ヘンリー王子が、ESPY賞授賞式で「パット・ティルマン賞」を受賞した。負傷軍人の国際スポーツ大会「インヴィクタス・ゲーム」での功績を称えられたものだが、王子の受賞について再考を求める嘆願書が提出されており、パット・ティルマンさんの母親も「もっとふさわしい人がいる」と激怒していた。王子はこういった反発にもかかわらず、メーガン妃とともに授賞式に出席。スピーチではパットさんの母親を称えたほか、受賞はあくまで「インヴィクタス・ゲーム」に参加した人々のものだと強調した。
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現地時間11日、米ロサンゼルスのハリウッドにあるドルビー・シアターで、第32回「ESPY賞授賞式(Excellence in Sports Performance Yearly Award)」が開催された。
米スポーツTVネットワーク「ESPN」が主催する同授賞式は、過去1年間にスポーツ界で活躍したアスリートを称えるものであり、「米スポーツ界のアカデミー賞」とも呼ばれている。
今回の授賞式では、ヘンリー王子が負傷軍人の国際スポーツ大会「インヴィクタス・ゲーム」での功績を称えられ、「パット・ティルマン賞」を受賞した。
同賞は、2001年のアメリカ同時多発テロ事件をきっかけに米軍の志願兵となり、アフガニスタンの戦闘で命を落とした元NFLスター選手パット・ティルマンさんを称えて創設された。
しかし、ヘンリー王子の受賞が事前に発表されると多くの人々の反発を招き、受賞者の再考を求める嘆願書が提出された。この嘆願書には、7万6千人以上が署名したという。
さらにパットさんの母メアリー・ティルマンさんは、現地メディアの取材に対し「ショックを受けています。もっとふさわしい人物がいるでしょう」と怒りを露わにしていた。
こういった反発にもかかわらず、ヘンリー王子はメーガン妃とともに授賞式に出席し、名誉ある「パット・ティルマン賞」を受け取った。
王子はステージに上がるとマイクの前に立ち、パットさんの家族と母メアリーさんに向けて、このようなメッセージを述べた。
「ティルマン家、特にパットさんの母親メアリー・ティルマン夫人に感謝の意を表したい。彼女がパットさんの遺志を守るために行っている活動は非常に個人的なものであり、私も深く尊敬しています。」
そして王子は、母ダイアナ妃を事故で亡くした自分の立場と、息子パットさんを戦争で失ったメアリーさんとの親子関係を、こう照らし合わせた。
「母と息子の絆は永遠であり、どんなに大きな喪失をも超越します。」
また、同賞は自分自身に対するものではなく、「インヴィクタス・ゲーム」に参加した人々に与えられたものであることを強調した。
「私はパット・ティルマン賞の受賞者であるヘンリー王子としてではなく、インヴィクタス・ゲーム財団とインヴィクタス・ゲームを実現させた20か国以上の何千人もの退役軍人や軍人を代表してここに立っています。この賞は私ではなく、彼らのものです。」
さらに王子は、今回の授賞式を通じて「インヴィクタス・ゲーム」が広く知られることの重要性を語った。
「私にとって、こうした盟友やアスリート、彼らの素晴らしい家族の功績と精神や勇気をみなさんの前で紹介することは、非常に重要なことです。」
「このような瞬間は、インヴィクタスが最も必要な人々に手を差し伸べる手助けをし、この国だけでも一日に20人以上の退役軍人が自ら命を絶つのを減らすことに繋がります。」
王子は最後に、自身が設立した「インヴィクタス・ゲーム」はすべての人のために存在するものであり、「誰も置き去りにはしません」と締めくくった。
ヘンリー王子に近い情報筋が英メディア『The Telegraph』に語ったところによると、王子は「パット・ティルマン賞」受賞に対する反発が起こったことに傷ついていたという。
同情報筋は、王子が自身の軍歴や退役軍人との仕事を批判されることについて「飲み込むのが困難な、苦い薬のようなものです」と表現し、こう続けた。
「『インヴィクタス』におけるヘンリーの功績と、彼が成し遂げたこと。それこそが彼の本当の情熱なのです。ここは彼が本当にくつろげる空間であり、深く大切にしているものなのです。こういった反発が、賞の輝きを失わせたのは確かです。」
このほかにも米海兵隊員で、2018年に「パット・ティルマン賞」を受賞した元大学フットボール選手ジェイク・ウッド氏は、米メディア『TMZ』の取材に対し、「ヘンリー王子の軍務経験と退役軍人への献身を考えると、彼はティルマンの栄誉にふさわしい人物だ」と擁護していた。
画像2枚目は『Pat Tillman Foundation Instagram「Happy Birthday, Pat.」』より
(TechinsightJapan編集部 寺前郁美)