instagram: @aromatherapyanne