
いま、SNSなどで広がっている“独身税”という言葉、ご存じでしょうか。政府の子育て支援金制度をめぐって、「独身には恩恵がない」との反発から生まれた言葉ですが、みなさんはどう考えますか?
全世帯負担の“独身税” 街の声は…11日の党首討論。ある“キーワード”をめぐって論戦が…
日本維新の会 前原誠司共同代表
「子ども・子育て支援制度は恩恵が子育て世代に集中して、独身の方々に恩恵がないのに負担が増えるというので、“独身税”とちまたで言われていると」
石破茂総理
「ちまたで“独身税”ということを言われているらしい。独身の方に限って課税なんか致しませんから。そのようなことはございません」
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“独身税”。そう揶揄されているのは、来年4月から始まる、国の「子ども・子育て支援金制度」のこと。
私たちが毎月支払っている医療保険料に平均で250円から450円を段階的に上乗せし、児童手当の拡充などに充てる新たな仕組みです。
しかし、独身の人にとっては負担増になるだけだと、SNSなどで批判が上がっているのです。
街の人は…
独身・専門学生(20)
「結婚してたらありがたいけど、結婚できる保証ないし払いたくない」
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独身・接客業(24)
「ちょっと嫌。逆に結婚しようかなと背中を押されるのかなというのはあるかも」
独身・フリーター(28)
「子どもが好きなので、役に立てばいいかなと思うので何も思わない」
営業職 第1子妊娠中(32)
「金額としてはそこまで大きいものではないと思うが、何に使われてるのかが、もっと誰から見ても分かるようになれば、納得感や働いてそこに還元されるならいいかなって思えたり」
“独身税”との批判に国は…
三原じゅん子 こども政策担当大臣
「少子化対策・子育て政策が子どもを持つ方だけでなく、社会保障を含めた社会全体を支えるものであり、全員にメリットがあることが、国民の皆様に十分届いていないということによるものだと、そこは率直に反省をしたいと考えている」
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問題の根幹は“少子化”です。
去年1年間に生まれた子どもの数は、初めて70万人を割り込んだうえ、1人の女性が生涯で出産する子どもの数を示す「合計特殊出生率」も1.15と過去最低を更新しました。
なぜ子どもが増えないのか、街で聞くと…
主婦(31)
「大学までとなると何千万円かかることを考えると、(子は)1人かなと」
主婦(28)
「出産までで50万円補助があったとしても、その倍ぐらいかかって出産したので、もうちょっと手出し少なくしてもらえれば、もう1人考えられるかな」
独身・専門学生(20)
「私あまり子どもほしいと思わない。経済的にもそうだし、育てていける自信がない」
4歳の子を持つ会社員(28)
「(2人目を)考えてはいるが、仕事の面とかなかなか時間が取れなくて。娘が2歳の時か
ら単身赴任で、東京と福岡になってるんで、そこは大変」
2人の娘を持つ会社員(26)
「女の子、女の子なんで、自分としては男の子が欲しいって気持ちもあるが、経済的に3人となるとハードルが高いので、なかなか渋ってるところ。人並みぐらいの年収はあるが、なかなかきつい。何するにも、家賃とかも高いですし」
難題だらけの少子化対策。打つ手はあるのでしょうか。
植草氏「子育て支援が“個人の負担”に疑問」藤森祥平キャスター:
みなさんの考え方が様々で、その一つ一つにそうだなと思ってしまいます。
来年4月に始まる「子ども・子育て支援金制度」は、毎月支払っている医療保険料に上乗せして平均250円から450円ぐらい、段階的に徴収するというものです。
街の意見は…
▼独り身は控除がないし子どもがいないのに何でって思う
▼少ない給料からとられる。別の財源をまわせないのか?
▼結婚・出産だけでなくいろんな選択肢がある
結婚したい・したくない/出産したい・したくないの意見は尊重されてしかるべきですが、これらにより“独身税”という表現が広がってきています。
小川彩佳キャスター:
そうですね。どこかに特別上乗せされる訳ではなく、世代を問わず負担を分かち合う仕組みなのですが、“独身税”というふうにも言われてしまう。植草さん、これにはどういった背景があるんでしょうか?
婚活アドバイザー 植草美幸さん:
私は日本全体での少子化だと思っていて、とても危機感を感じています。
税金もその後の使い道が重要で、それが産む/育てることに安心感を持てるような使い方をしてくれるのであれば、いいのではないかなというふうに思います。
藤森キャスター:
これだから、こうした少子化対策に向けた取り組みを分かち合うことへの違和感はどうしても拭えないですよね。
地域エコノミスト 藻谷浩介さん:
「子どもを産む人だけの問題で、独身者にはメリットがない」と言う人がいますが、それは「あなたの年金にも関係あるでしょう」と思ってしまいます。
しかし、それよりも子どもが減って一番困るのは個人ではなく人手不足の企業や、税金を払う人が減る政府のはずなのに、子育て支援が個人の負担であることに疑問を持っています。
私は今、目先で一番困ってるのは企業なんだから、例えば黒字の企業が払っている法人税を次元的に上乗せして子育て支援に回したらいいと思うのですが、財界は反対しますかね。
もし反対するとなると、これは「“独身税”で俺には関係ない」と言ってる人よりもっとまずいと思います。こっちの方が、自分が当事者だとわかってないですよね。
小川キャスター:
先に負担するべきところや、やるべきことができていないから、こうした“独身税”という言葉もできているんでしょうか。
地域エコノミスト 藻谷さん:
そうですね。個人の年金が減るのは何十年後なので、何だよと思うかも知れませんが、企業は今目の前で困ってるはずなのに、なぜ自分たちで負担する話が出てこないのかなと思います。
藤森キャスター:
今月発表された厚労省のデータによると、去年1年間に生まれた子どもの数は68万6061人で初めて70万人を切りました。一昨年に公表した出生数の予測だと2039年に68万人になるんじゃないかと言われていたので、予測より15年も早まっています。
植草さんのもとには結婚したいという方が年々たくさん集まっていらっしゃると思うんですけど、いかがでしょうか。
婚活アドバイザー 植草さん:
私のところには、結婚したいと思う方しかいらしてないですけれども、これまで恋愛をしてこなかったっていう方が非常に増えてます。
それには日本の産業や文化の変化など様々な理由がありますが、その中でも1人で遊べるようになったことが大きいです。例えばスマホやパソコンを見たり、ゲームをしたり、アニメを見たりとか、1人で遊ぶようになってからはそれで十分楽しむことができて、あまり異性に興味を持ったりとかしなくなっていると思います。
あとコミュニケーション力がものすごく低下しています。このコロナ禍でリモートワークが多くなったことも理由として多少あるかと思うんですが、なかなか出会いのチャンスがあっても、人に話しかけられない方がいらっしゃいます。
藤森キャスター:
相談に来る人が増えれば、巡り合う相手のタイプも様々になって、機会が増えるんじゃないんですか?
婚活アドバイザー 植草さん:
と思うんですけど「この方とお会いしてね」と用意をしても、うまく交際まで進めていけないです。
藤森キャスター:
なぜでしょうか?
婚活アドバイザー 植草さん:
男性は「女性からどう見えているか」の意識をあまりしていない方が非常に多いです。
立ち姿や仕草、まず見た目を全然気にしてないので「こういう風にしてくれれば、女性受けするのにな」というファッションをしていない。そもそも恋愛をしてないので、異性にどういうふうに見えるのかを意識していないので、男性はまずそういうところから直した方がいいと思います。
女性は女性で、どちらかというと男性がエスコートしてくれると思い込んで、自分からは積極的に動かない、ただ待っているだけの方が非常に多いです。
あとは、恋愛で傷つきたくない方が非常に増えています。
振ったり、振られたりのドロドロのシチュエーションを経験していないのに、勝手にイメージして「時間がもったいない」「傷つくのがつらい」と自分を守ろうとする方が非常に増えています。
ご相談にいらっしゃる方に過去の恋愛事情についてお聞きすると、3〜4割は「恋愛したことありません」とおっしゃります。
高校生や大学生のときには2人で食事するぐらいの人はいたけども、その後社会に出てからは、全く異性と関わっていない方が多いですね。
小川キャスター:
そしてすれ違ってしまうと。
婚活アドバイザー 植草さん:
はい。男性同士で遊んだり、女性同士で美味しいものを食べに行くこととかに喜びを感じているようですね。
地域エコノミスト 藻谷さん:
私はイケていない若者でしたので、今の若者の気持ちが分からないわけではないのですが、最初の話は昭和に戻ってる感じですよね。女性の目を意識しない男。男がエスコートしてるのを待ってる女って、昭和の少女漫画のままですか。
婚活アドバイザー 植草さん:
そうかもしれません。誰かがしてくれないとあまり動かないですね。
でも、どちらかというと昭和の方が男性が女性に勝ってませんでしたか?男性から女性に声をかけて…
地域エコノミスト 藻谷さん:
声をかけないといけないっていう雰囲気はありましたね。
婚活アドバイザー 植草さん:
そうですよね。それは、今はあまりないです。
小川キャスター:
時代は移ろっているのに、昭和のままの感覚なのはどういうことなんでしょうか。
婚活アドバイザー 植草さん:
今は、知らない人から声をかけられるのが、まず怖いんですよ。昭和は全然平気でしたよね。
地域エコノミスト 藻谷さん:
私はどちらかというと今っぽい性格だったのですが、でもやっぱり体の中には衝動があって、女の人とねと思っていると結婚できて、やっぱりしてみて幸せだったなと思います。
つまり、今の人はそのような衝動がないっていうことですよね。
小川キャスター:
時代は移ろっているのに、昭和からマインドとして変わっていないところがあるのかもしれませんね。
婚活アドバイザー 植草さん:
ご相談にいらっしゃる方に、お相手の条件や年収の希望を聞くと、高望みしている方が多いです。
大体、女性は男性に対して、最低でも400万円以上、多くの女性は600万以上と書きます。400万円以下だとかなり厳しいです。400万円でも、家事を手伝ってくれるとか、ものすごく優しいとか、何かしらプラスのものがないと難しいかもしれません。
地域エコノミスト 藻谷さん:
これもなんかずいぶん昭和っぽくないですか。
女性が自分より年収が高いところがいいと言ってるわけですよね。逆に十分低くてもいいんで協調的で、変なマウンティングしてこない男がいい人は増えてないんですか?
婚活アドバイザー 植草さん:
実際に増えてはいます。年収の高い女性がどんどん増えてきているので、家事をしてくれるならその分いいよ、という方はいらっしゃいますが、まだまだ自分よりも年収が上の男性の方ががいいという方が多いです。
地域エコノミスト 藻谷さん:
男性側はどうですか。自分より年収低い方がいいみたいな人っているんですか。
婚活アドバイザー 植草さん:
10年ぐらい前は、自分より年収の高い女性は嫌という方もいましたが、最近だと逆転していて、女性が自分よりも年収が高くていい/高い方がいいという方が、9割を超えています。
地域エコノミスト 藻谷さん:
驚いたことに、男の方が昭和を出してきていると。
小川キャスター:
今日「男女平等ランキング」が発表されて、日本は148か国中118位で、先進国各国7か国の中では最下位でした。
男女平等がこれだけ謳われているのにマインドや社会構造が変わっていないことが、ミスマッチにも繋がっている気もしますね。
婚活アドバイザー 植草さん:
そうだと思います。どうしてもまだ女性は何となく大和撫子が残っていて、待っているんですよね。“マチ子”と“マチ男”なんです。男性が声かけてくれるよね、結婚できるよねと思っていて、気がついたら「残念」となっているので、男性はぜひ女性に声をかけて欲しいし、女性も自分の意見を言って、それなりの方がぽっと現れたらお声をかけるとか、そういう時代になってほしいと思います。
地域エコノミスト 藻谷さん:
もうちょっと気楽に考えた方がいいですよね。
家賃が高すぎて3人目の子どもを育てられないと言っていましたが、地方に行くと安い家賃で住めるので、家賃の高い東京を出るということも、気楽に考えてもいいんじゃないかと思います。
小川キャスター:
少子化の根は深いな、というふうにも感じます。
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<プロフィール>
植草美幸 さん
婚活アドバイザー 結婚相談所マリーミー代表
相談件数 年2000件超
藻谷浩介 さん
地域エコノミスト 少子化問題に詳しい
(株)日本総研主席研究員