衆院本会議後、立憲民主党にあいさつに訪れて握手する石破茂首相(左)と野田佳彦代表=20日午後、国会内 22日に会期末を迎える通常国会は、少数与党の自民、公明両党が綱渡りの運営を迫られ、異例尽くしの展開となった。予算や法律を成立させるため、野党各党との個別協議で譲歩を連発。ただ、最終盤では「ガソリン減税」を巡り、野党に「数の力」を見せつけられた。
前半国会で、与党にとって最大の難関は2025年度予算の成立に向け、野党をどう取り込むかだった。与党は昨年12月、国民民主党に「年収の壁」見直しとガソリン税の暫定税率廃止を約束。24年度補正予算への賛成を引き出したが、25年度予算の審議と並行した「壁」見直しの協議は難航し、国民民主の協力は見込めなくなった。
代わって、与党が照準を定めたのが日本維新の会だ。高校授業料の無償化に関する合意を結び、衆院採決を目前に予算自体を修正。維新は賛成に回った。
政府による異例の方針転換もあった。石破茂首相は、参院への予算送付後に高額療養費制度の見直し凍結を反映した再修正を決断。少数与党の下、世論の反発に抗しきれなかったためだ。
政府提出の法律では、立憲民主党と協力する場面もあった。与党は年金制度改革関連法について、立民の主張を受け入れ成立させた。
少数与党の悲哀を味わったのは、ガソリン税の暫定税率廃止法案を巡る混乱だ。会期末が迫る11日に野党7党が共同提出。与党が衆院財務金融委員会での審議入りを渋ると、野党は井林辰憲委員長(自民)の解任決議を提出、可決させるなど「数の力」で強引に押し切った。
最終的に、廃止法案は20日に衆院を通過し、参院で審議入り。国会閉幕直前の週末も委員会が開かれることになった。
江藤拓前農林水産相の辞任も、数で勝る野党に首相が屈した一例だ。当初は続投を模索したものの、野党が不信任決議案の提出をちらつかせると、更迭を選ばざるを得なかった。
一方、立民は内閣不信任決議案の提出を見送った。衆院解散を誘発する可能性があり、野田佳彦代表は準備不足で敗れる「リスク」を考慮。党内から「弱腰」との批判が出るなど、「数の力」を最大限生かせなかった点で課題も残した。
参院選後も、衆院で与党が過半数を割り込む構図は変わらない。法案ごとに野党と個別に交渉する必要があり、自民幹部は「交渉相手を一つに絞れない」と嘆息。今秋に見込まれる臨時国会でも難路が続くと予想した。

衆院本会議後、国民民主党の玉木雄一郎代表(左)へあいさつ回りに訪れた石破茂首相=20日午後、国会内

衆院本会議後、日本維新の会にあいさつに訪れて握手する石破茂首相(右)と前原誠司共同代表=20日午後、国会内