勝田貴元、4台目出走で見せた意地と速さ。勝者オジエからの“金言”と限界領域での課題/WRCポルトガル

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2024年05月15日 02:50  AUTOSPORT web

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2024年WRC第5戦ラリー・ポルトガル 勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)
 5月9日(木)から12日(日)にかけて開催された2024年WRC世界ラリー選手権第5戦『ラリー・ポルトガル』。TOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム(TGR-WRT)のレギュラードライバーである勝田貴元は、チームメイトのカッレ・ロバンペラとセバスチャン・オジエの両名がエントリーしたことから、マニュファクチャラーポイントの対象外となる4台目で今大会に出走し、最終的に総合29位でラリーを終えた。

 今回は大会前から「とにかくベストを尽くし、最初から最後まで攻め続けるつもりです」と語っていた勝田は、その言葉通りとなるデイ2のSS2でトップタイムをマーク。その後もつねに上位5台に入る走りを続け、首位ロバンペラから4.7秒差の総合3番手で確かな速さを示した。

 迎えたデイ3ではSS12でのミスにより、マシンにダメージを負ってデイリタイアとなったが、勝田は大会後のオンライン取材会にて、速さにこだわった今大会での学びとして「結果に繋げる力を身に着けなければならない」と語った。

 まず最初に、今回の攻めのアプローチの背景について、「今回はマニュファクチャラーポイントを加算しない体制でのエントリーで、もし何かが起きたとしてもチームへの影響が少ないという状況でした」と語る勝田。

「そのなかでチームから、『自分が持っているスピードを出せるように走ってみてほしい』との声があり、速さを求められたときにいつでもその力を出すことができると示すためにも、いままでとは違うアプローチでのラリーになりました」

 マニュファクチャラーポイントというプレッシャーから解放され、速さだけに注力するアプローチでの出走となった今大会。事前のテストやシェイクダウンでもマシンフィーリングは良く、大会初日からも攻めの走りでラリーをリードする上位勢の一員となった。しかし迎えたデイ3のSS12で、ポルトガルの魔物の餌食となってしまった。

「デイ3は、デイ2で苦労した点でマシン調整を行ったのでフィーリングも良くなり、ステージのコンディションに対してドライビングもある程度変えながらのアタックでした」

「そのなかで、SS11でスピンを喫して10秒ほどをロスしてしまったこともあって、SS12は差を縮めようと思って走りました」

「感覚的にも、オーバープッシュすることもなく、すべてをコントロールできているような感じで乗れていました。ですが、右、左と続く複合コーナーでアンダーステアが出て、外側の岩肌に右リヤをヒットさせてしまい、サスペンションアーム類やブレーキなどにダメージを負ってしまいました」とデイリタイアとなった瞬間を振り返った。

 実際にデイ2で確かな速さを示した勝田は、つねに速さにこだわっていくうえで今回のようなミスが起こるかもしれないという覚悟は持っていたという。彼自身にとって、速さが結果に繋がらないというジレンマを感じたというが、ここまで強く感じた経験はないといった様子だ。大会後には、総合優勝を飾ったオジエともこのジレンマについての会話があったと振り返る。

「(このジレンマは)セブも通ってきている道だそうで、彼はアタックするときに、『自分のなかで、超えてはいけない限界のラインが明確に見えているわけではないんだ』と教えてくれました」

「『いつか、今こうやってプッシュしているレベルが当たり前になってきたときに、冷静にペース配分をしながら戦える時が出てくる』と言われました」

「なので、自分が取り組むべき課題は、プッシュする姿勢を継続しながらも、これまで以上にミスを減らしていくことです」

 最後には、「次のステップに進むうえで、すごく重要な局面に来ている」と語った勝田。ラリーのトップカテゴリーに挑む唯一の日本人として奮闘する彼は、これまで8度チャンピオンに輝いたオジエにも通ずる成長過程の真っただ中にいる。デイ2でロバンペラやオジエと同じ次元の走りを見せた勝田は、また一歩、初の総合優勝へ向けての歩みを進めた。

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