写真/産経新聞社週刊文春で闇献金について告白したのは、石破首相と同じ鳥取県出身の実業家の息子。石破氏の政治資金パーティ券を、多い年で600万円相当も購入していたが、政治資金収支報告書にはその記載がないという。証言では、収支報告書の虚偽記載に当たるとしても時効成立済みだが、首相の説明責任は免れないだろう。永田町では大騒動となっている問題だが、国民の関心は低い。ジャーナリストの岩田明子氏はその背景にある、石破政権への国民感情の本質を指摘する(以下、岩田氏の寄稿)。
◆永田町は大騒ぎでも国民の関心が意外に低いワケとは?
石破茂首相に3000万円の闇献金を行った──。『週刊文春』が報じた、石破氏の元有力支援者の告白記事が話題だ。記事によると、’03年から約10年にわたって毎年数百万円単位でパーティ券を購入したほか、100万円の現金を秘書に渡すこともあったという。だが、政治資金収支報告書に、その元支援者や関係会社の名前は見当たらない。
石破氏は「そのような事実はない」と否定しているが、当然のことながら野党は大騒ぎ。もはや政治倫理審査会への出席は避けられないだろう。
だが、永田町と対照的に、国民は冷めた目を向けているように感じてならない。10年以上前の疑惑だという理由もあるだろうが、「またか」という思いが強いのではないか。
政治とカネの問題で自民党が大敗した衆院選のあと、石破首相は新人議員に10万円の商品券を配っていた。物価高で国民が窮するなか、一貫して減税には後ろ向きで、コメの価格が高騰しているのに、農水族の石破首相は効果的な対策を打てていない……。これでは期待のしようもない。
◆闇献金疑惑とコメ高騰の板挟みの中で…
ちなみに、コメ高騰の対策としてコメの輸入拡大が選択肢として挙がっているが、これは食料安全保障の流れに逆行する恐れがある点に注意が必要だ。輸入米に押されて、世界に冠たる日本のブランド米の生産も細りかねないからだ。
実は、中国の習近平国家主席がコシヒカリのファンであることは、外交筋では暗に知られる事実だ。小泉政権時代には当時の国家主席に魚沼産コシヒカリと日本の炊飯器を贈っていたとも聞く。そんな日本のコメを守りながら価格高騰をどう防ぐか? この難問を解決できなければ、夏の参院選の惨敗は避けられない。
とはいえ、野党も厳しい立場にある。石破・自民のまま夏の参院選を迎えたいところだが、不信任案を突きつければ、“顔”が代わってしまう可能性もある。だから、野党は生かさず殺さずの姿勢で石破政権と対峙してきたのだ。裏を返せば、日本が抱える政治の閉塞感の原因は野党にもある──そう思えてならない。
【岩田明子】
いわたあきこ●ジャーナリスト 1996年にNHKに入局し、’00年に報道局政治部へ。20年にわたって安倍晋三元首相を取材し、「安倍氏を最も知る記者」として知られることに。’23年にフリーに転身後、『安倍晋三実録』(文藝春秋)を上梓。現在は母親の介護にも奮闘中