「災害に強いまちづくり」を掲げる茨城県日立市、通信復旧作業でNTT東日本と基本協定を締結

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2024年07月24日 08:01  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
茨城県日立市とNTT東日本茨城支店は、「災害時における通信設備復旧の連携等に関する基本協定」及び「当該基本協定に基づく覚書」の締結式を7月2日に実施した。災害による広範囲な通信障害発生時に、地域の迅速な通信手段の確保や災害対応力の向上を目的とする本協定。両者の防災対策の担当者に協定締結の経緯などを聞いた。


○連絡調整員・リエゾンの派遣で速やかな復旧作業を実現



自然災害が甚大化・頻発化している昨今、台風や地震などで被害を被った通信設備の早急な復旧対応の重要性は、これまで以上に増してきている。本協定の締結は昨年の台風13号で日立市が甚大な被害に見舞われたことが、直接的な契機となっており、NTT東日本茨城支店における同協定の締結は、同市が県内で初めてとなった。



日立市の小川春樹市長は「これまでNTT東日本様には日立市の防災対策の要となる防災会議委員としてご参画いただいており、市が主催する防災訓練などにもご参加いただくなど数多くのご協力をいただいています」と挨拶。災害時に通信インフラが果たす役割の大きさについて語った。



「通信システムは自然災害において私たちの安全・安心を支えるもの。市民の命や暮らしを守るライフラインの砦である通信手段をいかに確保するかということは極めて重要で、災害時には一刻も早い復旧のために迅速な対応が求められます。NTT東日本様にこれからもご尽力いただきながら、市として災害にしっかり対応していきたいと思います」(小川市長)。


本協定の骨子は主に3点。災害時の通信復旧や道路啓開の妨げとなる樹木などの障害物の除去を相互協力のもとに実施し、円滑な通信設備の復旧作業を実現すること。日立市災害対策本部への連絡調整員(リエゾン)の派遣などを行い、被災復旧状況などを中心とした情報共有を強化することで早期の通信設備の復旧を目指すこと。そして、相互連携を確立し、災害対応力を向上させることで「災害に強いまちづくり」を目指すことが挙げられている。



NTT東日本茨城支店の松木裕人支店長は、協定締結にあたり次のように述べていた。



「予測可能な台風被害などについては、日立市様と発災前から協議しながら、事前に連絡調整員・リエゾンを日立市様の災害対策本部へ派遣し、速やかに対応できる体制づくりを進めさせていただきます。日立市様とより強固な関係を築き、今後も安心・安全な通信サービスの提供に尽力して参りたいと思っております」。


○連絡体制や復旧作業の役割分担も明確化

昨年の台風13号で日立市は土砂崩れ等による電柱の倒壊や通信ケーブルの損傷で一部の地域で通信障害が発生したほか、市庁舎のPBX(IP電話などの外線の発着信の制御や内線電話の接続をコントロールする構内交換機)にも影響を受けてしまったという。


締結式後の囲み取材で小川市長は「役所のほうへ電話回線が非常につながりづらいような状況もあり、なかなか市民の方々からの情報が得られなかったといった反省もあった。そのような災害時の通信トラブルについては非常に懸念していたところです」とコメント。そうした教訓も踏まえ、本協定の意義を説明していた。



「今年4月にNTT東日本茨城支店様から本協定の正式提案をいただきました。市長から速やかに協定締結に向けた検討を進めるようにとのことで、協定書の具体的な内容などについて協議を重ね、本日に至りました」とは、日立市総務部防災対策課長・松本賢吾氏。



台風13号の経験を通じ、災害時の復旧作業における課題感や改善点などについては両者で共有していたため、協議は比較的スムーズに進んだようだ。



「通信設備の復旧は防災対策課のほかに道路管理課、都市整備課などの課も関係し、これまでも連携しながら対応してきましたが、連絡のやり取りは個別に行う必要がありました。本協定の中でリエゾンも含めた具体的な連絡体制について改めて明確にでき、復旧作業や道路啓開の役割分担なども整理がなされたことで、より迅速で確実な復旧につながるものと思っています」(松本氏)。


予測可能な台風災害に対しては、NTT東日本内において事前にタイムラインを発動し、被害を最小化すべく災害への対策を計画・実行、万全な体制を構築しているという。



日立市は災害に強いまちづくりを掲げて、今年3月には令和6年度から令和8年度までの災害復旧基本計画もまとめた。



「今年度から計画に基づき、情報の収集・伝達、地域連携協力、防災教育の推進といったテーマごとに取り組みを進めていきます。情報収集の新たなシステム導入、防災行政無線サポートセンターの設置、市民がいつでも土のうを持ち出せる『土のうステーション』や、避難所のスポットクーラーの整備などを実施していく予定です」(松本氏)。



今後は防災訓練や意見交換などを通じて、平時からの相互連携を深めていく。



NTT東日本茨城支店・災害対策室室長の山田敏彦氏は、「復旧の際に障壁となるような個別協議事項の整理を図れたことで、災害時復旧に関しては本協定で一刻も早い復旧が実現できるものと思っています。平時からの連携についても、日立市様では3ヵ年の計画を立てられておりますので、弊社として何ができるのか。一緒に議論を重ねながら提案させていただき、訓練なども含めて様々なかたちで協力してまいりたい」と語っていた。



伊藤綾 いとうりょう 1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催 @tsuitachiii この著者の記事一覧はこちら(伊藤綾)
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