S耐第3戦オートポリスで嬉しいポール獲得のDAISHIN GT-R GT3。その影にさまざまなドラマあり

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2024年07月27日 19:00  AUTOSPORT web

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2024スーパー耐久第3戦オートポリス ポールポジションを獲得したDAISHIN GT-Rのドライバーたち。右から坂口夏月、今田信宏、藤波清斗、渡会太一
 7月27日、大分県日田市のオートポリスでENEOSスーパー耐久シリーズ2024 Empowered by BRIDGESTONE第3戦『スーパー耐久レース in オートポリス』の公式予選が行われ、今田信宏/藤波清斗/坂口夏月/渡会太一組DAISHIN GT-R GT3が合算タイム3分39秒845でポールポジションを獲得した。DAISHINカラーでの参戦となってからは、意外にも初ポールポジションだというが、今回はドライバーたちにそれぞれドラマがある注目の一台でもある。その注目どころをご紹介しておこう。

■スーパーフォーミュラ・ライツのリベンジを──今田信宏
 スーパー耐久ST-Xクラスではお馴染みの存在でもあるDAISHIN GT-R GT3。今回は、開幕戦に続く参戦となる今田がAドライバーを務め、Bドライバーは藤波、Cドライバーは坂口と変わりはないが、Dドライバーには渡会太一という四輪ファンにとってはまだあまり馴染みがない名が加わった。

 そんなDAISHIN GT-R GT3だが、今田がAドライバー予選で1分50秒776を記録し、2番手に1秒差をつける素晴らしいアタックをみせた。「気温やタイヤの状況などから、アウトラップからのアタックしかないと思っており、どうタイムを出すかの調整をしていきましたが、それがハマりましたね」と今田は予選を振り返った。実際、3周走ったうちの2周目でタイムを記録しており、戦略の成功を感じさせる。

 もちろん大事なのは決勝だが、今田は決勝に向けて「ロングランのペースがすごく良くて、逆に予選の方が不安だったくらいなんです。だから今回は期待できると思います」と自信をみせた。

 そして今田にとっては、前週富士スピードウェイで行われた全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権第4大会での無勝利のうっぷんを晴らしたいところ。「そうなんですよ(苦笑)。ペースはあったのに本当に流れが悪くて。今回はきっちりとポール・トゥ・ウインを決めたいですね。ただスーパー耐久は何があるか分からないカテゴリーなので、変なことをせずにペースを上げたいと思っています」とレースに向けて意気込みを語った。

■悔しさはあるも、DAISHINとしての初ポールに喜び──藤波清斗
 一方、ポールポジションに繋がったとはいえ、Bドライバー予選を担った藤波はやや悔しい表情だった。1分49秒069をマークするも、太田格之進がドライブしたCraft-Bamboo Racing Mercedes-AMG GT3が速く、Bドライバー予選の首位を獲ることができなかった。

「クルマの速さはありますから決勝レースは大丈夫だと思いますけど。トップはちょっと速すぎましたね」と藤波。ただ悔しさの反面嬉しいのは、2020年にDAISHINカラーとなってから初めてのポールポジションとなったことだ。

「GTNETの頃にはポールは獲っていましたが、今回は4年ぶりです。だから嬉しいですね。富士24時間ではトラブルもありましたし、ここからシーズンのためにも取り返していきたいと思いますね。5時間レースのときにしっかり勝っていきたいと思います」と藤波は決勝に向けて意気込みを語った。

「まだウエイトも軽いですし、ここともてぎで勝ちたいと思います。いずれにしろ、ポールポジションを獲れたことは良かったですね」

■富士での走りが突然のシート獲得に──渡会太一
 そんな藤波、そしてTEAM DAISHINの大八木信行オーナーとの縁で、今回Dドライバーとして急遽起用されたのが渡会だ。7歳でレーシングカートを始め全日本カートにステップアップすると、2020年に全日本カート最高峰のOKクラスで佐々木大樹や荒尾創大を退けチャンピオンを獲得したドライバーだ。その後はヨコハマのカート用タイヤ開発を担ってきた。

 ただ、メーカーのスカラシップには入ることはできず、2021年からスーパーFJに参戦。また2023年はVITA-01で、2024年はv.グランツでMEC耐久レースに参戦した。その時のチームが、藤波が率いるKF MOTORSPORTだった。

「清斗さんはすごく優しいですし、僕に足りないところや良いところを教えてくれます。清斗さんに教えてもらいながら、ドライビングもプライベートも少しずつ改善していっています」と渡会。

 そんな渡会に思わぬ出会いが訪れた。それは6月23日に行われたスーパーFJ筑波・富士シリーズ第5戦でのこと。予選・決勝をワンデーで行うスケジュールだったが、朝の公式予選が雨のためキャンセルとなり、グリッドは筑波・富士シリーズのランキング、ジャパンリーグのランキング、そして出場していないドライバーは申込順で決められた。

 渡会はこのとき、急遽参戦が決まったことでいちばん最後の申込だったため、最後尾21番手からのスタートとなっていた。しかし、ウエットの12周の決勝でなんとすべて追い抜き優勝を決める。まさにテール・トゥ・ウインを飾ったのだが、これを見ていたのが、この時のメインレースのひとつであるSROジャパンカップにGT-Rで参戦していたDAISHINの大八木オーナーだ。

 大八木オーナーは「面白いヤツがいた」と藤波に連絡してきたのだが、それは誰あろう自身が面倒を見ていた渡会だった。そこで、富士でDAISHIN GT-R GT3が走る際に渡会を連れていった。

■ドライバー起用決定は予選日前日に
 その場で渡会は1周だけ走行のチャンスをもらったが、悪くないタイムを記録。藤波は今回のスーパー耐久第3戦から渡会に勉強をさせるべくチームに帯同させることにしたが、「装備品は持って来いよ」と伝えていた。レースウイークに何が起きるか分からないからだ。

 本来ならば装備品は無駄になってしまうことがほとんどだが、予選日前日の7月26日、GTNET Mototsportsの尾本直史代表から、渡会に「Dドライバーとして登録してみる?」という話が舞い込んだ。当然、断るわけもない。連れてきた藤波も驚きの決定となった。

 愛弟子のチャンス獲得に、藤波は「僕も19歳からこのチームに拾ってもらって、星野一樹さんはじめ、いろんなきっかけで乗ることができました。渡会はそういう自分と似ているところもあって、速さはあるけど詰めが甘い。僕も自分がしてもらってきたことを、下の子たちにやってあげたいと思いましたし、チームに向けても恩返しになればと思います」と喜んだ。

 とはいえ、藤波は今回の渡会のチャンスは「自分次第」だという。チャンスをさらに繋げるには、結果を出し続けるしかない。渡会は「ハコでのレースも初めてですし、緊張もしています。まだ周回も少ないので乗りこなせている感じはありませんが、少しずつ走行距離を伸ばせたらと思います」とスーパー耐久デビュー戦へ意気込みを語った。

 OKクラスで争っていた荒尾は、ホンダのスカラシップですでにスーパーフォーミュラ・ライツにも乗っている。「追いつきたいですし、追い越したい」と渡会は言う。DAISHIN GT-R GT3が欲しい優勝に貢献することこそ、渡会の次なるチャンス。ぜひ上への切符を勝ち取って欲しいところだ。

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