首を吊った元NFLスター、アーロン・ヘルナンデスは精神変容ドラッグ「スパイス」に侵されていた?

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2017年04月26日 18:23  ニューズウィーク日本版

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人をゾンビのように変えてしまうことからゾンビドラッグとも言われるドラッグ「スパイス」には、他にも「フェイクウィード(ニセ大麻)」、合成大麻、K2など、多くの名がある。その正体は、天然の大麻に似せて化学的に合成されたドラッグだ。危険な作用が、何年も前から報告されている。


先週は、刑務所の独房で首吊り自殺をした全米プロフットボールリーグ(NFL)の元スター選手、アーロン・ヘルナンデス(享年27歳)の遺体から発見された。検視の結果、殺人罪で終身刑に服していたヘルナンデスの腎臓に残った体液からスパイスの痕跡が見つかったのだ。


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スパイスを使うと、さまざまな副作用や症状に長く悩まされるおそれがある。大麻やタバコのように、火をつけてその煙を吸うことで摂取する。スパイスに含まれる有効成分はカンナビノイドで、米国立薬物乱用研究所によると、新種のドラッグである新規向精神薬の一種だという。「精神を変容させる」作用を持つとされる。


スパイスがカラフルな包装で出回り始めたのは2000年代初頭のことだ。CBSニュースが2017年2月に報じたところでは、現在までに、知られている化合物は150種類以上に達するという。全米各州がこれらの物質を違法薬物に指定しているが、法による取り締まりを回避するため、新たな組成の化合物が次々と登場し、今も街中で取引されているのが現状だ。


手紙に染み込ませた可能性も


ヘルナンデスの場合も、本人が何らかの手段を使い、郵便でこのドラッグを入手することは可能だったとみられる。捜査当局からの情報によれば、液体状にしたスパイスを浸した紙を、手紙として送ることも考えられるという。


ヘルナンデスは2015年4月、婚約者の妹の交際相手だったオーデン・ロイドを射殺したとして第1級殺人で有罪となり、収監されていた(他にも2人を殺した容疑で公判中だったが、自殺する前に無罪になったばかりだった)。


ヘルナンデスの悲劇は、スパイスの犠牲になったスター選手の一例にすぎない。ヘルナンデスと同じく元ペイトリオッツのラインバッカー、チャンドラー・ジョーンズも2016年1月、合成大麻による「悪性の薬物反応」により入院した。


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さらに、ジョーンズの一件のわずか1カ月前には、当時NFLドラフトの有力候補とみられていたミシシッピ大学の人気選手、ロバート・ケムディッチが、アトランタのホテルで「何者かに追われている」という幻覚に襲われ、ガラス窓を破って約4.5m下の地面に落下するという騒ぎを起こしている。下にあった茂みに受け止められ、一命は取り留めた。彼も当時、合成マリファナを使っていたとみられている。


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スポーツ選手以外でも事件は数多い。4月なかばにも、ニュージャージー州ニューアークでスパイスのようなドラッグを使用した約40人が、気分が悪くなったと訴え、死者こそ出なかったものの多くが病院に搬送されて治療を受けた。被害者の多くはホームレスで、捜査当局がこの騒動のもとになったドラッグの提供源について捜査を進めている。


捜査当局によれば、ニューヨーク市のブルックリンやフロリダ州セントピーターズバーグでも、数カ月前から、スパイスの使用や過剰摂取に関する事件が急増しているという。


(翻訳:ガリレオ)


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