つかみどころのないキャラクターと最速151キロの快速球 報徳学園・今朝丸裕喜から目が離せない!

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2024年03月26日 07:31  webスポルティーバ

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 今朝丸裕喜(けさまる・ゆうき)を取材したことのある同業者から「少し変わったところのある子なので、話をすると戸惑うかもしれません」と言われていた。

 3月22日、愛工大名電(愛知)とのセンバツ初戦を終え、報徳学園(兵庫)の先発右腕・今朝丸の囲み取材に参加してみて、同業者の言葉を実感した。

 試合中に光って見えたボールについて聞いても「いや、あんまり......」と反応は今ひとつ。技術的な内容を聞いても精神的な話を聞いても、芯を食った回答が返ってこない。決してメディアに敵対感情を滲ませるわけではなく、一生懸命に考えて答えてくれているので、質問者としては自分の力不足を恥じるしかなかった。

【愛工大名電戦で7回1失点の好投】

 今朝丸は最速151キロをマークする、今大会屈指の右腕である。身長187センチ、体重80キロの長身で、指にかかったストレートは数字以上のキレと球威を感じさせる。抜けのいいスローカーブに、決め球として使えるスライダーとフォーク。ストライクゾーンにポンポンと投げ込み、試合をまとめられるコントロールも備えている。昨春のセンバツでは同僚右腕の間木歩らとともに準優勝を経験している。

 ひと冬越えて体重が8キロ増し、凄みが増してきた今はドラフト上位候補に浮上したと言っていいだろう。センバツ初戦の愛工大名電戦では先発して7回を投げ、1失点と好投。チームは延長10回タイブレークにもつれる死闘の末、3対2でサヨナラ勝ちを収めた。

 とくに光って見えたのはストレートだ。1回表には、プロ注目の強打者である石見颯真(いしみ・そうま)に対して144キロの快速球で空振り三振を奪った。さらに結果的に最後のボールとなった7回表、吉田剛から見逃し三振を奪った140キロはスピード感と球威が伴った会心の一球に見えた。

 だが、試合後の今朝丸に尋ねても、ピンとこない様子だった。

── 最後に見逃し三振を奪ったストレートはすばらしいベストボールに見えましたが、手応えがあったのでは?

「いや、あんまり......。めちゃくちゃよかったというわけではないです。いいところにいったな、という感じで」

── そうですか。今日は自分のなかで会心のボールはありましたか?

「......あんまりないです」

── 初回に石見選手から空振り三振を奪ったストレートはどうですか?

「あぁ、あれは高めで三振取って。自分のなかでは結構、指にかかったボールなので。あそこでの三振は大きかったかなと感じます」

 手応えがあったのか、なかったのか、よくわからない。自分のなかで「よかった」と感じるストレートをどれくらい投げられたと思うかを尋ねると、今朝丸は「8割〜9割くらい」と答えた。

 アプローチを変えることにした。今朝丸の投球フォームは、とくに軸足(右足)一本で立つ姿が安定していて、美しく見える。自身のなかで技術的なこだわりがあるかもしれないと思い尋ねてみると、今朝丸はこう答えた。

「一本足で真っすぐに立つことを意識しています」

 今朝丸の言葉をメモしながら、それはそうだよな......と思わずにはいられなかった。昔から投球フォームは変わらないそうだ。

 打者が「とらえた!」と思ってバットを振った時には、ボールはもうキャッチャーミットに収まっている。今朝丸のピッチングと同様に、本人のキャラクターもとらえどころがなかった。

【間木歩とのWエースで目指すは日本一】

 バッテリーを組む徳田拓朗にも話を聞いてみた。すると、徳田は今朝丸が投じた7回のラストボールを「今日一番よかったです」と振り返った。

「序盤は指にかからないボールが多かったんですけど、中盤以降に立て直しました。7回の最後のボールは、ここ一番のところでいいボールがきましたね。今朝丸は今年に入ってボールが強くなって、高めのボールはとくにミットが後ろにもっていかれそうになるくらい強さが出てきたんです」

 今朝丸本人が「いや、あんまり」と答えていたことを伝えると、徳田は「僕はいいと思うんですけど......」と苦笑した。重ねて「今朝丸くんは投手らしい性格ですか?」と聞くと、徳田は「そういうことですね!」と力強くうなずいた。

 ダブルエースを組む今朝丸と間木とで、徳田はリードするスタイルを使い分けているという。

「今朝丸はいい意味で何も考えていないので、あまりバッターの特徴や攻め方は言わんと声で乗せるようにしています。間木は自分で考えられる選手なので、たまにこちらの想像を超える配球を要求してくることがあります。そのとおりにすると、だいたい抑えられますね」

 最後に大角健二監督にも聞いてみた。まず、今朝丸のキャラクターについて「つかみどころがないように感じたのですが......」と尋ねると、大角監督は「おっしゃるとおりです」と笑った。そして、教え子をフォローするように、こう続けた。

「普段は優しい、いい子なんです。でも、去年まではそれが、そのままマウンドに出てしまっていました。去年はセンバツを経験しても、ダメな時にベンチを見るような仕草もありました。『いい子のままではエースナンバーはやれんぞ!』と注意してきましたが、今日はいい意味で力んでいて、勝ちを意識したピッチングをしてくれました。堂々としていたと思います」

 まだまだ底を見せていないポテンシャルと、つかみどころのないキャラクター。今大会は今朝丸裕喜から目が離せそうにない。

 愛工大名電戦でもファインプレーを連発した堅固な守備陣と、プロ注目のダブルエース。昨年つかめなかったセンバツ王者の座を目指して、報徳学園は快調な一歩目を踏み出した。

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