実は激減していた「ひじき」の鉄分量。それでも食べる価値は大きいと言えるワケ【大学教授が解説】

1

2026年05月12日 20:50  All About

  • 限定公開( 1 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

All About

【大学教授が解説】かつて「鉄分の王様」と言われたひじきですが、調理器具の変化により鉄分量が大幅に減少しました。しかし依然、多くの鉄分を含む食品です。ひじきの価値の実際のところと、効率よく鉄分を取るポイントを解説します。(※画像:Shutterstock.com)
若い世代の方々はあまり聞いたことがないかもしれませんが、ひじきは以前「鉄分の王様」と言われていました。貧血予防効果があるとして、食べるよう推奨されていた食品の1つです。当時の分析では実際に、調理されたひじき100g当たりに50〜60mgほどの鉄分が含まれているというデータが示されていました。

しかし、詳しく調べてみると、当時はひじきを調理するときに鉄鍋でゆでていたため、鉄鍋由来の鉄分がひじきに混ざり込んでいたことが分かりました。

『日本食品標準成分表』の2015年版からは、ステンレス鍋でゆでた場合の数値が採用され、「100g当たり6.2mg」と、約10分の1の値に見直されています。

鉄分が少なくても食べる価値はある? ひじきの栄養と他食品との比較

では、ひじきはもう食べる価値がないのでしょうか? いいえ、決してそのようなことはありません。

ひじきには、骨の維持に重要なカルシウム、腸内環境を整える食物繊維、血液凝固やエネルギー代謝に関わるビタミンKやビタミンB群(B2、B12)などが豊富に含まれています。また、鉄分についても、以前より数値が低くなったとは言え、依然として貴重な供給源です。野菜の中で鉄分が多いとされるほうれん草は、生で100g当たり約2mg、ゆでると約0.9mg程度ですが、ひじきはそれよりも多い約6mgの鉄分を含んでいるのです。

さらに、調理方法を工夫することで、より効果的に鉄分を摂取できます。例えば、油と一緒に調理すると、消化管からの鉄分吸収が高まることが知られています。ごま油で炒めたり、ひじきを加えた卵焼きにしたりするのもおすすめです。

「ヘム鉄が優先」はもう古い? 非ヘム鉄の吸収に関する最新知見

また、食品中の鉄には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」があります。ヘム鉄は、酸素を運ぶ役割を持つ赤血球に含まれるヘモグロビンに取り込まれた形の鉄です。主に動物性食品に含まれており、消化管から体内に吸収されやすいとされてきました。一方、「非ヘム鉄」はひじきのような植物性食品に含まれており、体内に吸収されにくいと考えられてきました。

しかし、近年では従来のこの考え方は見直されつつあります。

2024年10月に厚生労働省が発表した『「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書』では、非ヘム鉄の吸収率は体内の鉄の状態によって大きく変動し、特に鉄が不足している場合には、ヘム鉄を上回る可能性があるとされています。

===
非ヘム鉄はヘム鉄に比較して吸収率が低いため、鉄の摂取源として動物性食品を優先すべきとされてきた。しかし、非ヘム鉄の吸収率は鉄の栄養状態によって大きく変動し、特に鉄栄養状態が低い場合や鉄の要求性が高い場合、その吸収率はヘム鉄を上回ると考えられる。したがって、食事からの手つの摂取において、摂取源としてヘム鉄の多い動物性食品を優先する必要はなく、大半が非ヘム鉄である植物性食品も積極的に利用すべきである。
===

つまり、鉄不足の状態では、体の自然な働きによって非ヘム鉄の吸収率が高まるのです。鉄不足による貧血で、レバーや肉を頑張って食べている方も少なくないかもしれませんが、「鉄分はヘム鉄から取るべき」という常識も、見直されつつあります。

鉄鍋を使わなくなった現在でも、ひじきは貧血予防の心強い味方なのです。

阿部 和穂プロフィール

薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。
(文:阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者))

    ランキングライフスタイル

    前日のランキングへ

    ニュース設定