小説の「羅生門」や「良識派」が掲載されている「現代の国語」の教科書 論理的、実用的な文章を通し「話す・聞く・書く・読む」能力を育成する「現代の国語」は、学習指導要領改定に伴い2022年度から導入された。文部科学省の想定と異なる「小説」を掲載した教科書は前回教科書検定の2点から9点に増加。教科書会社担当者は「手探りだった」と語った。
18年の学習指導要領改定の際、「国語総合」は現代の国語と、小説や漢文・古文を学ぶ「言語文化」に分かれた。文科省は前回21年の検定に当たり、現代の国語について、評論や新聞記事などの掲載を想定し、「小説など文学的な文章は除く」と説明していた。
しかし、前回の検定で教科書17点中2点が小説を載せた上で合格。第一学習社(広島市)は5作品を載せて採択占有率も16.9%とトップになり、文科省と業界団体間で混乱が生じた。
今回は18点中9点に小説が載り、掲載した教科書会社は前回2社から6社に増えた。
筑摩書房(東京都台東区)は4作品を載せ、芥川龍之介の「羅生門」には「学習指導要領の示す『書くこと』に照らし扱いが不適切」との検定意見が付いた。同社は、小説を通して臨場感のある報告を学んだ上で「報告文を書いて発表しよう」などと追記して対応した。
小説を掲載した部分への同様の意見は、他社の教科書も含め計10件付いた。ある教科書会社担当者は「学習指導要領にどう対応すべきか分からず、手探りの検定だった」と明かす。学習指導要領についても「小説だけ切り離すのは、教育現場の実情に合っていない」と批判した。
文科省は「本来は小説の掲載は想定していなかったが、一切禁止しているわけではない」とし、「掲載する場合は読解に終始してはならない」としている。