PTA改革に挑んだ弁護士「役員の強制は法的に大問題」「本音ぶっちゃけあって」

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2023年04月09日 08:31  弁護士ドットコム

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「入学式の後、教室に軟禁状態にされて、役員が決まるまで出られなかった」 「どうしても引き受けられない人は、保護者全員の前で家庭の事情を話さなければならなかった」


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弁護士ドットコムがLINEでPTAについての意見を募集すると、このような体験談が複数寄せられた。会長として改革に踏み切った所寿弥弁護士は「役員の強制は法的に大問題だ」としたうえで、「PTA会員である保護者誰もが、自由に自分の意見を言う権利がある」と、本音で話し合う必要性を訴える。



改革のために、何をすべきか。話を聞いた。



●入会も活動も「強制」はNG

所弁護士は、PTAの活動はそもそも「任意」であり、強制することはできないと強調する。役員が決まるまで教室に「軟禁状態」にされることは「法的に大問題であり、活動が『任意』ではなくなってしまう」と指摘する。



「役員が決まらなければ、これまでのやり方を変えるなど工夫をすればいいと思います。私がいたPTAでは、役員の選出をしやすくするためにクラスで選抜していた役職を学年全体に広げるという改正をおこないました」



それでも決まらない場合は「そのままでよいのではないか」と考えている。加入自体も本来任意だ。所弁護士がいたPTAにも当初は入会申込書がなかったという。



「市のPTA連合会からも『事前の意思確認なく、自動的に入会させられているという苦情が届いている』との話がありました。そのため、入会申込書をつくり、入学説明会で配付したうえで、加入は任意であり、PTA活動に賛同していただいたうえで入会をお願いしているという話をしました」



結果として、入会しない保護者もあらわれたが、PTA会費から支出している入学・卒業時の記念品については、後で任意に実費の支払いをお願いすることにした。



●「義務ではない」ことが浸透していない

役員を引き受けられない場合は、保護者全員の前で、家庭の事情を言う必要があったという体験談も寄せられた。



「泣き出した人もいました。介護、子どもの引きこもり、持病があるなど、仲の良い人ならともかく、顔見知り程度には言いたくない事情を言っていました」 (関東在住・50代女性)





「活動が『義務ではない』ことが浸透していないために、このようなことが起きるのではないか」と所弁護士は問題視する。



「義務だと思っているからこそ、一生懸命理由を言わないと、役員を任されることから免れられないという風潮になっているのかもしれません。熱心な人であればあるほど、そう思ってしまいがちです。しかし、法律的に考えれば、そのような義務はありませんので、事情を話す必要もなければ、拒否することも自由です」



所弁護士も「自分の所属していたPTAでは、教室に軟禁されたり、人前で理由を言わされたりする事案に触れることはなかったが、役員決めの電話をしてきた人に対して事情を言わなければならない風潮はあったかもしれない」と振り返る。



新年度の役員を決める際は、候補者に電話をかけ、了解が得られなければ、次の人に依頼するという手続きを踏んでいた。断りづらかったり、人には言いにくい事情を話したりする人もいたという。



「学校に苦情の電話が入ったこともあったようです。家庭の事情から、どうしても役員を引き受けることができず、電話がかかってくること自体に負担を感じていた保護者もいたようです」



所弁護士が役員を務めた小学校では、子ども会の役員経験者などは、一定期間はPTA役員をしなくてもよい、などの免除要件があった。ひとり親や外国籍の人などに対する免除はなかったが、どうしてもできない人には依頼しなかった。



●まずは「自由に意見を言ってもらう」ことから

周囲には、弁護士であることを知る保護者も多く、話を聞いてもらえた。しかし、改革のために動いてきた保護者は、所弁護士だけではなかった。法律家に限らず、状況を打破するための道はあるという。



「実際は多くの保護者が負担を減らしたいと思っているにもかかわらず、本音を言いにくい現状があると感じました。『前からやっている人がこう言うから』という理由で、意見を言えなくなってしまう人もいたように思います」



何かを決める会議の前には、「多数決」で決まることを伝えたうえで「経験年数や活動内容に詳しいなどの事情は関係なく、誰もが一票もっている」「自分の意見を言ってほしい」と繰り返した。



その結果、例年、体育館で開催していた総会はなくなり、WEBのアンケートフォームを利用しておこなうことが決まった。椅子を並べたり、準備段階で締切に追われたりするなど、多くの役員経験者が負担に感じている活動のひとつだった。また、総会のたびにPTAの活動内容や規約を記載した冊子を発行していたが、これも廃止し、規約はインターネット上にアップすることにした。





「改革はどんどんやっていったらいいと思います。まずは、自由に意見を言ってもらうところから。保護者全体にアンケートを取ったことがありましたが、およそ7割の人が活動を減らしたいという意見でした。本音で話せば、なかなか言いにくい『活動の負担を減らしたい』などの言葉も出てくると思います。そのような言葉に真摯に耳を傾け、誰もがやりやすい活動に変えていく必要があります」



3人の子どもがいる所弁護士は、小・中学校で会長、副会長や顧問としてPTA活動に取り組んだ。役員を引き受けたのは「子どもの学校生活についてもっと知りたかった」ため。他校でスクールロイヤーをしていることもあり、学校の動きをみるのは仕事の役に立つとも考えた。



活動を続ける中で、PTAに対する保護者の意識の変化を感じ始めている。「同じ人が何年も役員をしないとまわらないという実態があり、関心がない人のほうが増えている。このままの体制ではもたないことに役員もだんだんと気づき始めているのではないか。今まさにPTAは改革を迫られていると思う」と語る。




【取材協力弁護士】
所 寿弥(ところ・としや)弁護士
岐阜県弁護士会所属。離婚・男女問題、刑事・少年事件、企業法務、借金・債務整理などを広く扱うほか、少年事件の付添人活動、スクールロイヤー、児童虐待問題など子どもの権利に関する活動にも取り組んでいる。
事務所名:所法律事務所
事務所URL:http://www.lawyertokoro.com/


このニュースに関するつぶやき

  • ほんっとコレ。まさに直面した。親は皆んな働いているよ。昭和の専業やってる母とは違うのよ。会議だ資料作成だと頻回に仕事早退、集合してなんかメリットある?
    • イイネ!5
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