写真もし嫌いな上司の弱みを握ってしまったら、あなたならどうしますか? 今回は、そんな経験をした女性のエピソードをご紹介しましょう。
◆イライラをまき散らす“嫌いな上司”の不倫現場
会社員の田中芽衣さん(仮名・28歳/未婚)は、上司の既婚男性である原田課長(仮名・39歳)が苦手で、日頃からストレスを感じていました。
「原田課長は、自分の失敗を決して認めず謝らないし、さらにその失敗を平気で部下になすりつけたり、感情的になってすぐイライラをまき散らして場の空気を台無しにするような人で、本当に一緒に働いていると嫌な気持ちになるんですよね。さらに太っていて、口も臭いんですよ」
そんな鬱憤(うっぷん)が溜まっていた芽衣さんは、週末に学生時代から仲の良い女友達に誘われて居酒屋に飲みに行ったそう。
「仕事の愚痴も友達に聞いてもらって、だいぶスッキリしたところで私がトイレに立つと、運悪く使用中だったんですよね」
そしてぼんやりトイレが空くのを待ちながら、ふとテーブル席の方に目をやると……。
◆女性にキスをしながら囁く上司を見ちゃった!
「カップルがケンカになったのか、女性が泣いていて、それをなだめるように男性が女性を引き寄せて、頬にしきりにキスをしながら耳元で何かを囁いていて。でも、あれ? と思ってよく見てみたら、それがなんと原田課長と、うちの派遣社員の南さん(仮名・26歳/未婚)だったんですよ!」
「嘘でしょ? 原田課長と南さんが不倫? 信じられない!」と呆気にとられていると、原田課長がふとこちらを見てきて、芽衣さんと目が合ってしまいました。
◆その後、上司の態度が明らかに変わっていて
「ヤバい! と思ってすぐに原田課長たちに背を向けました。そしたらトイレが空いたので慌てて中に入ったのですが……正直、私が目撃してしまったことがバレてしまったのか、目が合ったのはほんの一瞬だったのでバレていないのか、微妙な線でした。トイレから出るともう2人はいませんでしたね」
そして週明けに出勤してみると、芽衣さんに対する原田課長の態度が明らかに変わっていたそう。
「露骨に愛想が良くなっていて『あぁ、やっぱりあの時に目が合ったのが私だと気がついたんだな』と思いました。でも私にだけ急にニコニコ優しく接するようになったら、他の皆におかしく思われるからやめてよって感じで」
「よっぽど南さんとの関係をバラされたくないんだな」と思った芽衣さんは、あの日見たことは胸の中にしまっておいてあげようと思いました。
「原田課長が私のご機嫌取りをしているうちに、他の皆にも柔らかい態度で接するようになって仕事がやりやすくなったので、まぁいいかなと。不倫は良くないことですが、部外者の私がとやかく言うことでもないかなと思ったんです」
◆数週間後、不倫を「バラした」ワケは
ですがそれから数週間後。また原田課長の管理能力が足りないせいで仕事が上手く回らず、イライラした彼が芽衣さんに嫌味を言いながら強く当たってきたそう。
「その少し前から、ちょいちょい以前のような横柄な態度が顔を出すようになってきていて……きっと私がもう原田課長の不倫を皆にバラさないと安心しきって、図に乗ってきたのかな? と思っていたんですよね。いや、そんなわけないだろ? と頭にきて、つい部内でいちばんおしゃべりで噂好きの女性へ、事細かに話してやったんですよ」
すると瞬く間に噂は広まり、部内で原田課長と南さんは変な目で見られるようになりました。
「南さんは同僚たちに『変な噂が広がっているみたいだけど、断じてそんな事実はないんです。デマを信じないでください』と言いまくり、懸命に火消しをしているようでしたね。原田課長はすっかり高圧的な態度に戻り、私への当たりは当然厳しいですが……私の仕返しのせいで上層部に呼び出されたりと相当面倒なことになったと思うので、正直胸がスッとしたなって感じです」
◆鬼の形相でスゴんできた「まさかの人物」
そんなある日、芽衣さんが会社のエレベーターで下に降りようとしていたら南さんが駆け込んできて2人きりになったそう。
「そしたらいつも大人しくてほんわかした雰囲気の南さんが鬼の形相で『バラしたのお前だろ! 舐めたマネしてんじゃねーよ!』と私に向かってスゴんできて……その迫力がもの凄くて腰を抜かしそうになるほど怖かったんですよね。
すぐに他の階の人が乗り込んできたので大丈夫でしたが、あれ以来南さんが怖くて。絶対に2人にならないように気をつけているんですよ」
ですがそんな噂も数ヶ月で鎮火し、今ではもう誰もそのことを話題にしなくなりました。
「今でもあの2人が付き合っているかは分かりませんが……もしかしたら、あの南さんのギャップに原田課長はハマってしまったのかな? なんて余計なことを考えてしまう時があります」と苦笑いする芽衣さんなのでした。
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop