【悼む】元ロッテ伊藤義弘さん「ああいう書き方をしなくても」うなずくしかなかった突然の電話

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2025年10月07日 18:30  日刊スポーツ

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日刊スポーツ

ロッテ時代の伊藤義弘さん(2010年7月撮影)

元ロッテの伊藤義弘(いとう・よしひろ)さんが6日、交通事故で亡くなった。43歳。6日の午後2時17分、福岡市城南区の交差点で運転していたバイクがタクシーと衝突。福岡市内の病院へ搬送されたが、午後4時16分に死去した。7日にロッテが発表した。


  ◇  ◇  ◇


伊藤さんは16年限りで引退した。私がロッテを担当したのは15年から。15年は7試合、16年は1軍登板なしだったので、試合で取材したことはほとんどなかった。むしろ、彼がユニホームを脱いでからの方が、付き合いが増えた。


数人で囲んだとき。確か、9年間の現役生活をねぎらう会だった。現役のころは、チーム練習が終わってからも自費でつけたトレーナーの元に通い、トレーニングを重ねた話をしてくれた。感心する我々に対し「みんな、やってますよ。おそらく、皆さんが思っている以上にプロ野球選手は練習しています」と、全く表情を変えずに言っていた。


セカンドキャリアのために、日体大の大学院に進んだ。教員免許を取得するだけなら、別の手軽な選択肢もあった。だが、将来を視野に入れ、体育学の本家本元で修士号も取得する道を選んだと話してくれた。修士論文だったと思うが、読ませてもらったら専門用語のオンパレード。院レベルなので当然なのだが、全くお手上げだった。感想を求められても曖昧に答えることしかできなかった。元プロ野球選手、しかも日本シリーズで胴上げ投手にまでなった人が、ここまでやるのか−、とは言わなかったが、もしそう答えたら、きっと「みんな、やってますよ」と表情を変えずに言ったのではないだろうか。


最後に話したのは数年前。突然、電話がかかってきた。実は、いい話ではなかった。母校で監督になっていたが、日刊スポーツが書いた高校野球のある記事への意見だった。「ああいう書き方をしなくても」と率直に言われた。一理あり、うなずくしかなかった。私が書いた記事ではないのは伊藤さんも分かっていたが、言わずにおけなかったのだろう。別にわだかまりができたわけではない。ただ、あれが最後になるなんて。受け止められない。【15〜17年ロッテ担当=古川真弥】

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