永瀬正敏、浅野忠信、佐藤浩市らが豪華共演、第74回ベルリン国際映画祭にてワールドプレミア上映され話題をさらった映画『箱男』が8月23日(金)より全国公開。1997年に企画が頓挫してから27年、8月5日=「ハコの日」(制定:東京紙器工業組合)に当時の超貴重写真とともに、その軌跡が明らかとなった。
鬼才・石井岳龍(当時:石井聰亙)監督のもと、主演に永瀬正敏、助演に佐藤浩市らを迎えて日独合作映画として製作が決まっていた『箱男』。
だが、1997年ドイツ・ハンブルクでのクランクイン前日に日本側の製作資金の問題で突如撮影が中止に。幻の企画となってしまう。
当時30歳だった永瀬は、自宅や宿泊先でも箱に入って生活するほど役に入れ込んでおり、予想もしなかった幕切れに理解と気持ちが追いつかず、俳優業復帰に数か月を要してしまったという。
その思いは石井監督も同じで、「私も2年くらい立ち直れなかった。でもその間もずっと諦めていなかった」と、映画化への熱意を変わらずに持ち続けていたと語っている。
しかし、二度目のチャンスはそう簡単には巡ってはこなかった。2003年ごろに石井監督が原作の映画化を再度交渉したところ、すでにその権利はハリウッドの会社へと渡ってしまっていた。『エイリアン』『グラディエーター』シリーズなどで知られる巨匠リドリー・スコットの製作会社が、40分のパイロットフィルムまで完成していたというが、実現せず。
その後もフランスでの企画開発の噂もあったが、結局映画化には至らず仕舞い。ついには世界のマーケットで安部公房原作の映像化は不可能だと囁かれるようになる。
そんな困難な状況下の中、原作権がハリウッドから戻ってくる機会を待っていた石井監督は、2013年ごろに「コギトワークス」の関友彦プロデューサーに相談を持ちかけ、今回共同で脚本を担当した、いながききよたか氏と企画開発を重ねることになる。
そして2016年3月、ついに改めて正式な原作権の許諾を得ることに。安部公房生誕100年にあたる2024年の公開というまたとないタイミングに照準を合わせ、これをラストチャンスとして声をかけたのはもちろん永瀬。
また、同じく27年前に苦い思いを共有した佐藤浩市にも依頼。佐藤が、以前永瀬と共演した『64 -ロクヨン-』の舞台挨拶で「本当はこの映画ではなく昔共演をするはずだった」という発言をしていたことから、永瀬と同じように心のどこかにずっと『箱男』が残っていたのではないかという思いに賭けた。
さらに永瀬、佐藤とともに石井組に多く参加してきた浅野忠信にもオファーをし、それぞれが快諾。奇跡的に3人のスケジュールも合致し、ようやく本作の製作が現実のものとなった。
こうした紆余曲折を経て完成された映画『箱男』は、因縁の地・ドイツのベルリン国際映画祭にてワールドプレミアされ、ついに今夏、その執念と奇跡を目撃することになる。
『箱男』は8月23日(金)より全国にて公開。
(シネマカフェ編集部)