農林水産省 流通の円滑化を目的に、農林水産省は14日、21万トンの備蓄米放出に踏み切ると発表した。消費者は高騰するコメの値段が下がると期待を寄せるが、供給量が増えて価格が急落すれば農家の収入減につながりかねない。農水省は供給と価格の安定を図る難しいかじ取りを迫られる。
「需要に見合うだけのコメは確実に日本にあるが、流通がスタック(目詰まり)して、消費者に高い値段でしか提供できていない」。江藤拓農水相は14日、21万トンの放出を決めた理由を述べ、追加放出も辞さない考えを表明した。
総務省の小売物価統計調査によると、「コシヒカリ」(東京都区部、5キロ当たり)の価格は、2023年は2000円台前半で推移したが、地震や台風などの影響で24年夏ごろから急上昇。同年9月に3000円を超え、今年1月には4185円に達した。
価格高騰が続く背景には、値上がりを見込んだ業者間の調達競争がある。宇都宮大農学部の小川真如助教は、備蓄米放出の効果について「売り渋ってコメを抱え込んでいる業者や農家は手放すのではないか」と指摘。店頭価格が一斉に下がる可能性は低いものの、「徐々に値下がりする」と予想する。
ただ、農家側からすれば、多くの食品の値上げが進む中でコメの価格は低迷し、負担が増す肥料や燃料などの費用が十分転嫁されてこなかった実情がある。消費者物価指数のうち「米類」は24年(平均)に前年比27.7%の大幅上昇となったが、22年は4.3%下落、23年は「パン」が8.1%上昇したのに対し、3.8%の上昇にとどまっていた。
江藤氏は「供給過剰になり、急激な価格変動をもたらすこともよくない」と説明。初回は15万トンを放出し、需給動向を見極めて残る6万トンの放出時期を探る構えだ。