日本学術会議事務局=東京都港区 2020年の会員候補者6人の任命拒否をきっかけに持ち上がった日本学術会議の組織改編は、約5年の時を経て「国の特別な機関」から特殊法人化することで決着した。政府は「自主性や自立性に配慮しつつ学術会議の意見を反映させた」としているが、学術会議側は活動の独立性や財政基盤など「必要な要件を一部満たしていない」として、国からの介入に懸念を示している。
学術会議側は21年4月、国を代表する学術機関として(1)国費による安定した財政基盤(2)活動面での政府からの独立(3)会員選考での自主性・独立性―など五つの要件が必要だと提示。これらを満たしていれば、法人化に必ずしも反対しない姿勢を示した。
政府は新法について「会員選考を学術会議だけでできる。法人化により柔軟な活動が可能になり、自主性や自立性が高まる」と強調。新設の評価委員会や監事については「法人が適切に運営されるための必要最小限の仕組みで、国の介入を許容するものではない」と説明する。
これに対し、梶田隆章・前学術会議会長は今年5月、衆院内閣委員会の参考人質疑で「新法案には『独立』という文字が消えており、運営の自主性、自立性は配慮義務にとどまっている」と指摘。「(学術会議が示した)五つの要件のうち、三つか四つに懸念を表明せざるを得ない」と訴えた。
年間10億円程度とされる財源についても、「(政府は)必要と認める金額を補助できる」と規定しているものの、十分かつ安定的な支援が継続されるかは不透明だと受け止める会員らも少なくない。
政府は寄付などの外部資金も得られるとしているが、今月3日の参院内閣委に参考人として出席した川嶋四郎同志社大教授は「寄付文化が十分でない日本においては、財政基盤が脆弱(ぜいじゃく)化する」と指摘した。