山本尚貴が母校の作新学院へ3度目の訪問。整備士を目指す高校生への特別授業でレース業界への思いを語る

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2024年07月13日 19:00  AUTOSPORT web

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山本尚貴(PONOS NAKAJIMA RACING)と作新学院高等学校の情報科学部自動車整備士養成科の学生たち
 7月11日、全日本スーパーフォーミュラ選手権に参戦する山本尚貴(PONOS NAKAJIMA RACING)が、昨年に続いて母校の作新学院を訪問した。三度目となる今回は小学部全生徒への講演に加え、同学院高等学校の情報科学部自動車整備士養成科に所属する学生たちに、チームの浅見邦彦メカニックとともに特別授業を行った。

 また、同校の小学部全児童(421名)とその家族を、8月24〜25日に栃木県のモビリティリゾートもてぎで開催されるスーパーフォーミュラ第5戦もてぎ2&4レースに招待することが発表され、小学部での講演では生徒代表に山本から招待券が贈呈された。同レースには、高等学校情報科学部自動車整備士養成科の生徒(約30名)も招待され、そちらは23日のピット見学なども含まれている。

 まず行われた小学部の講演では、冒頭に2023年スーパーGT第6戦SUGOのクラッシュと怪我からの復帰を取り上げた映像が流れ、拍手で迎えられた山本は、「(復帰までに)たくさんの方に支えてもらい、またこの場に戻ることができました。感謝する気持ちが増えました」と語り、怪我を通じて感じた思いを生徒に伝えた。

「皆さんも、ご両親や先生など、まわりの人々がいるからこそ毎日を送れていることを忘れずに、感謝の気持ちを持ち続けてください。そして、自分の身体と命を大切にしてください。自分の身体は思っているより脆いです。これからの学校生活を安全に過ごしてください」

 その後は代表生徒からの質問で、「スランプはどう克服したか」を問われると、山本は「僕も優勝できないときや、うまくいかないときがありました。そういったときはつらいですけど、ただ悩むのではなく、うまくいかない理由を分析する力を身につけたり、まわりに相談することが解決する近道になると思います」と答えた。

 続いて「若い選手が出てくるなかで、プロとして居続けるために大切なこと」という質問に対しては、「若い選手が出てくることは、自分が走りや考えを広げるチャンスなので逆に嬉しいです。あまり頑固にならないで、年齢に関係なく上手な人の真似や、いい意味で盗むことが大事かなと心掛けています。つねにアンテナを張り、いろいろな人のいいところを盗めるように頑張ってください」と回答し、エールを送った。

 後半には、小学部の全生徒421名とその家族を8月24〜25日に栃木県のモビリティリゾートもてぎで開催されるスーパーフォーミュラ第5戦に招待することが発表され、代表生徒に対して招待券の贈られた。さらに、訪問当日が自身の誕生日だった山本へお祝いのサプライズがあり、生徒から誕生日プレゼントが贈られたところで講演は終了となった。

■「将来、このなかの誰かにタイヤ交換をしてほしい」整備士養成科での特別授業でレース業界への思いを明かす

 続いて行われた高等学校の情報科学部自動車整備士養成科の講演では、チームの浅見邦彦メカニックと一緒に山本の特別授業が行われた。自動車整備士を目指す学生たち向けの特別授業ということで、まず話は浅見氏がメカニックになるきっかけから始まった。

「自分が高校のころはレースメカニックになるための専門学校が存在していたので『技術の粋を集めたレーシングカーをやりたい』と、すぐに決めて学校に通い、先生のツテを頼って今の職業につきました」

 その浅見メカニック、実は整備士の資格を持っておらず「300km/hで走るレーシングカーの安全に関わる部分を実際仕事にしていますけど、一般道で走るクルマは(メンテナンス)できないです」と打ち明ける。そこで山本から「逆に資格があってもなくてもレースメカニックになることはできる?」と聞かれると「もちろん、情熱さえあればいけます」と答えた。

 また浅見メカニックは、自動車整備士養成科に女子生徒がいることに気づくと「僕たちのチームにも女性メカニックがいて、同じ仕事を一緒にやっています」と話す。また山本は、7月7〜8日のスーパーフォーミュラ富士公式テストでのエピソードを「タイヤ交換練習では、右フロントタイヤは女性メカニックの方が行っていました。男性と遜色なくこなしていて、(男女に)差はないですね」と話し、女性がレースメカニックになることを歓迎した。

 質疑応答では、山本が「集中力を保つために意識していること」を聞かれた際に、集中力を保つための最低限の基礎体力が必要としたうえで「何時間も集中し続けるのは絶対無理だと思っているので、オフの時間を作ることを心がけています」と話した。

「オフをどう上手に過ごすかが大事です。授業に集中するときは集中し、休むときは休んでリセットする。そういったメリハリが、集中力を保つためには大事だと思います」

 浅見メカニックは「レースメカニックになる前にできる練習や準備」について聞かれると、集中力と基礎体力を挙げ「(緊張で)上がらないように、その瞬間にできるようにするための心づくりをしておくことです」と答えた。

 最後に浅見メカニックは、一般の自動車整備士とレースメカニックの違いについて、「一年中レーシングカーを継続的に触っているので、1台のクルマをずっと集中してメンテナンスすることができます。経過観察など、1台にすごく集中していることが大きな違いだと感じています」と話した。

「ディーラーさんと比べると、多岐にわたる作業が自分でできるようになり、それがすごくいいことだと思っています。自分でモノを作り出し、管理してレースで勝つために少しでも良くしようとする。自分で何かを考え、それがタイムに現れることは楽しいことです」とレースメカニックのやりがいを語り、「もし興味があったら入ってみたらいいと思います」とメッセージを贈った。

 そして山本は「夢や目標に向かって頑張り、自動車業界に残ってほしい」と自動車整備士養成科たちの生徒にエールを贈り、「将来、このなかの誰かに自分のタイヤ交換をしてほしい」ということが伝えられた。

 特別授業の終盤には、誕生日プレゼントとしてメッセージ入りのタオルが山本に贈られ、会場のSF19とともに記念撮影をして授業終了となった。

 囲み取材に応じた山本は、「ドライバーがレースを走るためには、メカニックなどのサポートする人たちが不可欠です。生徒とレース、モータスポーツとの交流においては、我々ドライバーだけでなくメカニックなどの人たちまで裾野を広げることが大切だと思います。将来的には、彼らがレース業界や自動車産業の担い手となり、盛り上げてくれることを期待しています」と、整備士を目指す生徒への想いを語った。

 次戦第4戦は、三笠宮家の瑶子女王殿下の賜杯を頂戴し『第1回瑶子女王杯』として7月20〜21日に静岡県の富士スピードウェイで開催される。続くホームレースの第5戦もてぎに向けて、富士での山本の諦めない姿と走りを期待したい。
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