『どうする家康』お花畑展開についていけない… 瀬名の暴走ここに極まる

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2023年06月27日 06:10  キャリコネニュース

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放送スタート以来、完全に史実にない、フィクションのエピソードを時折挿入して賛否が出ていた『どうする家康』。別に、昔の人物を題材にするわけだから脚色はして当然なんだけど、リアリティがないとさすがに受け入れられない。

たとえばガンダムで例えると、モビルスーツはこの世に実在しないし、宇宙開拓時代でも何でもないわけだけど、視聴者はモビルスーツの兵器としてのリアリティにこだわってしまう。地上用のグフが宇宙にいたらおかしいよね。ファンってそういうもので、突拍子のない話は認められないものなのだ。

これまでの大河ドラマは、まず第一に極力歴史を改変しないようにしつつ、オリジナリティのある脚本を組み立ててきて、それがファンにも愛されてきた。昨年の『鎌倉殿の13人』もここが上手だった。史実を知っている人間も思わずうなる展開が結構あった。(文:松本ミゾレ)

フィクションだとしても説得力がない

では『どうする家康』はどうか。6月25日放送、第24話「築山に集え!」では、ここ数話に渡って実在しない武田の女幹部である千代(演:古川琴音)と腹の探り合いをしていた瀬名(演:有村架純)の暗躍が露見しそうになり、夫である家康(演:松本潤)らが慌てるというシナリオ。

この暗躍というのは、別に武田方と内応して徳川を裏切ろうとか、尾張の織田に立ち向かおうとか、そういう話ではない。

瀬名の目的は、武田方や今川氏真(演:溝端淳平)と力を合わせて結束し、織田が戦を仕掛けてこない大きなコミュニティの形成を訴えるというものであった。しかしながらこの計画はあまりにも前提からして破綻している。

史実では家康はこの時代、既にいち武将として織田の下で必死に権謀術数を巡らせて立ち回っている。そんな夫の背中を、正室である瀬名が目で追う様子も特に描かれていない。そして夫を無視してこういったたくらみをしてしまうわけだが、作中でこれを強く咎めるものはない。

むしろこのたくらみを聞かされた家臣の中には「奥方様、そんな深いお考えが〜」と落涙する者も。リアルタイムで放送を観ていて、本当に頭の中に「???」がいっぱいになってしまった。

自分の夫であり徳川勢をまとめる立場の家康に黙って、そんなことをする意味が分からない。内々に動けばあらぬ疑いを掛けられ、織田に睨まれることを知っているのなら、まず夫に相談すべきなのである。

ところが作中では、家康には最後に伝えることにしたと瀬名は言い、家康も特にそれを咎めていない。というかこの回では、家康にろくにセリフもなく、彼自身が瀬名のこの考えをどう感じて、どう対処すべきと思ったのかの描写もなく、今まで以上に巻き込まれ方の主役になっている。そんな家康をいつまで見せられるのだろうか。

退場目前なのに、勝頼公だけがちゃんと戦国時代に生きている残念な描写

なにより気になったのは、武田勢の内部の描写だ。穴山梅雪(演:田辺誠一)、千代(演:古川琴音)はそもそも瀬名を篭絡するために動いていたのに、「化かすつもりが化かされた」というセリフだけ与えられて、具体的にどうして彼女の壮大な夢に賭けることにしたのかの経緯も大して描かれてない。

描写不足なので当然「梅雪は本心で協力してはいないのだろう」とか思ってたら、なんと本気であったのだから驚いた。織田を騙すために徳川と示し合わせて怪我人の出ない戦の真似事をし、納得したように徳川の陣を向いて頷く梅雪。先週までと全然キャラ違ってびっくりしちゃった。そりゃあ史実ではちょくちょく同盟を組むような関係ではあったけど、そんな戦の真似事をしたところで兵糧は減るし鉄砲も消耗はするわけで。

なにより双方の兵の士気が下がるだろ、と。なんかこう、瀬名を退場させるための花道を必死で用意してるなぁという気がしたし、戦国時代の人間が到底考えないようなことを瀬名が提案して、家臣も敵も、わざわざ今川の重鎮も呼んできて、それでみんな納得するというのは、どうかなぁ。

そんな夢物語をぶち壊したのが、武田勝頼(演:眞栄田郷敦)である。亡き信玄公がなし得なかった偉業を達成するために、梅雪や千代らにその思惑を隠し、計画が実現する前に織田に瀬名のたくらみを知らせるという役割。するとその言動に対して千代らは必死で再考を促すのだけど、こんなもんどう考えても勝頼の方が完全に正しい。

既にこの時点で信長は、足利将軍家をも足蹴にし、南蛮との貿易も活発に行い、海外の情勢にも目を向けている怪物。その怪物と戦わずして、徳川、武田、今川あたりが手を組んだところで、織田が戦を仕掛けてこない保証はどこにもない。

また武田には武田の領地もあるわけで、他国からの侵略にも対応しなければならない。先の「三方ヶ原の戦い」では織田と徳川の連合軍を信玄がこてんぱんにしているのを勝頼はその目で見ている。

なまじ迎合しただけでは勝てない戦もあることを、あの時勝者の立場として勝頼は理解しているのだ。それなのになぜ梅雪も、千代もそこに考えが至らず、瀬名の夢物語に賛同しているのだろう。

甲斐武田は時期的にも、間もなく滅びてしまうこととなる。梅雪は伊賀越え辺りまでは登場することになるし、オリジナルキャラの千代はまだ活躍の余地があるのかもしれない。だけど勝頼は間もなく退場するのだ。

そして勝頼は、織田信長(演・岡田准一)からは危険な相手として警戒されている強豪武将でもある。そんな彼を、変な夢物語に水を差した空気の読めない人扱いさせかねない24話は、個人的に今まで観た大河の中でも特に不満が強い。

どうしてちゃんと神君家康の歩みを描いてくれないんだろう。

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