画像はイメージです こんにちは。結婚相談所「マリーミー」で代表を務める植草美幸です。『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)での特集をはじめ、各種メディアで見たことがある――なんて方もいらっしゃるでしょうか。
マリーミーは設立16年となり、現在では年間約6500件もの結婚や恋愛にまつわる相談を受けています。これだけの相談を聞いていると、多くの問題はいくつかの類型に分けられ、それぞれに存在する鉄板の解決策が見えてくるものです。人間関係は十人十色のようで、対応には同工異曲の趣があります。
リニューアルした本連載では、「結婚後のリアル」な悩みにお答えしていきます。ただ、結婚や同棲中の方だけでなく、お相手選びに迷いのある婚活中の方にも参考となるよう、手加減なしの“辛口”モードです。心してお付き合いくださいね。
◆結婚生活での最大の鬼門「お金問題」
結婚生活の行く末を左右するのは、結局「お金」の問題です。夫婦の悩みはお金の問題に始まってお金の問題に終わる――そう言い切ってもよいほど。
ほかの悩みも大小さまざま発生するものの、お金の問題こそがその解決難易度と頻出ぶりから、最大の鬼門といえるでしょう。
もちろんドメスティック・バイオレンスは問題外の一大事ですが、DVは解決ではなく「逃げること」が大切。今悩みを抱えているなら、この記事を読むより相談機関にアクセスしてください。
本題に戻り、今回は「金銭感覚のズレ」をテーマにお届けします。なお、本記事は番外編として結婚“前”の予防策の紹介です。
ただし、すでに結婚して不満を抱えている方にとっては、「どうして揉めてしまうのか」の原因追求の一助となるとも思いますので、ぜひご一読ください。
◆特売の「うぐいすパン」を買ってくる夫…
先日ある女性から、「結婚後に幻滅してしまった」というお悩みを聞きました。小声でしか言えませんが、その話を聞いたとき、つい大笑いしそうになってしまったのをこらえるのが大変でした。
もちろん、真剣なお悩みを笑うなどあってはなりません。しかし、「夫がスーパーで特売のうぐいすパンを買ってくるんです……」と深刻な面持ちでおっしゃるんです。
思いつめた表情と、「うぐいすパン」の気の抜けた響きのアンバランスさに、つい笑い声が出そうになってしまいました……。
ところが、詳しく話を聞いていくと、非常に“あるある”のお悩みかつ、軌道修正がきわめて困難なタイプの問題が背景にありました。
◆“うぐいすパン男”に困り果てていた
2人は恋愛結婚だったそうです。マッチングアプリで知り合って、1年ほど交際したのちに、婚姻届を提出。
恋人時代、それはそれは楽しいデートばかりが続き、「この人なら」と思って結婚生活をスタートさせるも、想像した暮らしぶりとはまったく異なっていたと言います。
想定外の暮らしぶりを象徴するエピソードこそが、「スーパーのうぐいすパンを買ってくること」だったのです。うぐいすパンとは、あんパンの一種なのですが、物価高の今でも安価で売られていることが多く、安いスーパーなら100円弱で買えるでしょうか。期限切れ間近の値引き品なら、70円くらいで買えるかもしれません。
彼女は、この「激安パン」が許せなかった。すなわち、食費に対する考え方が相手とまるで異なっており、折り合いがつかないことに困り果てていました。
さて、ここまでのわずかな情報だけで、実はすでに危険なニオイのする要素があるのですが、皆さまはわかるでしょうか?
◆「楽しいデート」に終始しては…
ヒントは、「楽しいデートばかりが続いた」の部分にあります。当然、デートは楽しいほうがうれしいものでしょう。「それのなにがダメなの?」と思った婚活中のあなたは、要注意です!
「楽しいデート」は、十中八九以上の確率で「遠足デート」とイコール。遠足デートとは、私が会員さんによく言っている造語で、「どこかに出かけて行ってその場を楽しむだけで、お互いの人生観を話し合わないデート」のことです。
ディズニーランドで遊ぶ、水族館へ出かける、映画館に行く、プールに行く……。もちろんこうしたデートがいけないのでは一切なく、その場の会話しかせず、価値観の擦り合わせをしていないことが問題なのです。
将来を考えない十代の恋愛ならいざ知らず、結婚願望を抱きながらなお、そのようなデートに終始していると、いつまで経っても結婚できないか、あるいは結婚後に苦い思いをすることになっても致し方ありません。
女性から当時のデートの詳細を聞くと、案の定でした。それこそ、「ブーランジェリー(高級ベーカリー)デート」にも行っていたにもかかわらず。
◆多少値段は張るけど「非日常のデート」ならば…
スーパーのパンコーナーや街のパン屋さんに比べると、ブーランジェリーはお値段が張るものです。とはいえ、イートインスペースで2人がそれぞれパンとドリンクをひとつずつ頼んでも、2000円ほどあれば、都心であっても楽しめます。
つまり、ブーランジェリーは日常使いをするには気負うお値段ですが、非日常たるデートだと考えれば、そうお高いものではないでしょう。
彼女はこの「非日常のデート」を基準に、結婚後の生活もそうあるものと思い込んでしまい、結婚後に幻滅してしまったのです。
せっかくブーランジェリーデートをしたのであれば、「いつもはどこでパンを買っているの?」といった話題などを振って、相手の普段の暮らし向きと価値観を探るべきでした。
こうした会話をきっかけにして、リアルなお互いの本音やその食い違いが炙り出されます。すると「楽しいだけのデート」から一皮むけ、一歩二歩踏み込んだ「大人のデート」になるのです。
◆抜き打ちで「冷蔵庫チェック」をすべき理由
ただし、デートでは「見栄っ張り」になりがちなのも事実であり、彼女ばかりが悪いとも言えません。そうしたタイプほど、「完璧な恋人」のように映りますから、うつつも抜かしてしまうのでしょう。口も達者で、前述した会話をしても、上手にかわされてしまう可能性も高そうです。
これを見抜くには、「冷蔵庫チェック」が一番です。できれば、事前の約束などもせず、「抜き打ち」に近い形で確認できればベスト。相手の家の近くをデート場所に設定して、その流れで行ってしまいましょう。
冷蔵庫のラインナップを見れば、日々の生活習慣を想像するのは難しいことではありません。
単純に自炊習慣があるかどうかだけではありません。食料品や調味料の種類や数にくわえ、そのブランドも重要な情報源です。
充実した庫内であっても、聞いたことがないブランドや激安の商品ばかりがひしめいている……。そんな人は、調理能力はあっても、コスパ第一主義かもしれません。
対して、有機栽培の野菜だったり、取り寄せでのみ買えるこだわりの商品などが混ざっていれば、まずコスパ第一主義ではないと読み取れます。
言わずもがな、どちらが「理想的」といった話ではありません。あくまで2人の生活感覚や金銭感覚が一致しているかどうかの確認です。
◆スーパーで買い物し、なにを買うか観察しよう
この時点で、自分の思い描く結婚生活とは感覚が異なりそうであれば、やはり「大人のデート」を始める時。
「相手の冷蔵庫の中身にケチをつけるようで……」と気がひけるなら、その足で一緒にスーパーへ行ってください。当日の夕飯の買い出しだけでなく、ついでに日用品のストックも買うことを提案し、そこで「なにをどのような基準で選ぶか」を観察しましょう。
その上でもまだ、「見栄っ張り」な選択をしていたら、勇気を出して切り込むことです。例えば、高級な卵を手に取っていたら、「さっき冷蔵庫に残っていたのは普通の卵じゃなかったっけ?」とでも聞けば、「普段は気にしないけど、一緒に食べるならおいしいものがいいかなと思って」くらいは引き出せます。
すると、食に関する価値観であったり、エンゲル係数がどのくらいなのかまで話を展開することさえ、さほど難しくなさそうだと思いませんか? それでも怖くなる気持ちはわかります。けれど、結婚後に調整をするほうがよほど大変ですから、頑張りどころです。
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相手との結婚を考えるなら、打ち解けた段階で生活感の見えるデートをなるべく早々に行い、違和感があればすかさず話題に出すこと。
知り合ってから時間が経てば経つほど、お互いのことを勝手に「わかったつもり」になり、すなわち目がどんどんと濁っていってしまいますから。
結婚は、日常の共有が99%です。結婚願望があるのなら、デートという非日常の1%での振る舞いばかりに気を取られてはなりません。日々の暮らしの感覚をチューニングするくらいの気概で、交際期間を過ごしてくださいね。
<TEXT/植草美幸>
【植草美幸】
結婚相談所マリーミー代表取締役、恋愛・婚活アドバイザー。 1995年にアパレル業界に特化した人材派遣会社エムエスピーを創業。そこで培ったマッチング能力・人材発掘力を生かし、2009年に結婚相談所マリーミーを設立。日々カウンセリングを行いながら、セミナーの開催、テレビやラジオへの出演など幅広く活動中。著書に『ワガママな女におなりなさい 「婚活の壁」に効く秘密のアドバイス』(講談社)、『モテ理論』(PHP文庫)など