死別・未婚・離婚…人生100年時代「単身リスク」への備え方、親子“共倒れ”の危機も

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2026年05月17日 09:00  週刊女性PRIME

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※写真はイメージです

 2026年のいま、100歳超の高齢者は珍しくなくなった。昨年9月の段階で9万9763人になり、10万人の大台に乗ろうとしている。

 わずか4152人しかいなかった1992年に比べ、約24倍まで増加。「人生100年」が当たり前の時代に突入したといえるだろう。

 その一方、バブル崩壊から現在に至るまで経済は停滞。賃金も上がらず、物価高が生活を直撃。食料品も満足に買えないと嘆く高齢者もいる。この「失われた30年」を背景に現在、「単身リスクが高まっている」と、家族社会学の第一人者・山田昌弘教授は話す。

雇用形態の変化が生んだ単身世帯の増加

「単身リスクとは、『人生100年時代』の単身者に起こりうる、経済的、精神的リスクを指します。伴侶に先立たれたり、生涯独身であるなど、単身世帯が増加するいま、対処すべきリスクなのです」

 残念ながら、「人生100年時代」の到来は、厳しい時代の始まりかもしれないのだ。

「1980年代の日本社会は経済的に豊かで、正社員として就職したあと、結婚して子どもを持ち、自宅を購入して定年退職するのが一般的な人生コースでした。

 ところが、不況続きの30年間で社会は大きく変貌し、仕事のあり方が以前とはまったく異なってきています」(山田教授、以下同)

 山田教授によれば、戦後に定着した終身雇用という働き方が大きく変化したという。勤続年数によって自動的に賃金や役職が上がった時代は、安定した人生を送れる人も多かったが、いまは成果主義が主流で賃金も実力次第。働けどいっこうに賃金が上がらなかったり、不況の影響で会社が倒産するということもある。人生が予測不能になり、結婚も、子どもを持つことも当たり前ではなくなっている。

「1990年代以降、企業が新卒採用の数を減らしたことで、就職氷河期世代が生まれました。正社員になれず、非正規雇用で働かざるを得ない人も出てきた。その当時の若者がいまや50代に差しかかろうとしています。

 職が安定せず、収入にも不安があるため、子どもはおろか、結婚をしていない人も多くなりました。そのような状態で親が年をとり、今度は親を介護する必要に迫られている。親子ともども経済的に破綻したり、健康を害してしまうケースもみられます。なんとか親を看取ったとしても、今度は自分が一人の老後に備えなければならない。リスクは続くのです

子どもが経済的に自立していないと共倒れに

 日本独自の“家族”のあり方も、単身リスクを高める要因になっているという。

「子どもが成人したあとでも、親が子離れできずに金銭的な援助をしている家庭もあります。また離婚して実家に戻り、再び一緒に生活するケースもあるようです。反対に、高齢になって子どもの世話になったり、介護の負担を担わせたりすることもあります。このように日本では、家族でお互いに助け合うのが当然という考えがあるのです。

 この考え自体は悪いことではないのですが、子どもが親をいつまでも頼って暮らしている場合、親に経済力がなくなれば共倒れになってしまいます。しかも、100歳まで生きるとなると、多くの親が自分の老後の生活を維持するのに精いっぱいになるでしょう。子どもの生活まで賄うのは、とてもむずかしい。

 子どもが経済的に自立していないと、子ども自身の単身リスクが高まるだけでなく、親自身の単身リスクも高まるわけです

 生活ができなくなったら、公的制度に頼る方法もあるだろう。しかし、日本の社会保障制度は家族単位になっているため、親と同居している無職の子どもは生活保護を受けることができない。たとえ別居していても、親に少しでも経済援助ができると判断されれば、生活保護の申請が下りることは少ない。

 このように「家族」単位の考え方が定着している日本に対し、欧米諸国は「個人」単位で考えるのが一般的だと山田教授は言う。

「ヨーロッパやアメリカなどでは、子どもが成人したら家を出て経済的にも精神的にも自立するのが当たり前と考えられています。もし生活に困窮したら、親に頼るのではなく、国の社会保障に頼ります。西ヨーロッパ諸国は社会福祉が日本より充実していて、若者や高齢者、社会的弱者へのセーフティーネットがしっかり構築されています」

 終わらない親への経済的依存は、日本独自の課題というわけだ。

子どもや友人など良好な人間関係を構築

「新聞連載で人生相談をしていますが、『子どもが無職でブラブラしている』という相談が結構多い。これには、子どもを甘やかしているだけなので、『突き放して自立させなさい』と回答しています。子どもの賃金が安いため同居も仕方ないという悩みにも、『正社員の職に就くなり、転職するなり、とにかく独立させなさい』と言っています。厳しいようですが、親もずっと生きているわけではないので、子どもには子どもの人生を歩ませるしかないと思います

 反対に、子どもに経済的側面で頼っている親もいるだろう。その場合でも、山田教授は、もし年金だけで生活できないなら、働くべきという。「子どもに頼りすぎていると、家族関係にヒビが入ることもあります。子どもは子どもで将来の単身リスクを抱えているのです」

 単身リスクを軽減するためにもっとも大切なことは、「良好な人間関係の構築」と山田教授は強調する。

「夫婦の場合、伴侶が亡くなると話し相手がいなくなる。日常的に悩みを相談できる友人がいるのがベスト。趣味をつくるなど、積極的に地域コミュニティーに参加するのもいいと思います。子どもの存在にとらわれすぎず、親子でお互いが自立した生活を送ることが大事です」

 経済的、精神的な破綻を来さないよう、いまから単身リスクに備えよう。

単身リスクに備えるには

 知っておきたい2つのこと

●子どもに頼らず、頼らせない

 子どもに老後の面倒や介護を頼むという発想をやめる。その一方、無職や低収入の子どもとの同居、金銭的な支援をしない。安定した職に就いてもらい、自立してもらうことが鉄則。

●経済基盤を固める

 年金と貯蓄だけでどれくらい暮らしていけるか、事前にチェック。厳しいようなら、元気なうちは経験を生かせる仕事や高齢者向けの仕事をするなど、生活の維持を図るようにする。

教えてくれたのは…山田昌弘先生 1957年、東京都生まれ。東京大学文学部卒業。中央大学文学部教授。専門は家族社会学。主な著書に『

パラサイト・シングルの時代

』『

希望格差社会〜「負け組」の絶望感が日本を引き裂く

』(共に筑摩書房)、『

家族難民〜中流と下流〜二極化する日本人の老後

』(朝日新聞出版)など、多数。

取材・文/佐久間真弓

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